朝、まだ暗いうちに、戸を「Permisi, permisi(すみません)」とうるさくたたく音で、たたき起こされた。Pが出ると、「団体なので、宿泊代50万ルピア」と言われる。計算より3万ルピア多いがまぁいいか、と払うと、次にまたうるさくたたく音がして、「エクストラベッド代が入っていなかったので、62万ルピア」と言う。そのくせ、朝食は2人分だけ(ナシゴレンと水)。聞くと、「そういうシステムだから」。朝早くにたたき起こした理由は「もう起きていると思ったから」。すっかり、印象が悪くなる。ここは1泊だけにして、最初に泊まった「ミガ」に移ることにする。
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 ミガに移ってシャワーを浴び、ついでに昼食を食べて、出発した。今度は北を目指す。山の中を突き進んで行くと、いろは坂のような曲がりくねった道に、上下のアップダウンが加わる。「ふわっ」と体が浮き、ジェットコースターに乗っているようだ。

 周囲を取り囲むのは、天まで届きそうな高さのココヤシの木、「こんなに大きくなるのか」と驚くほど茂っているニッパヤシの木。入道雲がその上にこんもりと盛り上がっている。

 ようやく着いたトゥレロト海岸には車が何台も停まり、海に突き出たワルンでは人が食事をしていたり、浅瀬で人が泳いでいたりと、観光地らしく賑わっていた。

 水着とTシャツに着替えてから、舟に乗り込んだ。暖かい緑色をした海の上を滑るように進むうち、不思議な場所に着いた。浅い海にサンゴがごろごろと広範囲に散らばっている。その中央に、少し赤みがかって見える白い砂浜の小島があった。サンゴが砕けた細かい白砂に赤いかけらが混じっていて、ピンク色に見える。ここに、左右、前後、いろんな方向から波が打ち寄せている。

 海に入ると、まるで温泉のように温かい。浅いので、太陽の熱で暖まっているのだろう。海の真ん中にいるのに、お風呂に入っているような快適さ。サンゴで遮られているからか、波もほとんどなく、まさに、お風呂。仰向けになると、海水なので、楽に浮く。ぷかーっと浮いたまま、ぐるっと頭を巡らせると、360°、海に囲まれた光景だ。
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 一緒に舟に乗って来た子供2人のほかは、われわれ以外、誰もいない。「天国に一番近い島」だと思った。
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 ここは岸から約1キロ(舟で約5分)。津波で地形が変わって出来た新しい場所、とのことだ。

 海の中をのぞくと、サンゴの間を魚が泳いでいる。芽を出しているマングローブの木もあった。ここが緑に包まれる日も来るのかもしれない。
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 日没近くに舟に乗って、岸まで戻った。帰り道は星空が広がり、南十字星とケンタウルスの明るい2つ星が森の上にあった。
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 「ミガ」に帰り着くと、水が出ない。「チェックするので待ってくれ」と言うので待つが、いつまで待っても水が出ない。しびれを切らして、「なぜ水が出ないのか?」と聞きに行くと、舌打ちされた。1つの部屋だけ水が出たので、そこで順番にシャワーを浴びた。一晩中、水は出ないままで、バケツの水も尽きかけ、トイレへ行くのにも困った。水が出ないホテルというのはさすがに初めてだ。「ニアスには、ほかに良いホテル、高級ホテルはないのか?」とPに聞くと、一番良いのが、ミガとミュージアムとのこと。うわぁ、ワースト1とワースト2が……。ちなみに西海岸の方はまったく探索できていないので、こちらにはもう少しマシな宿があるかもしれない。

 ニアスにいる間はほぼずっと、電波はなく、インターネットもつながらなかったのだが、空港でもネットはつながらなかった。海を越えてメダン空港に着いた途端、回線は3Gになった。ニアスでは何も買えなかったお土産も、メダン空港で買った。

 ジャカルタに戻って来ると、普通だと「あーあ、戻って来てしまった」と、少しガッカリした、嫌な気持ちになるのだが、「ほっとした」のは初めてだ。水、電気、電波、この3つは現代生活の基本必需品ではないだろうか。しかし、ジャカルタにいると忘れてしまうが、この3つがない所の方がインドネシアでは「普通」とも言える。そんなに物は豊富になくても良いから、この3つだけでも供給できるように、インドネシア全体の生活が向上するようにならないだろうか? ジャワ高速鉄道よりニアスの電気の方が先ではないか?

 「観光」としては、ニアス島は厳しかった。まず、物がない。お土産すらない。ホテルでも水がなかったり、停電していたり。そして、観光客へのサービス精神が低いため、気持ち良く観光できない。バリ島はもちろん、比較対象外なほど素晴らしいのだが、「ジャワの秘境」と言われるバドゥイの村でも、ニアスより良い観光地と言えるだろう。水、電気はあるし、手織りの布、はちみつ、木の根のバッグなど、立派な工芸品やお土産もある。

 観光地としては安易にお薦めはできないのだが、秘境探検の覚悟があれば、オラヒリファオとトゥレロトの2カ所はお薦めの場所だ。気持ち良かった海のお風呂、子供たちが風を切って頭上を跳ぶ音は、今でもよく思い出す。
 
 
●トゥレロト海岸からの舟
11:30-日没まで、約30分ごとに運航。往復1万ルピア。それ以外の時間はチャーター可。
 
 

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イントロダクション
1 闇をのぞく 
グヌンシトリ Gunungsitoli

2 石を跳ぶ 
バウマタルオ Bawomataluo 
オラヒリファウ Olahili Fau