来年4月に開幕する大阪・関西万博のインドネシア館のマスコットに、バンドンを拠点に「アニワヤン」(アニメワヤン)作家として活躍するダウド・ヌグラハさん(41)の「トゥムトゥム」(TUMTUM)が選ばれた。天皇陛下の着用されたバティック(ろうけつ染め)でもあるバティック文様の「トゥルントゥム」を基にしたキャラクター。日本のマンガやアニメに影響を受けたダウドさんの、「日本から得たインスピレーションを基に、インドネシアのことを日本に知らせる。日本とインドネシアの橋渡しをする」という夢がかなった。トゥムトゥムで「インドネシアも『かわいい』と知らせたい」と語る。(文・池田華子、トゥムトゥムとアニワヤンの写真はダウド・ヌグラハさん提供)

ダウドさんは2021年、日本のマンガやアニメから着想を得て、インドネシア伝統文化のワヤン(影絵芝居)とアニメを組み合わせた子供向けの「アニワヤン」(アニメワヤン)を始めた。マメジカきょうだい3人が活躍する「キュウリの村」(Desa Timun)を、すでに2シーズン48話制作し、現在、シーズン3を制作中だ。日本でも2回、日本語のライブ吹き替え版を上映した。


ダウドさんが「大阪万博」を初めて知ったのは、大阪万博や太陽の塔が印象的に描かれた浦沢直樹のマンガ「20世紀少年」からだ。2025年大阪・関西万博は「世界的なイベントで、インドネシア文化をプロモーションする絶好の機会」と強く引かれた。万博の公式マスコット「ミャクミャク」も「メイン・ストリームではなくユニークで、ありきたりのマスコットではない。キモカワイくて好き」と語る。このミャクミャクのパートナーとなり得るキャラクターを、と考えた。
ミャクミャクは「血管」だが、「インドネシアにはバティックがある。バティック・モチーフをマスコットにするのはどうか」と考えた。ジョグジャカルタ生まれのダウドさんが採用したのは、中部ジャワの伝統文様「トゥルントゥム」(Truntum)。トゥルントゥムに込められた「希望」や「再び芽吹く」といった意味合いが、インドネシア館のコンセプトである「調和の中での繁栄:自然、文化、未来」にぴったりだ、と考えた。

「夜空の星を見て、バティックにした」と伝えられるトゥルントゥム文様からスケッチを描き起こし、花のようにも見えるキャラクター「トゥムトゥム」を作り上げた。緑、赤、青の3つがあり、緑トゥムトゥムは「自然」、赤トゥムトゥムは「文化」、青トゥムトゥムは「未来」を象徴する。ダウドさんのイメージでは、トゥムトゥムは「ピクミン」のように「コロニー」を作る。「トゥムトゥムがいっぱい」という世界観だ。



9月、最終選考に残った5人の中から、見事、インドネシア館の公式マスコットに選ばれた。トゥムトゥムは着ぐるみとなってインドネシア館で活躍するほか、ピンやうちわなどの公式グッズも販売される予定だ。
「トゥムトゥムがインドネシア代表として日本へ行く、それが夢だった。『インドネシアもかわいい』ということを見せたい」とダウドさんは語る。
ダウドさんが立ち上げた「アニワヤン」でも、「かわいい」は創業のコンセプトに掲げられている。アニワヤンのビジョンは「世界をかわいくし、世界中にインドネシア・フィーバーを広める」。ミッションは「ローカルのかわいさで伝統をリパッケージする」。なぜ、「かわいい」をそんなに重視しているのか?
「かわいい」とは、普遍的。誰でも、赤ちゃんや子供、動物を見ると、ドーパミンが出る。日本は「かわいい」に関して非常に成功しており、韓国や中国をはじめ、世界に「かわいい」を広めつつ、日本文化を紹介している。何でもかわいくすることができて、大阪城までもがマスコットになる。ミュージアムも「かわいい」で子供たちの興味を引くので、教育的効果もある。「かわいい」は、人々をお互いに結び付けやすくするという、非常に強い力を持っている。
ダウド・ヌグラハさん
「日本は全部かわいいです」とダウドさん。いや、万博マスコットに関しては、ミャクミャクよりトゥムトゥムの方がかわいいです!

大阪・関西万博インドネシア館公式インスタグラム

ダウド・ヌグラハさんのインスタグラム

