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文・写真…鍋山俊雄

ジャワ島からスマトラ島への玄関口であり、スマトラ縦断高速道路の入口となるランプン州。州都はバンダルランプン。ジャワ島西端のメラックからフェリーで海峡を渡って陸路で行くこともできるが、飛行機で飛べば40分ほど。離陸して水平飛行に入ったと思ったら、すぐに着陸に向けて降下を始める近さである。ジャワ島から近いこともあり、ジャワからの移住者(ジャワ人、スンダ人)のほか、スマトラの北部からのバタック人の移民も多いそうである。

新しくなったランプンの空港。スカルノハッタ空港第3ターミナルに似ている?

ランプン州には自然を楽しむいくつものスポットがあり、中でも、野生の象が広大な草原で暮らすワイカンバス国立公園が有名である。ランプン州の東海岸沿いにあり、1300平方キロ余りの広大な三角形の原野と野生林。公園内にはスマトラトラ、スマトラサイなどの希少動物のほか、多くの野生動物が生息している。

ワイカンバス国立公園、象保護地域の入口

空港から東に車を走らせること約2時間で、国立公園の入口に到着する。ゲートをくぐって森林道路をさらに15分ぐらい進むと、スマトラ象の保護地域に到着する。そのまま進むと池があり、「MANDI GAJAH」(象の水浴)との掲示がある。朝に行けば、ここで象の水浴が見られると聞いていた。

その通りに、木陰の間から、象使いを乗せた象が2、3頭ずつ順番に現れて、ゆっくりと池の中に入って行く。所々、深いのか、それともしゃがんでいるのか、象の体全体が見えなくなる程度まで沈んでいく。象使いは象に乗ったまま一緒に池の中に入り、象が潜っている時は、背中の上に立ち上がって待っている。象たちは、気持ち良さそうにひとしきり水浴した後、池の反対側に抜け、広い草原に向かって歩いて行った。

草原のあちこちでは、水浴の終わった象が、のんびり草を食んでいる。動物園なら柵の中にいるのを上から眺め、サファリパークでも車の中からしか見たことのない象が、ここでは柵もない広々とした草原にいて、象と同じ空間の中で、彼らを楽しめる。

親と一緒で、うれしそうな子象

一方で、彼らも人間を見てるようだ。両親と一緒にいる子象(背丈は人間の大人ぐらい)がいた。親にじゃれたりして、なかなか愛らしい。10メートルぐらい離れた所で写真を撮りながら見ていたら、私の方に向かってトコトコ歩き始めた。どうやら私に好奇心を持ったらしい。小さい子供や子犬が珍しい物に近付くように近付いてきた。だが、子象と言っても、結構、大きい。ずんずん近付いてきたが、ちょっとこちらが躊躇していると、「つまんないの!」という感じで、くるっと振り返って、また親の所へ戻って行ってしまった。

この国立公園では、象の背に乗って草原を行くツアーがあると聞いていたが、私が行った時は、このアトラクションは中止していた。でも、広い草原の中で象がたたずんでいる姿を見ているだけでも、十分に楽しい。草原の中の道を散歩していると、2頭の象が大きな耳を揺らしながら向き合って、じゃれ合っている。けんかではないようだが、何か議論しているかのように見えた。

さらに進むと、草原の中に、真新しい大きな建物がポツンと現れた。「象の病院」と書いてある。中には誰もいなかったが、裏庭には柵に囲まれた区画(象の診療室?)があった。公園の入口近辺には、象に乗って少しだけ歩き回ることのできる体験場があり、親子連れで賑わっていた。

象の病院

もう1カ所のお薦めは、バンダルランプン周辺の街を囲む山沿いにある、スマトラ島の蝶を集めた公園(Taman Kupukupu Gita Persada)。こちらは、空港からバンダルランプンの街の方に車を走らせ、約1時間。1997年に蝶保護のために整備され、約180種類の蝶が観察できるという。インドネシアには約6000種類余りの蝶が生息しているそうである。

丘の傾斜面に4階建の博物館が立っており、入口付近の1、2階には土産物屋のほか、蝶の標本や絵画が展示され、上層が観察塔となっている。その周辺の森の中には、ドームやベンチがあり、のんびり座って蝶を観察することができる。

公園に到着した時には、あいにく雨が降っており、蝶はまったく見られなかった。ドームの中で待つこと約1時間。雨が上がり、少し陽がさすようになって、ようやく、ちらほらと蝶が集まり始めた。

ドームの中で6〜7種類の蝶を見た後、外を散歩してみた。蝶の公園と言っても、カゴに蝶が入っていて順番に観察できるという場所ではなく、外でのんびり散策してると、ひらひらと飛ぶ物が視界に入る、というような公園なのだ。

1854〜62年、アルフレッド・ラッセル・ウォーレスという、博物学者であり探検家だったイギリス人が、スマトラからパプアまで、現在のインドネシアのほぼすべての地域をくまなく巡りながら、昆虫や動物、鳥類の採集活動を行った。その探検と採集の記録を記した『マレー諸島』という傑作に描かれている、ウォーレスが新種の蝶を追いかけた話を思い出しながら、その気分に浸ることもできる。

ドーム内での蝶のさなぎ観察

森を眺めていると、葉の上に蝶がじっと止まっていたり、日本ではまず見たことのない鮮やかな色の蝶が、頭上をひらひらと飛んでいたり。結局、公園には3時間半ぐらいいて、10種類以上の蝶を見ることができた。

ランプン州はこのほかにも、野生のイルカを見られることで有名なキルアン島周辺、「クラカタウの大噴火」で有名なクラカタウ山など、興味深い観光名所が多い。この辺りは空港からかなり遠くなるので、少し時間はかかるが、ジャワ島西端のメラックからフェリーでランプン州に渡るルートで行ってみたいと考えている。

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