インドネシア映画倶楽部 第26回 「ワメナより愛を込めて(CINTA DARI WAMENA)」 
友を想うことの大切さ 
(TANAKHIR FILMS特別ネット配信より2013年作品)

文・写真 横山裕一

 

 歌は魂に響き、歌詞は心を揺さぶる。楽しい時も苦しい時も、唇には歌を。
友を想うが故に厳しいことも言い、好きな人を想うが故に別れることもある。主人公は歌う。「信じちゃいけない、夢は来たけどもう行ってしまった…」

 本作品は、ジャカルタからみると遥か遠く、パプア州の山岳地帯、ワメナで繰り広げられる若者たちの青春賛歌ムービーである。

 また映画「チンタに何があったのか(ADA APA DENGAN CINTA)」に出演した俳優ニコラス・サプトゥラがサイドストーリーに登場しながら、最後には全てがシンクロするという面白い構成にもなっている。

 ワメナはジャカルタから飛行機で、パプア州の州都ジャヤプラ経由でトランジットの時間を省いても8時間から9時間以上かかる。インドネシア最高峰のプンチャック・ジャヤ山(標高4,884m)をはじめとした標高4,500m級のジャヤ・ウィジャヤ山地に囲まれた盆地にある。

 ジャヤプラ郊外のスンタニ空港からは現在もプロペラ機。離陸後、濃緑のジャングルとくねくねと曲がった茶色い川が延々と眼下に広がる。その後機体がどんどん上昇してワメナに到着する。盆地の標高も1,800m前後、夜はかなり冷え込む。

 そんなワメナの街からさらに山岳部に入りかけた地域が、物語の主人公の出身地である。幼なじみの三人(リディウス、テンビ、マルタ)が無料で高等教育を受けられると聞き、ワメナの高校へ進学する。同級生には、美しくもどこか影のある少女エンダもいた。

 リディウスは奨学金で遥か遠くのジャカルタの大学進学を目指し、テンビはサッカー選手を、女性のマルタはフライトアテンダント就職を目指していた。しかし、同級生の誘いで飲酒やパーティにのめり込んだテンビはHIVに感染してしまう。

 絶望するテンビを励まし、看病するリディウス。そのために奨学金の試験に遅刻してしまう。さらに、アルバイトのベチャ(三輪自転車タクシー)引きをきっかけに仲良くなったエンダにも「好きだからこそ、良い友達でいてほしい」と言われ、恋に終止符が打たれる。実はエンダにも深い事情があった…。

 様々な困難に直面する三人、特にリディウスにとっては、よく歌うように「夢は信じちゃいけない」のだろうか。答えは「夢を信じよう」と呼びかける歌にあった…。

 同作品の題材の一つに取り上げられているのが、パプアで深刻化するHIV感染である。世界保健機構(WHO)によると、2018年のインドネシアでのHIV感染者数は30万人余り。感染率は全人口比でいうと0.4%だが、パプア州では2.3%と突出している。

 作品でも、原因となる若者の未防御での性交渉や、貧しい女性が売春をせざるをえない実態なども指摘されている。一方で、陽性反応を宣告された者たちが苦しみながらも現状を見つめ、前を見つめる姿も描かれている。特に、大切な友のためを思って発せられる言葉には心打たれる。

 同じ扱いにするわけにはいかないが、この時期に同作品を見るとどうしても現在猛威を振るっている、新型コロナウィルスの流行とシンクロしてしまう。本稿を書いたこの日(4月5日)、政府は感染抑止のため遅まきながら国民全員にマスクを着用するよう要請した。

 インドネシアでは4月末から断食月に入り、5月下旬にレバランを迎える。「民族大移動」とも呼ばれるレバラン前の帰省ラッシュが、インドネシアにおける今回のウィルス感染拡大の行方を大きく左右しそうだ。

 ジョコ・ウィドド大統領が積極的に帰省を諌める発言をしなかった一方で、イスラム指導者会議(MUI)が「今年の帰省はハラム(宗教上禁じられたこと)である」と見解を示すなど、帰省を押しとどめようとする風潮も高まっている。

 一部地域では、感染死亡者を自分たちの墓地に埋葬しないよう抗議するなどパニック現象に準じたことまで起きている。まさにマスクの使用が他の人に感染させないためのものであるのと同じで、今後インドネシアの人々が帰省自粛も含めて、他の人々のことを思っての感染防止を進めてくれればと願ってやまない。

 映画「ワメナより愛を込めて」に出てくるパプアの青年たちの、問題に直面しながらも、自分だけでなく相手のことを思ってひたむきに生きようとする姿は、観る者をすがすがしくさせる。まさに自宅待機中の特別配信に相応しい作品ともいえる。

 

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文・写真 横山裕一

 

 新型コロナウィルスの感染拡大で、ジャカルタが緊急対応として自宅待機要請が始まって一週間余り。同時に映画館を含めた娯楽施設も閉鎖となり、同稿も開店休業となってしまった。

 ソーシャルメディアでは「#自宅待機(#dirumahaja)」と言うハッシュタグが飛び交い、ここ数日では自宅待機に対する飽きと願望も込めてか「#明日まで(#untiltomorrow)」の記述が増えてきている。

 そんな中、友人からありがたい連絡が来た。2020年1月に公開されたドキュメンタリー映画「あらゆるもの(SEMESTA)」の制作会社タナヒル・フィルムが、自宅待機の人々用にスペシャルネット公開を実施しているのだ。スケジュールとラインナップは下記の通り。

 タナヒル・フィルム(TANAKHIR FILM)といえば、映画「チンタに何があったのか」で人気の俳優、ニコラス・サプトゥラがプロデューサーとして参加している制作会社。ラインナップは同社が制作した過去のドキュメンタリー短編作品や長編作品、それに最新ドキュメンタリー映画の8本。

<タナヒル・フィルム スペシャルストリーミング>

https://bit.ly/tanakhirfilms

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4/25-5/1   編み込まれた小径(WOVEN PATH /最新作)
5/2-8   12人の夫人を持つ男(A MAN WITH 12 WIVES /2017年作品)
5/9-15   スンバの女性(PEREMPUAN TANA HUMBA /最新作)

 1本目「ロックンロール」はすでに期間が過ぎているが、「Rock’n Roll Indonesian Friendship」で検索すればユーチューブで鑑賞できる。18分の短編青春映画だが、若い男女の自然な会話、雰囲気がとても心地よく、気持ちの変化も伝わる小気味良い作品だ。

 特にこの作品がいいのは、「ジャカルタの街」を感じ取れるところだ。主人公の二人がかつてよく行ったお粥の屋台やアボガドジュース屋などを巡る、ちょっとしたロードムービーにもなっている。

 場所も中華街のコタから渋滞にあいながら、ブロックMのバスターミナルを通って南下していく。途中、今は懐かしいオレンジ色のバジャイ(三輪オートタクシー)や道端でウクレレを弾く少年、歩道での物売りなど、ジャカルタならではの「文化的」風景も堪能できる。

 高級ショッピングモールや高層ビルではない、本来のジャカルタの人々の「等身大」の風景、様子が味わえる。この作品を観ると、つい街歩きに出かけたくなってしまうのだが、それは今しばらくの辛抱だ。

 現在、ストリーミング中の作品「ロジャー」は、「チンタに何があったか2」内でも登場した、ジョグジャカルタの「ペーパームーン・パペット・シアター」とのコラボレーションによる人形劇。何かじわじわと伝わってくるものがある。

 筆者が最も期待しているのは、タナヒル・フィルム最新ドキュメンタリー作品「編み込まれた小径(WOVEN PATH)」と「スンバの女性(PEREMPUAN TANA HUMBA)」の2本。いずれも東ヌサトゥンガラ州スンバ島が舞台だ。

 偶然、筆者がつい最近スンバ島を訪れたためでもあるが、おそらくこの作品を通しても、圧倒的に美しい丘陵地帯や海、星空といった自然風景、現地の人々が営む独特の文化・風習と人柄を堪能できるかと思う。

 東京などでも自宅待機要請が始まったように、世界的に行動が制約され、不自由な日々を過ごす人が多いかと思うが、そんな中、今回のスペシャルストリーミングは制作会社タナヒル・フィルムの「#自宅待機」への粋な計らいだ。

 ここ数日、インドネシアでも政府発表として、毎日約100人の新感染者、約10〜20人の死亡者が増え続けていて、事態の長期化が予想される。

 スペシャルストリーミングが終了した頃はレバラン(断食明け大祭)直前。それまでに終息傾向となっていることを祈りつつ、ストリーミングでインドネシア映画、文化を味わって心豊かに気分転換を図っていただきたい。

 

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ジャムーを作ろう 
体を温め、免疫力を上げる 
「+62料理教室」ミニさんのレシピ

 ジョコ・ウィドド大統領(ジョコウィ)が「健康の秘訣」として「毎日、ジャムー(jamu)を飲んでいます」と語って、話題になった。ジャムーとは、インドネシアの健康飲料のこと。ショウガ、ウコンなど、生の材料を煮出して作る。

 ジョコウィがVLOG(#JKWVLOG)で明らかにしたジャムーの材料は、クスリウコン(temulawak)、ウコン(kunyit)、ショウガ(jahe)。すりつぶすか小さく切って、お湯で煮出し、漉したら出来上がり。

 そう言われても、分量などさっぱり見当が付かないので、「+62インドネシア料理教室」講師のミニさんに聞いたところ、「私も毎日、ジャムーを飲んでいます」と言う。ミニさんのジャムーの材料は、クスリウコン、ウコン、ショウガ、レモングラス(serai)、シナモン(kayu manis)と、「ジョコウィ・レシピ」とほぼ同じ! 違いはシナモンとレモングラスが足されていることだ。

 「シナモンも体にいいんですよ。レモングラスはフレッシュな香り付けに。これは体を温めるジャムーで健康に良い。『ブラス・クンチュル』は風邪を予防したり生理の時に飲むジャムーですが、コロナ・ウイルス予防の免疫力アップのためには、こっちの方がいいと思います」とのことだ。

 外で売っているジャムーの中には、パウダーを溶かしただけの即席の物もあるし、衛生状態に問題があったりするため、家で手作りした方が良い、と言う。

 「免疫力を上げるためには、ジャムーとビタミンC!」と言うかけ声の下、ジャムー、ついでにミカンジュースの作り方を教えてもらった。

 実の所、作り方はそんなに難しくない。材料を薄切りにして、ゆでるだけだ。材料はスーパーで売っているし、値段も安い。

右から時計回りに、レモングラス、シナモン、ショウガ、ウコン、クスリウコン

 見慣れないクスリウコンは、ウコンに形が似ている。切ると、土っぽいにおいが立ち上る。色はウコンよりも薄いが、ゆでると真っ赤になる。「味はおいしくない」とのことだ。ウコンを切る時は、指や包丁に黄色い色が付いて取れなくなるので、注意が必要だ。

 ゆで始めると、あっという間に、クスリウコンの赤、ウコンの黄色がグラグラ沸騰するお湯の中で競争するように混じり合い、水が暗赤色に変わる。ゆでているところを見ると、謎の液体だ。煮詰まって出来上がったジャムーは、濃くいれ過ぎた紅茶のように濁った赤色で、おいしそうにはとても見えない。

 しかし、「どれだけまずいか」と覚悟して飲むと、意外に「あれっ?」と拍子抜けする。ショウガの味と香りがすっと喉を通り抜け、さわやかな後口だ。「ベリーホット」でもない「マイルド」味程度のジンジャーキャンディーから砂糖を抜いたよう。ふわっとシナモンが香る。ショウガの辛さが口に残って、最後にちょっとだけ舌がピリピリする。ミニさんによると、飲んでいると、喉や胸が温かくなってきて気持ちが良いという。

 飲みにくい人はヤシ砂糖(gula merah)かはちみつを足したり、レモンやスダチ(jeruk nipis)を絞っても良い。しかし、このままでも十分に飲める味だ。私がこれまでジャムーを苦手としていたのは味が変に甘ったるいことだったので、砂糖抜きの方がむしろおいしいのではないかと思った。

 朝起きてから、朝食の前に、コップ1/2〜1杯ほどの量を飲む。胃腸の強い人は、日に2回か3回、飲んでも構わない。

 続いて、ビタミンCの補給に、ミカンジュース。「jeruk peras」と呼ばれるジュース用のミカンを使う。「peras」は「絞る」という意味。jeruk perasは果肉が皮にくっ付いているので皮がむきにくく、そのまま食べるのには適さない。パサールで買うと、キロ1万5000ルピアぐらいと安い。果汁はたっぷりあるので、絞ってジュースにするとおいしい。「jeruk Medan」と呼ばれるインドネシアのミカンを使っても良い。

 

ジャムーの作り方
【材料(カップ6杯分)】
クスリウコン temulawak 100グラム
ウコン(ターメリック) kunyit 100グラム
ショウガ jahe 60グラム(※もしあれば、赤ショウガ=jahe merah=の方が良い)
シナモン kayu manis 15グラム
レモングラス serai 20グラム
※下写真ぐらいの量

【作り方】
①クスリウコン、ウコン、ショウガはたわしでよく洗って土を落とす。皮をむき、薄切りにする。
②レモングラスは包丁の背で全体をたたく。

③鍋に水カップ6杯、①、②を入れ、火にかける。中火で、水の量が約半分に減るまで、30分〜1時間ほど煮る。


④粗熱を取ってから、漉す。
⑤鍋にもう一度、水カップ6杯を入れ、材料を戻して、水が約半分に減るまで煮る。
⑥粗熱を取ってから、漉す。2回、煮出した材料は捨てる。

※鍋は、もしあれば、土鍋の方が良い。
※冷蔵庫に入れて保管する。


ミカンジュースの作り方
【材料(コップ1杯分)】
ジュース用ミカン jeruk perasまたはjeruk Medan 3個

【作り方】
①ミカンをよく洗う。
②ナイフで横半分に切って、果汁を絞る。

③ざるで漉して、種を取り除く。

※甘さが足りなければ、はちみつを加える。
※冷蔵庫で冷やして飲んでも、お湯を入れてホットジュースにしてもおいしい。