主君のとらわれている寺に忍び込むが、見張りのフクロウ荒法師たちに見つかり、絶体絶命の小太郎たち。

「私に策がございます。皆様、ちと鼻をふさいでくだされ……ぼううううん」

 小太郎の大きな屁の音が鳴り響き、強烈なにおいが周囲に広がった。
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「うわああああああ!」

 フクロウたちはたまらず囲みを解き、鼻を押さえてうずくまった。「ううっ、なんという飛び道具を」。

「小生、鳥にしては珍しく、屁を自在にあやつることができまする。状況に応じた小出しも可能にござる」

 小太郎は得意げに言った。

「もうよい。味方があぶないわ」と鼻を押さえた風来坊。

 小太郎たちは混乱に乗じて寺の建物の中に駆け込んだ。

 この寺は外から見ると3階建てだが、実は4階建て。主君のとらわれている隠し部屋は、階そのものが隠されている、中2階部分にあると考えられる。

「中2階に上るための秘密の階段がどこかに隠されているはず」

 走りながらカピ蔵は言った。

 寺は豪華なつくりで、ふすまや杉戸のほとんどには美しい絵が描かれている。その1枚の前で、風雷坊は立ちどまった。

 押入れのふすまには、南蛮風の装いをした、見たことがないほど真っ白な美しい鳥が描かれていた。
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「たしか見張りの者が、しらとりの間、と申していたな」

 さっ、と、そのふすまを開けると、そこは押入れではなく、階段になっていた。
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「ここが入口じゃ! 上がるぞ!」

 小太郎たちが階段を駆け上がろうとしたその時。

「バスッ!」

「バスッ!」

「曲者め!」

 階段の蹴込みの部分から、いきなり槍が突き出てきた。
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「うわっ、あぶない!」

「なんと、からくり階段であったか!」

 この階段の下は小部屋になっており、蹴込みの部分には板ではなく、紙が貼られている。登る者の足の影が内側から見える、からくりがほどこされているのだ。

「なにを! われらがインコであることを忘れたか!」

 小太郎とオカメもんは槍をつかんで、木の柄の部分をあっという間にかじり切った。
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「うわっ、早い!」

「うぬっ、槍がもう使い物にならん!」

 フクロウたちはちびた槍を投げ捨て、表にまわって追いかけて来るようだ。

 中2階に上がり、廊下をちょっと走りかけたカピ蔵は首をかしげた。

「皆の者、走ってはならぬ……この廊下は、どうやら、うぐいす張りのようじゃ」

「うぐいす張り。歩くとキュッキュッときしむ音が鳴るように、わざと作った仕掛けか」
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「さよう。奴らはフクロウなので耳が非常に良い。侵入者の動きがすぐわかるようにしておるのじゃ」

「耳が良い……?」

 オカメもんがつぶやいた。

「それほどまでに耳が良いのなら、うるさい音はわれらが感じるよりずっとうるさく、不快に感じるであろうな」

「うるさい音……」

 彼らがふと気づくと、フクロウの荒法師たちが音もなく現れ、まわりを取り囲んでいた。
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「うわっ、いつの間に! 全然、音がしなかったぞ!」

「ふふふ。フクロウは音をたてずに獲物に近付くのが得意なんじゃ。さあ、神妙にせよ」

 荒法師どもが、ぐっと一歩、前に踏み出したそのとき。

「ギャギャギャギャギャーーーーーーー!!!」

 耳をつんざくような叫び声が辺りにこだました。小太郎が大声を上げたのだ。
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「ぎゃあっ!」

 耳が敏感なフクロウたちは、たまらず耳をおさえてうずくまってしまった。

「小太郎どの、見事なコザクラ鳴きじゃ。わしも頭が割れそうじゃよ」と風雷坊。

 苦しむフクロウたちをあとに残し、廊下を進む一同。すると、小太郎の声に続いて、

「ピキョピキョピキョピキョピキョ……」

 不意に、高くよく通る声が聞こえてきた。

「あっ、あの声は?!」

「噛虎(かみとら)様のコザクラ鳴きじゃ! さほど遠くないところにおられるぞ」

「こちらじゃ! いそげ!」

 小太郎たちは、声のするほうへ向かって走り出した。(つづく)
 
インコ侍 0 時間旅行へ出発!
インコ侍 1 戦国時代
インコ侍 2 忍者と勝負
インコ侍 3 秘密作戦
インコ侍 4 出城に潜入
インコ侍 5 寺の井戸
 
こまつか苗(こまつか・なえ)
ペンギン・インコ陶作家。京都の清水焼の工房で陶絵付け職人として10年働いた後、大阪の自宅に開窯し、ペンギンとインコをモチーフにした陶作品(時々、カピバラ)を制作している。本職とは違うものの、イラストと文章による「らくがきドラマ」、「ラグビーポジション・インコ解説」などを発表し、好評を博す。