レストランでカルボナーラ・スパゲティを頼む。特大ペッパーミルを手にしたウェイターが笑顔で「(コショウ)かけますか?」と聞いてくる。うなずく。ガリガリガリ……白いパスタの上に黒い粉が降り注ぐ。「ストップ」の声がかからないので不安そうに挽くのをやめたウェイター、「もっと、ですか?」。うなずく。ガリガリガリ……。「もっと、ですか?」。うなずく……といったやり取りをしてしまうぐらい、コショウが好きだ。

 コショウが好きと言っても、私の知っているコショウはせいぜい黒か白か。硬くてシワシワで、ガリガリ挽いて粉にするしかない。大量にかけても、かけ過ぎてむせるばかりで、コショウの味って実はよくわからないのだ。

 そして入手したのが、カリマンタン産コショウの塩漬け。商品名は「純胡椒」。

 瓶を開け、コショウの房を1本取り出そうとすると、ずるーっとえらく長いのでびっくりする。「コショウの実はこうやってなっているのです」と知らせているのもすごい。

 改めてコショウの木ってどんなんだっけ?と考えても頭の中にまったく浮かばないので、画像検索してみると、予想もしていなかった写真が出てきた。大木にかわいい赤い実がなっている。しかし正直、写真を見てもよくわからない。

 瓶に入った純胡椒の房は、わりにしっかりした太めの茎で、その周囲にびっしりと小さい実がついている。透明感のない海ぶどうに似ている。

 1回分に1本は長すぎるので、キッチンばさみで数センチを切って、小皿へ。茎をつかんで、丸い実1つを噛み取って口の中へ落とし、恐る恐る歯を当てると、「プチン!!」とはじけて、えらくびっくりした。みずみずしい、フレッシュな香気が「パチン!!」とはじける。

 コショウそのものの味とはこんな味だったんだ、という驚き。もう一つの特徴が、塩気だ。かなり塩気が強く、塩のうまみを強く感じるのだ。塩を求めてはるばる旅する山ヤギの話をテレビで見たことがあるが、そんな「はるばる求めてようやく出会った」ような塩の味。

 ピザに合うというので、トマト味のロールキャベツの上に一房、オンしてみた。やさしいトマト味の中に「パチン!!」「プチン!!」とはじけるフレッシュなコショウの香気。おいしい。

 そのまま食べても酒の当てになるし、チーズに1粒2粒載せて、おつまみにしても良い。「ガーリックトーストの上に載せて食べたら最高だった」とも聞いた。

 いろいろ試してベストマッチングだと思ったのは、白いご飯。コショウの味を何物も邪魔しない。その香気、繊細な味わい、塩気、全てを存分に味わえる。

 あまりにもご飯に合うので、塩むすびのように「おにぎりにしてはどうか?」とひらめいた。早速、実行してみた。さすがに、中心にコショウを集めるのはどうかと思ったので、バラバラにした粒をご飯に混ぜ込み、それを握ってみた。これは失敗。食べている途中、どこでコショウがはじけるかわからないという「ロシアンルーレット」と化す。ぎゅっと握ったおにぎりのご飯もおいしいものだが、純胡椒の場合は、ふっくら炊きたてご飯の方が合う。

 インドネシア料理で合うのは、やさしい味のソトアヤム。通常はここにサンバルを入れてパンチを効かせるのだが、サンバルの代わりに純胡椒。別の刺激が加わり、新しい味わいとなる。ケチャップマニスをたっぷりつけた揚げ豆腐など、味の濃いインドネシア料理には負けてしまう。サテには合うのではないか。何が合うか、いろいろ試してみながら「プチン!!」「パチン!!」とやるのがくせになってしまった。

 

 
純胡椒
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