ドラえもんとインドネシア。
インドネシアでのドラえもんの歴史は意外に浅いが、日本人が思う以上に人気は根強い。
未来から来たロボットで、ポケットから便利な道具を次々に取り出してくれるドラえもんとは、「明るい未来」の象徴ではないだろうか。
インドネシアでのドラえもん人気には、明るい将来が目の前に開けていることへの確信があるように思う。

P1570824_path_trim 日本へ取材に行くことになったインドネシア人記者のプトリに「日本ではどこへ行きたい?」と聞いたところ、「ドラえもんに会いたい!」と即答。「ドラえもん」という言葉に、ちょっと意表を突かれた。正直、スカイツリー、東急ハンズ、築地、ジブリなどが先に来るかと思っていたので。

 「一体、ドラえもんにどこで会えるだろうか?」と考えて調べたところ、川崎市に藤子・F・不二雄ミュージアムがあることを知る。どこでもドアがある、暗記パンが食べられる……もう、ここにするしかないだろう。取材申請書の「ご要望ほか」という欄には、プトリが言った、「ドラえもんと一緒に遊びたい」をそのまま記入した。

 ちなみに、プトリの後で入社したもう一人のインドネシア人記者、アンニサの呼び名は「エモン」という。本名のかけらもないこのあだ名はドラえもん好きだったために付いた。子供のころからずっと「エモン」。

 日本人にとって、もしかして、ドラえもんは「昔懐かしい」アニメ、「子供向け」のコミックなのかもしれない。しかし、インドネシア人の間では、今でも生き生きと、生きているキャラクターなのだ。

DSCF2857 藤子・F・不二雄ミュージアムは、2011年9月3日(ドラえもんの誕生日は2112年9月3日)にオープンした。人気は、土管やどこでもドアが置かれた「はらっぱ」、泉からジャイアンが出て来る「きこりの泉」。恐竜に乗ったのび太やドラえもん、どこでもドアと一緒に記念撮影ができる。しかし、「このミュージアムで一番、見ていただきたいのは、オリジナルの原画。アニメやコミックスでしか見たことがないと思うので」と、ミュージアムの広報。

DSCF2802 ミュージアムに保管されている原画は約5万点。このうちの一部と複製を展示し、複製には『パーマン』に出て来る「コピーロボット」のしるしが付いている。絵が展示されている高さは通常より低く、ドラえもんの目の高さ(ドラえもんの身長は、連載開始当初の小学4年生の平均身長)、つまり、子供の目線になっている。

 当時の原稿はコマ割りからペン入れまで、すべて手描き。コンピューターを使ったデジタルではない。活字のせりふは吹き出しの中に、切り貼りで入れてある。非常に生々しい、ペンの跡が直に見える原稿を間近で見ることができる。マンガを読んでいるのではわからない、絵の細部やホワイトの跡まで見られる。ドラえもんの頭や体部分の細かい縦線は、トーンを使ったのではなく、定規を使った手描きだ。藤子Fさんは、ドラえもんはすべて自分で描いたと言う。

 ドラえもんとのび太がマンガの描き方を解説してくれる映像が楽しい。下書き、コマ割り、ペン入れと進み、完成したマンガにのび太がインクをこぼして終わり、というオチ付き。

DSCF2745_combine_2752 川崎市生田にあった藤子Fさんの自宅からそっくり持って来た作業机の上には、恐竜(「ドラえもん」にも頻出する)のフィギュアが並び、自然科学系の図鑑や雑誌が積まれている。その上には、膨大な蔵書の棚がそびえ立つ。児童マンガであっても「ウソを書いてはいけない」という信念の下、例えば、ある時代にタイムスリップする設定だと、その時代の動植物を図鑑で調べて、「この植物を描いて」などとスタッフに指示をしていたという。

 ミュージアムでプトリは、オリジナル短編映画(15分)を見てゲラゲラ笑い、ミュージアムのあちこちにいるドラえもんと一緒に写真を撮ってもらったり、ここでしか買えないガチャポンやピンを即買い。プトリだけではなく、ミュージアムのあちこちで笑い声が上がっている。ドラえもんが世界的に有名で、世界中の人に愛されていることを改めて思う。

 入場時間は1日4回と決められているが、入場してしまったら、何時間いても構わない。マンガも揃っている。どら焼きを手にマンガを読むドラえもんの横で、マンガを読みふけっている人もいて、時間を忘れそうだ。

DSCF2831 ドラえもんの話には「タイムトラベル」が多い。ドラえもん自身が未来から来た猫形ロボットだし、他の「タイムトラベルもの」のマンガや映画と比べても、非常に気軽に時空を行き来する。大仰な機械を使ったりせずに、「タイムマシン」は机の引き出しに入っているし、「タイムテレビ」で過去や未来の様子を見られたりする。ドラえもんでは、時間と場所の越えられない壁は霧消する。

 マンガの中だけでなく、ドラえもんは時空を超えた。藤子Fさんの言葉、「一生に一度は、読んだ子供達の心にいつまでも残るような傑作を発表したいと思っています」は十分に実現していると言えるだろう。

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藤子Fさんの仕事机が展示されている

 ドラえもんも、藤子Fさんも、時空を超え、いつまでも存在し続けるだろう。

 もし、タイムマシンがあったら、藤子Fさんがドラえもんのマンガを描いている時代に小誌『+62』0号を持って行き、「ドラえもんは今でも、インドネシアで、こんなに愛されていますよ!」とお見せしたいなぁ。

 

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