【インドネシア全34州の旅】#7 南東スラウェシ州㊤ 波の音しか聞こえない、ぜいたくな空間

【インドネシア全34州の旅】#7 南東スラウェシ州㊤ 波の音しか聞こえない、ぜいたくな空間

2021-05-30
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文と写真・鍋山俊雄

 スラウェシ島の中では、マナドがある北スラウェシ州、マカッサルやトラジャがある南スラウェシ州が日本人にはなじみのある州だと思う。

 南東スラウェシ州は「K」のような形をしたスラウェシ島の右足に当たる。インドネシアでは政府が重点的に観光開発する10の地域があり、今回ご紹介するワカトビ諸島はその1つである。

 ワカトビとは、ワンギワンギ(Wangi-Wangi)、 カレドゥパ(Kaledupa)、トミア(Tomia)、ビノンコ(Binongko)の4つの島の頭文字を取った言葉(Wa-Ka-To-Bi)であり、 その中心はワンギワンギにある。

 スラウェシ島では、南のマカッサルと北のマナドが空のハブだ。スラウェシ内の地方都市へは、どちらかの空港からプロペラ機に乗り換えての旅になる。ジャカルタを午前4時発の便で出発し、マカッサルまで約2時間。そこからプロペラ機で、南東スラウェシ州の州都ケンダリ(Kendari)経由で、ワンギワンギにはようやく午前10時半ごろに到着した。

 観光誘致に力を入れているだけあって、改装されたばかりの新しい空港ビルが目を引く。だが、荷物はリヤカーを使って人力で引いて来られて、小さな到着ロビーのコンベアに載せられる。空港を出ると、地方都市でよくある白タクのお兄さん方に囲まれるというパターンである。この時は、今回泊まるリゾートホテルが送迎付きだったため、迎えの車に乗り込んだ。

真新しい空港ビル

 ワンギワンギ島では、島の外周に沿って空港やホテルがある。空港から15分ほど行った所がホテル、港を中心とするダウンタウンは、そのホテルから見てちょうど反対側にある。ホテルへの道すがら、きれいな海が見える一方で、あまり家はない。かと言って、カリマンタンのように木がうっそうと茂るジャングルでもなく、乾いた未開発の大地に灌木が生える中、真っ直ぐの道路が延々と続いていく。

 到着したリゾートホテルは外国人観光客を意識して作られており、もちろんバリのようにはいかないが、インドネシア人のほかに、ちらほら外国人客も見られた。ワカトビはダイビングで売り出し中で、ダイバーの間ではすでに有名なようだ。ホテルからもダイビングのツアーを手配できる。

 ホテルと言っても、高床式の木造コテージ(冷房もある)が砂浜に立ち並ぶという形式だ。荷物を置いて落ち着いてみると、波音しか聞こえない、ぜいたくな空間である。オープンテラスの大きなレストランがあり、西洋料理も含むメニューがある。その奥にはバーがあり、アルコールも飲めそうな雰囲気ではあるが、スタンドには何も置いてないので、本当にアルコールが常時飲めるのかは不明だ。

リゾートホテルのレストラン
(南東スラウェシ)ワカトビ
リゾート沿いに広がる白砂の海岸

 昼食を取ってから一休みしている時、ちょうど海は干潮になっていて、沖の岩礁まで歩いて行けた。夜は満潮になるせいか、波の音が大きく、あたかも足元まで波が来ているかのように錯覚するほどである。

干潮時には岩場まで歩いて行ける
(南東スラウェシ)ワカトビ
沖合の岩まで歩いてみる
(南東スラウェシ)ワカトビ
夕暮れの静寂
(南東スラウェシ)ワカトビ
月明かりの下で

 翌日は日の出を見ようと早起きした。波の音以外、何も聞こえない中で、うっすらと東の空が明るくなり、海面に太陽が映りながら昇っていくさまは素晴らしい。

(南東スラウェシ)ワカトビ
ワンギワンギ島の夜明け
(南東スラウェシ)ワカトビ
満潮時の眺め
(南東スラウェシ)ワカトビ
空に映えるヤシの木
(南東スラウェシ)ワカトビ
海岸で見付けた建築中の船
(南東スラウェシ)ワカトビ
静かな海

 街(Wanci)の方にも足を伸ばしてみた。足を伸ばすと言っても、ホテルから車で40分ぐらいも島の外周に沿って行く必要があり、徒歩で行ける範囲には何もない。

(南東スラウェシ)ワカトビ
地元の人たちが水遊びで集う湧き水プール
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 港にはケンダリから物資や人々を運んだ船が入って来る。港を中心に水上家屋の地域もあり、市場やモスクを中心に小さな街が広がっている。市場では捕れたての新鮮な魚や食品を取り扱っており、夕方は地元の人でにぎわっていた。

(南東スラウェシ)ワカトビ
水上家屋街と、漁に出る船
(南東スラウェシ)ワカトビ
街中の伝統市場
(南東スラウェシ)ワカトビ
捕れたての魚が並ぶ

 ホテルに帰りがてら、夕日が眺められる高台に寄った。残念ながら雲が厚く、夕日の絶景を拝むことはできなかったが、海に延びた桟橋は人々でにぎわい、地元の若者が泳いでいる。ワカトビのほかの3島へも、先ほどの港から船が出ているので、日程に余裕があれば、のんびりとアイランド・ホッピングもできそうだ。

(南東スラウェシ)ワカトビ
島の西側の高台にある展望台
(南東スラウェシ)ワカトビ

 インドネシアで国際的な観光地のバリ、その後を追いつつあるロンボクは有名だが、きれいな白砂の海岸、コーラルブルーの海、そして人がほとんどいないプライベートビーチは、まだまだ国内にたくさんある。このワンギワンギ島は、静かな海と素朴な小さな街があるだけで、にぎやかな土産物屋街もショッピングモールもない。観光開発をしていく中で、この島も今後、少しずつ様相が変わってくるのかもしれない。

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 ワンギワンギ島は、ダイビングやシュノーケリングを楽しみたい人、あるいはジャカルタの喧騒から遠く離れた島の海岸でビール片手にぼーっと日がな1日過ごしたい人にはオススメ。

 ちなみにワンギワンギのwangiとはインドネシア語で「香る、芳しい」といった意味だ。一方で、同じ南東スラウェシ州にあるブトン島(Pulau Buton)にはBau-Bau(Bau=におう)という街がある。次回は、このBau-Bauをご紹介します。

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