西宮奈央さんのMasak Kira-Kira 
#18 ベトナム風蒸し鶏とスープ(フォー・ガー)

 訪れるたびにその土地の料理にうっとりし、食べ尽くせないことを悔やみながら戻って来る国があります。ベトナムはその筆頭です。インドネシア料理も大好きですが、また異なるスパイス、そして多彩なハーブ使いなど、その味わいのバリエーションには感心してしまいます。

 現地の味をどうにか家で作れないかとやってみることもあり、今回ご紹介するのは、フォー・ガー(鶏スープの米麺)にチャレンジした際に出来たレシピです。本場の作り方とは違うでしょうし、「フォー」を名乗るには躊躇してしまうのですが、それでも大分、「近い」味が出来たのではないかな、と思っています。

 作り方は至って簡単です。蒸し器を使います。香味野菜とスパイス入りのお湯で、あらかじめ下味をつけた鶏を蒸すことによって、鶏の風味は逃さずにスープに活かし、蒸し鶏はしっとりジューシーに仕上げます。スープに対して蒸し鶏の量が多いので、蒸し鶏は別途、サラダやサンドイッチなどにしてお召し上がりください。

 ポイントは、下味の際に使うパクチー(香草)の根。パクチーの根は葉以上に強く香るので、これを活用しない手はありません。パクチー好きな方は是非、根付きの物を買って、お試しください。

 わが家では、日々の料理で出るニンジンや大根の皮、ネギの青い部分などを冷凍して保存しておき、スープで使う香味野菜に活用します。ゴミを減らせますし、野菜も余すところなく使い切ることができます。

 魚醤はベトナムの場合、ヌオックマムですが、タイのナンプラーでも問題ありません(インドネシアで「ケチャップ・イカン」として売られているもののほとんどは、タイのナンプラーです)。

 フォーにしたくて考えたレシピなので、蒸し鶏とスープが出来たら、麺を入れたくなります。フォーのような米麺はもちろん、冷や麦などの乾麺や、冷凍うどんでも、おいしく食べられます。蒸し鶏とスープをおかずとお汁として、ご飯と一緒に召し上がっても。ちょっと異国風の味わいを、お楽しみください。

材料
鶏胸肉 daging ayam (dada) 1羽分
魚醤 kecap ikan 大さじ1半
はちみつ madu 大さじ1
ニンニク bawang putih 1片
パクチーの根 akar daun ketumbar 大体、2株分

[スープ]
ショウガ jahe 30g
レモングラス serai 30g
大根 lobak 20g
ニンジン wortel 20g
ネギの青い部分 daun bawang (bagian hijau) 15g
シナモンスティック stik kayu manis 1/2本
八角 bunga lawang 1片
粒黒コショウ biji lada hitam 小さじ1/2
水 air putih 800ml
塩 garam 適量
魚醤 kecap Ikan 適量
ライム jeruk nipis 適量

作り方
1.鶏の胸肉は半分に切り分け、脂身や筋などがあれば取り除く。串やフォークなどを使って全体を刺し、味が染みやすくする。はちみつ、魚醤に、すりおろしたニンニク、細かく刻んで潰したパクチーの根を合わせて、よく混ぜたものを全体に揉み込む。ラップをして、1時間から一晩、寝かせる。
2. ショウガとレモングラスはたたいてつぶし、大根とニンジンは半分〜1/4に切る。蒸し器になる大きさの鍋に、塩と魚醤以外のスープの材料を入れ、火にかける。沸騰したら弱めの中火に落とし、蒸し器に1の鶏を入れる。15分ほど蒸したところで、鶏肉の中まで火が通ったか確認し、火が通っていれば、取り出して自然に冷ます。
3.2の蒸し器に残っているスープを漉して、香味野菜やスパイスを取り除く。鍋に戻し、塩、魚醤で好みの味に整える。 麺で食べる場合は、別途、麺を湯がき、好みの野菜やハーブなど (いずれも分量外)と、裂いた2の鶏を添え、ライムを搾る。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA西宮奈央(にしみや・なお)
イギリス出身の写真家の夫とバンドン在住。ご飯は食べるのも作るのも大好き。インドネシアで簡単に作れる料理をご紹介します。
 
 
 
西宮奈央さんのMASAK KIRA-KIRA バックナンバー
#1 イチゴとクマンギのシャーベット
#2 ココナッツ・レモン・チキン
#3 ソムタム2種
#4 パン粉のスープ
#5 花椒風味の中華風チキン
#6 キャロット・ジンジャー・ケーキ
#7 タンドリー風の焼き魚
#8 桜色のビーツのペスト
#9 チェコ風ジャガ芋のパンケーキ
#10 ナツメヤシのトリュフ
#11 ラープ
#12  キャッサバとココナッツの焼き菓子
#13 3色のスープ
#14 アボン・イカン
#15 イカン・カンジョリ
#16 トウガラシのジャム
#17 カリフラワーのスパイシー・フリッター

インドネシア全34州の旅 #17 
リアウ州 
仏教遺跡と王宮

文・写真…鍋山俊雄 

 スマトラ島の北側の、マレーシアに挟まれた海域は、マラッカ海峡という海上交通の要所であり、昔から交易が栄えていた。古くは7世紀ごろから、同海峡の交易ルートを広く支配したスリウィジャヤ王国、そして15世紀にはマラッカ王国が繁栄している。スリウィジャヤ王国の支配地域でもあったスマトラ中南部の3州(リアウ州、ジャンビ州、南スマトラ州)の旅を、今回から3回に分けて書いていく。

 最初は、リアウ州の旅。リアウ州は、当初はバタム島やビンタン島などシンガポール周辺海域の島々も含んでいたが、これらはリアウ諸島州として2004年に分離した。北海道以上の広さを持ち、石炭、パームヤシなど天然資源にも恵まれており、州都はプカンバル (Pekanbaru)。ちなみに、現在のインドネシアの統一言語として独立時に制定されたインドネシア語は、このリアウ州地域で話されていたマレー語のリアウ州の方言を元にしているそうだ。

 リアウ州の観光ポイントは、プカンバルの街中には目ぼしいものはなく、車で郊外にまで足を伸ばさなければならない。

 一つは、スリウィジャヤ王国時代の建造と考えられているムアロ・タクス(Muaro Takus)という仏教寺院遺跡。プカンバルから車で西スマトラ州方面に向かい、約2時間。往復4時間余りの行程なので、早朝にジャカルタを発てば、日帰りも可能である。

 仏教遺跡としては、世界遺産であるジョグジャカルタのボロブドゥール(Candi Borobudur)が有名だが、スマトラにも仏教遺跡がいくつかあり、このムアロ・タクスと、(次回の)ジャンビ州にあるムアロ・ジャンビ(Candi Muaro Jambi)が有名だ。

 リアウの州都プカンバルへは、ジャカルタから飛行機で約1時間45分。プカンバルはスマトラ中部の中心都市だ。
 バタムやシンガポールへの便もあるプカンバルの真新しい空港に降り立つと、あらかじめネットで予約していたレンタカーに乗り、一路、ムアロ・タクスへ出発した。ところどころ舗装の荒れた場所があり、かなりスピードを落とす所もある。片道約130キロなので、2時間半もかからずに到着すれば、まずまずだろう。

ムアロ・タクスの全景

 ようやく到着したムアロ・タクス。観光スポットとしての整備具合は、ジョグジャカルタのボロブドゥール遺跡と比べたら、かなり落ちる。一応、売店らしきものや公衆トイレなどはあるが、「田舎の公園」といった風情で、のんびりしている。

 ムアロ・タクスの建造時期は、研究者の間でもはっきりしていない。しかし、この遺跡は、スマトラ島でも仏教が栄えた時期があり、スリウィジャヤ王国の中心地がここにあったとの説の根拠にもなっているようだ。インドネシア国内にある、ほかの仏教遺跡とは形が異なり、ストゥーパ(仏塔)などは周辺のミャンマー、スリランカ、インドなどの影響を受けている、との見方もある。

 この遺跡は1860年、オランダ人の考古学者によって、森の中で発見された。修復が施された所もあり、保存状態は良い。特に遺跡の管理人がいるわけではなく、一応、立ち入り禁止の部分もあるようだが、観光客がお構いなしに遺跡の上に登ったりしていて、かなり管理が緩く、保存面でこれで良いのか、余計なおせっかいながら、少々、心配になる。

Candi Bungsuの修復場所

 ムアロ・タクス周辺には目ぼしい物はなく、1時間少々、のんびりした後、また元来た道を引き返し、プカンバルの街に戻った。プカンバルの街は、立派なモスクとモダンな造りの図書館が印象的なほか、あまり見るべき所がない。

 もう1カ所の見所は、シアク・スリ・インドラプラ(Siak Sri Inderapura)王国の王宮が残る、コタ・シアク(Kota Siak)。こちらもプカンバルからはおよそ100キロ、延々とパームヤシ畑を眺めながら、空港から東方に向けて車を走らせ、片道2時間だ。


 パームヤシ畑が終わると、整備された、こぢんまりとした街が見えてくる。シアク川にかかる立派な吊り橋を渡ると、王宮のある街が広がる。


 シアク王国は1723年から1945年まで、200年以上続いており、12代目の王が1945年のインドネシア独立宣言後、インドネシアへの合流を宣言して、王国は消滅した。

 王宮はシャリフハシム王の時代に、ドイツ人の建築家が1889年から4年をかけて建造した物だ。王国消滅から70年以上も経過しているのに、調度品や部屋の装飾が、まだきれいに保存されており、見応えがある。

王宮の内部

王宮の豪華な階段

最後のシアク国王


 中でも目を引くのが、巨大なグラモフォン(Gramophon)。世界に2つしかない(もう1つはドイツ)という円盤式蓄音機で、1896年に、当時の王が欧州旅行から持ち帰ったそうである。直径50センチはあろうかという円盤を縦にはめて作動させると、クラシック音楽を聞くことができる。たまたまグラモフォンが作動され、大型オルゴールのような音色を聞くことができた。
 この王宮から少し歩いた所、シアク川を臨む岸沿いに、小さいながら装飾がきれいな中国寺院がある。珍しいのは、その中国寺院の周辺の商店街が、同様に、赤を基調としたデザインで統一されていること。写真映えしそうだ。


 街中はきれいに清掃されて、シアク川沿いには公園があり、伐採した木材を積んだ艀がゆっくりと牽引されていた。

 リアウ州の見所はプカンバルからはちょっと遠いが、頑張れば日帰りでも行ける。満潮時に海につながる河口から、海水が数十キロ規模で川を逆流し、サーフィンができることで有名な、カンパル(Kampar)川もある。ここはプカンバルから車で5時間かかるとのことで、まだ行けていない。  北海道を超える広さを持つリアウ州だけに、調べれば、まだいろいろあるかもしれない。

 

 

鍋山俊雄(なべやま・としお)
インドネシア在住期間は計12年になる。仕事でジャワ、カリマンタン、スマトラへの出張が多いことに加えて、「週末弾丸トラベラー」としてインドネシア各地を放浪し、全34州を訪問した。

 

インドネシア全34州の旅
#0 空港
#1 北スラウェシ州 インドネシアの最北端?
#2 アチェ州 インドネシア0キロ地点と津波の跡
#3 ブンクル州 英国の砦、スカルノの足跡
#4 南カリマンタン州 川の街の水上マーケット
#5 バンテン州 バンテン王国跡へ、列車の旅
#6 西カリマンタン州 春分の日に赤道へ 影がなくなった!
#7 南東スラウェシ州(上) 波の音しか聞こえない、ぜいたくな空間
#8 南東スラウェシ州(下) インドネシア最大級、ブトン王国の城壁都市
#9 バンカ・ブリトゥン州 アホック前知事の故郷、「ラスカル・プランギ」の島
#10 リアウ諸島州 最北端の島の1つ。石群が織りなす造形

#11 西スラウェシ州 トラベラーの中でも「まだ行ってない」率が高い

#12 パプア州 ①国境編(ジャヤプラ、メラウケ) 国境の看板の向こうは熱帯雨林

#13 パプア州 ②山編(ワメナ) 伝統の残り香のあるうちに

#14 パプア州 ③海編(ティミカ・パンタイ) 船で新しい土地へ

#15 パプア州 ④戦争編(ビアク) 息をのむ美しさの海、戦争の名残り

#16 西パプア州 ラジャアンパットを一人で弾丸旅行する方法