【インドネシア映画倶楽部】第52回「ヴァルゴ・アンド・ザ・スパークリングス」 JKT48元メンバーがスーパーヒーローに

【インドネシア映画倶楽部】第52回「ヴァルゴ・アンド・ザ・スパークリングス」 JKT48元メンバーがスーパーヒーローに

2023-03-03

「ヴァルゴ・アンド・ザ・スパークリングス」(Virgo & The Sparklings)

JKT48の元メンバーがコミック原作のスーパーヒーロー役で主演。さわやかな女子高生によるヒーローらしからぬヒーロー物語は、笑いも含めて終始楽しく鑑賞できる娯楽大作。面白いので、是非!

Vigo

文と写真・横山裕一

 インドネシアコミックのスーパーヒーローシリーズを手掛ける制作会社「ジャガッド・シネマ・ブミランギット」の第3弾。日本人にはお馴染みアイドルグループJKT48の元メンバーが主人公のスーパーヒーロー「ヴァルゴ」を演じる。

 主人公の女子高生、リアニは生まれつき感情が昂ると両手から炎を出す特異能力を持つ。しかし、自分では制御できないため、時に学校でボヤ騒ぎを起こし、相次ぐ転校を余儀なくされている。西ジャワ州の州都バンドゥンの高校に転校したリアニは3人の友人に出会い、彼女らとバンド活動を始める。皆、誕生日に関わる星座が乙女座であることからバンド名を「ヴァルゴ」(インドネシア語読みでは「フィルゴ」)と名づける。やがてバンドメンバーはリアニの特殊能力を知り、意思通りに炎をコントロールできるよう訓練に協力する。

 その頃、街ではある動画サイトを見た人々が何らかの催眠作用により凶暴化する事件が多発する。特殊能力を制御できるようになったリアニは正義感に目覚め、スーパーヒーロー「ヴァルゴ」として、謎の事件とそれを操る黒幕の怪人に立ち向かっていく。

 作品の原作は2017年からウェブサイトで配信されている同名人気コミックだが、その大元は1973年、ジャン・ミンタラガ原作の作品を改変したものである。同ウェブサイトコミックはすでに2億回近くものアクセス記録を持ち、30カ国語に翻訳されるなど、いまや世界的に人気を誇るコミックである。

 映画作品で魅力的な点は、主人公がヒーロー然としておらず、普通の女子高生が徐々に目覚めていく姿が描かれているところだ。友人との高校生らしいコミカルなシーンも多々あり、バンドゥンの街並みを背景に日常生活の中に本当にヒーローが生まれたかのような設定も共感が持てる。また、主人公グループのバンドのコスチュームがヒーロー「ヴァルゴ」に転用されている点もユニークである。目元を覆うマスクをメンバーが手作りで仕上げ、自らデザインした衣装に似たものを現代らしく通信販売で購入する。

 スーパーヒーローシリーズ第1弾の「グンダラ」(Gundara /2019年作品)の主人公も当初ヒーローらしく扮するため、工場にあった鉄片やラバー、パイプなどを粘着テープで咄嗟に自らに貼り付けてコスチュームとしていた。こうした手作り感がありながら優れた特殊能力を有するスーパーヒーローの姿は洗練されていないながらも人間臭く、インドネシアらしい好感のもてるところである。

 主人公リアニ(ヴァルゴ)を演じたのは、アイドルグループJKT48で2019年まで3年間メンバーだったアディスティ・ザラ。劇中、全速力で走るシーンが再三登場するが、綺麗なフォームで走る姿が清々しい。終盤は同映画シリーズのお決まりではあるが、他のスーパーヒーローとの接触もある。今回登場するのは第1作のグンダラと今後映画化が予定されているヒーローの二人で、続編でのそれぞれの関わりがいかに展開されていくかも一連のヒーローシリーズの楽しみの一つである。

 本作品の事件は動画サイトを通じて催眠作用を利用して社会混乱を描いているが、これは偽情報を含めて動画やソーシャルメディアが世論や社会動静に大きな影響を与えている現代社会を如実に反映している。インドネシアでは来年の大統領選挙、総選挙に向けてこうした情報誘導が再度活発になることも予想される。このように現代の社会問題を扱い、成人を対象にした制作姿勢はシリーズの特徴でもあり、次回作が楽しみになる。

 爽やかな女子高生によるヒーローらしからぬヒーロー物語は、笑いも含めて終始楽しく鑑賞できる娯楽大作で、シリーズ次回作への楽しみのためにも是非鑑賞していただきたい。

インドネシア映画倶楽部 バックナンバー
第1回 「マルリナ〜ある殺人者の四幕〜」(Marlina Si Pembunuh Dalam Empat Babak) 第2回  「アホックと呼ばれる男」(A …
plus62.co.id