【インドネシア全34州の旅】#17 リアウ州 仏教遺跡と王宮

【インドネシア全34州の旅】#17 リアウ州 仏教遺跡と王宮

2018-06-04

文・写真…鍋山俊雄 

 スマトラ島の北側の、マレーシアに挟まれた海域は、マラッカ海峡という海上交通の要所であり、昔から交易が栄えていた。古くは7世紀ごろから、同海峡の交易ルートを広く支配したスリウィジャヤ王国、そして15世紀にはマラッカ王国が繁栄している。スリウィジャヤ王国の支配地域でもあったスマトラ中南部の3州(リアウ州、ジャンビ州、南スマトラ州)の旅を、今回から3回に分けて書いていく。

 最初は、リアウ州の旅。リアウ州は、当初はバタム島やビンタン島などシンガポール周辺海域の島々も含んでいたが、これらはリアウ諸島州として2004年に分離した。北海道以上の広さを持ち、石炭、パームヤシなど天然資源にも恵まれており、州都はプカンバル (Pekanbaru)。ちなみに、現在のインドネシアの統一言語として独立時に制定されたインドネシア語は、このリアウ州地域で話されていたマレー語のリアウ州の方言を元にしているそうだ。

 リアウ州の観光ポイントは、プカンバルの街中には目ぼしいものはなく、車で郊外にまで足を伸ばさなければならない。

 一つは、スリウィジャヤ王国時代の建造と考えられているムアロ・タクス(Muaro Takus)という仏教寺院遺跡。プカンバルから車で西スマトラ州方面に向かい、約2時間。往復4時間余りの行程なので、早朝にジャカルタを発てば、日帰りも可能である。

 仏教遺跡としては、世界遺産であるジョグジャカルタのボロブドゥール(Candi Borobudur)が有名だが、スマトラにも仏教遺跡がいくつかあり、このムアロ・タクスと、(次回の)ジャンビ州にあるムアロ・ジャンビ(Candi Muaro Jambi)が有名だ。

 リアウの州都プカンバルへは、ジャカルタから飛行機で約1時間45分。プカンバルはスマトラ中部の中心都市だ。
 バタムやシンガポールへの便もあるプカンバルの真新しい空港に降り立つと、あらかじめネットで予約していたレンタカーに乗り、一路、ムアロ・タクスへ出発した。ところどころ舗装の荒れた場所があり、かなりスピードを落とす所もある。片道約130キロなので、2時間半もかからずに到着すれば、まずまずだろう。

ムアロ・タクスの全景

 ようやく到着したムアロ・タクス。観光スポットとしての整備具合は、ジョグジャカルタのボロブドゥール遺跡と比べたら、かなり落ちる。一応、売店らしきものや公衆トイレなどはあるが、「田舎の公園」といった風情で、のんびりしている。

 ムアロ・タクスの建造時期は、研究者の間でもはっきりしていない。しかし、この遺跡は、スマトラ島でも仏教が栄えた時期があり、スリウィジャヤ王国の中心地がここにあったとの説の根拠にもなっているようだ。インドネシア国内にある、ほかの仏教遺跡とは形が異なり、ストゥーパ(仏塔)などは周辺のミャンマー、スリランカ、インドなどの影響を受けている、との見方もある。

 この遺跡は1860年、オランダ人の考古学者によって、森の中で発見された。修復が施された所もあり、保存状態は良い。特に遺跡の管理人がいるわけではなく、一応、立ち入り禁止の部分もあるようだが、観光客がお構いなしに遺跡の上に登ったりしていて、かなり管理が緩く、保存面でこれで良いのか、余計なおせっかいながら、少々、心配になる。

Candi Bungsuの修復場所

 ムアロ・タクス周辺には目ぼしい物はなく、1時間少々、のんびりした後、また元来た道を引き返し、プカンバルの街に戻った。プカンバルの街は、立派なモスクとモダンな造りの図書館が印象的なほか、あまり見るべき所がない。

 もう1カ所の見所は、シアク・スリ・インドラプラ(Siak Sri Inderapura)王国の王宮が残る、コタ・シアク(Kota Siak)。こちらもプカンバルからはおよそ100キロ、延々とパームヤシ畑を眺めながら、空港から東方に向けて車を走らせ、片道2時間だ。


 パームヤシ畑が終わると、整備された、こぢんまりとした街が見えてくる。シアク川にかかる立派な吊り橋を渡ると、王宮のある街が広がる。


 シアク王国は1723年から1945年まで、200年以上続いており、12代目の王が1945年のインドネシア独立宣言後、インドネシアへの合流を宣言して、王国は消滅した。

 王宮はシャリフハシム王の時代に、ドイツ人の建築家が1889年から4年をかけて建造した物だ。王国消滅から70年以上も経過しているのに、調度品や部屋の装飾が、まだきれいに保存されており、見応えがある。

王宮の内部

王宮の豪華な階段

最後のシアク国王

 中でも目を引くのが、巨大なグラモフォン(Gramophon)。世界に2つしかない(もう1つはドイツ)という円盤式蓄音機で、1896年に、当時の王が欧州旅行から持ち帰ったそうである。直径50センチはあろうかという円盤を縦にはめて作動させると、クラシック音楽を聞くことができる。たまたまグラモフォンが作動され、大型オルゴールのような音色を聞くことができた。
 この王宮から少し歩いた所、シアク川を臨む岸沿いに、小さいながら装飾がきれいな中国寺院がある。珍しいのは、その中国寺院の周辺の商店街が、同様に、赤を基調としたデザインで統一されていること。写真映えしそうだ。


 街中はきれいに清掃されて、シアク川沿いには公園があり、伐採した木材を積んだ艀がゆっくりと牽引されていた。

 リアウ州の見所はプカンバルからはちょっと遠いが、頑張れば日帰りでも行ける。満潮時に海につながる河口から、海水が数十キロ規模で川を逆流し、サーフィンができることで有名な、カンパル(Kampar)川もある。ここはプカンバルから車で5時間かかるとのことで、まだ行けていない。 北海道を超える広さを持つリアウ州だけに、調べれば、まだいろいろあるかもしれない。

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