絵・文…こまつか苗

 立山風雷坊に見込まれ食客となった小太郎とオカメもんは、ほどなくして、風雷坊に呼ばれた。
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 「ついてまいれ。私の主君を紹介しよう」

ものものしい装備の武士たちの間を奥まで進むと、

 「ここでお待ちあれ」

と、ふたりは大広間の次の間に通された。

その部屋の床の間には、大きな掛け軸がかかっていた。

 「きれいな女武者だなあ」
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 戻って来た風雷坊が、ふたりに、近くに寄るよう促した。

 「実は今、大変困ったことが起こっておる。掛け軸に描かれているこのお方が、わたしの主君、真地噛虎(まじかみとら)様じゃ」

 「女の方のようにお見受けしますが」

 「さよう、おなごであるが、城主であった父上、ご兄弟に先立たれたため、城主としてお迎えし、この国を治めていただいておる。大変美しく聡明で、いざという時はどんな大きな相手にも一歩もひかない勇気を持ち、領民にも慕われておるのだ」

 「女性の身で城主とは、この時代には珍しいことですね。よほどすぐれた方なのでしょう」
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 「ときに、隣国の百万石の城主、前田鳥家(まえだとりいえ)は、常にわれらの土地を狙い、隙あらば攻め込む口実をつくろうとしておる。ここからが肝要じゃ。よく聞いてくれ」

 風雷坊は声をひそめて言った。

 「わが主君は数日前から、隣国にとらわれておる。このことは、私とカピ蔵しか知らぬ極秘事項じゃ」

 「ええっ? では、私たちがこれからお会いするのはどなたですか?」

 風雷坊はニッと笑った。

 「影武者じゃ」

 カピ蔵が次の間のふすまを開け、御簾をさっと巻き上げた。そこには掛け軸そっくりのコザクラインコの女子がいたが、カチカチとせわしなくくちばしを鳴らしていた。
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 「うわっ、威嚇してる!」

 「あの、なんかこう、もうちょっとほかに適任者はいなかったんですか?」

 ついオカメもんが口走ると、たちまち影武者の目がつりあがったので、カピ蔵がサッと御簾を下げた。

 「バスッ!」

 途端に御簾に鋭いくちばしがくいこみ、ふたりは恐怖のあまり細くなった。
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 「この通り、影武者の資質にかなり問題があり、このままでは主君が敵にとらえられたことが周囲に知られるのも時間の問題じゃ。一刻も早く主君を救い出さないと、隣国ばかりか周囲の他の国々からも攻め込まれるかもしれないのじゃ」

 「うーん、たしかに」

 「そこで、おぬしらの力を借りたい。鉄壁の守りの私の部屋にやすやすと忍びこめた、その不思議な力で、主君のとらわれている場所に行くことはできるだろうか」
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 「ぼくが時間旅行をするには机の引き出しが必要なんですが、明らかに危ない所にある机には時空の扉が開かないようにできているのです」

 オカメもんは申し訳なさそうに言った。

 「うむ……そうか。そういうことならば、仕方ないな。では、皆、この絵図を見てくれ。主君がここにとらえられているということはわかっている」
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 「ん?……これって、お城…?ですか?」

 絵図を覗きこんだふたりは、首をひねった。(つづく)
 
 
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こまつか苗(こまつか・なえ)
ペンギン・インコ陶作家。京都の清水焼の工房で陶絵付け職人として10年働いた後、大阪の自宅に開窯し、ペンギンとインコをモチーフにした陶作品(時々、カピバラ)を制作している。本職とは違うものの、イラストと文章による「らくがきドラマ」、「ラグビーポジション・インコ解説」などを発表し、好評を博す。