飛行機内での窃盗事件が増えています。8月24日、出張したベトナムのホーチミンからジャカルタへ戻る機内で被害に遭った人から、詳しい状況を聞きました。数枚のカードのうち、普段はあまり使わない日本のカード2枚のみが抜き取られていました。
インドネシアのカードや現金に被害なし
ジャカルタ在住の日系企業駐在員Aさんは、8月24日、ホーチミン発ジャカルタ行きのガルーダ航空便(GA9460、ベトナム航空とのコードシェア便)に搭乗した。席はエコノミーの最前列で、窓側3席のうちの1つ。その列に乗客はおらず、機内も満席ではなかった。
Aさんが機内に持ち込んだのはビジネス(パソコン)バッグ1個。その中に、パソコン、タブレットのほか、貴重品も入れていた。貴重品は2つの財布に分け、パスポート、現金、クレジットカード5〜6枚が入っていた。バッグは座席上の荷物棚に収納した。
Aさんがちょっと「変だな」と思ったのは、中国語を話す若い男性3〜4人が不審な動きをしていたこと。ビジネスに1人、エコノミーに3人ほどおり、席を立ったり座ったり、トイレに行くでもなく、通路を頻繁に行き来していた。「何をやってるんだろう」と思ったそうだ。荷物棚にアクセスしやすくするように、「自分たちの荷物をあちこちの荷物棚に分散して入れていたのかもしれない」と言う。
飛行機は午前9時50分ホーチミン発、午後1時ジャカルタ着。フライト時間は約3時間。Aさんは席についてから、すぐに寝てしまい、その後の機内でのことは記憶にない。帰宅した2日後に、被害に遭ったことに気付いた。
財布内の現金は、日本円4〜5万円、5万円を両替して使った残りのベトナム・ドン、インドネシア・ルピアだった。そのうち、盗られたのは日本円全部とベトナム・ドンの高額紙幣で、ベトナム・ドンの小額紙幣、インドネシア・ルピアには手を付けていなかった。
また、カードは、クレカ付帯の銀行カードなど5〜6枚を持っていたが、盗られたのは、そのうちの2枚のみ。JAL(JCB)カードと、クレジットとデビット機能の付いた日本の銀行カードの2枚がなくなっていた。インドネシアのマンディリ銀行のカードなど、その他のカードは盗られていない。
手口が巧妙なのは、普段はあまり使わない日本のカードのみを狙って盗っていることだ。機内で被害が発覚しないように気を付け、一部のみを抜いているようだ。当然ながら、パスポートも、パソコンやタブレットにも被害はない。
携帯ショップで500万円使おうとする
犯人は、飛行機がジャカルタに到着したその日に、fXスディルマン内の携帯ショップ「Hello」へ行き、2枚のカードを使って500万円相当の商品を買おうとした。しかし、不正利用の疑いによりカード会社からリジェクトされ、利用はできなかった。その後は金額を大きく下げて、fX内のあちこちの店で、いろいろな物を買おうとするが、一度も利用はできなかった。
Aさんは盗難に気付いた26日にカード会社に連絡し、カードをブロックした。このため、幸いにも、被害は現金数万円にとどまった。機内には監視カメラがあると聞いたので、ベトナム航空にも連絡したが、「今後、そうしたことがないように善処します。お金は戻って来ないでしょう」という返答にとどまった。
座席上の荷物棚は「複数人での共有」になるので、誰もがアクセスしやすい。貴重品は棚には入れず、必ず身に着けておいた方が良い。また、もし何か不審な点があって中味を確認する時は、カードや現金の一部のみを見て安心するのではなく、全部をきちんと確認した方が良い。
在ホーチミン日本国総領事館は5月、「航空機内での窃盗被害に係る注意喚起について」を出し、「最近、旅客機内に持ち込んだ手荷物内の貴重品の盗難事案に関する報告が増えています」としている。ほかにも「寝ていなかったけど盗られた」という事例もあり、常に荷物棚の荷物に気を付けているのは難しいため、荷物棚に入れる荷物にはカギをかけ、貴重品は常に手元に置くのが良いだろう。