写真…プトリ・スシロ

「僕は右足の靴、君は左足の靴」。いつも近くにいながら決して一緒になることはない人を思う、切ない恋心を歌ったトゥルスの「Sepatu(靴)」。このヒット曲をトゥルス自身が日本語で歌った「くつ」がリリースされた。

 トゥルスは2015年10月、浜松で開かれた「はまぞう10周年大感謝祭」で、日本で初めてのステージに立ち、インドネシア語の歌9曲に加え、日本語の「くつ」も披露した。「日本の方たちにインドネシアの音楽を楽しんでもらうことが、私の目標です」とトゥルス。

 「くつ」の日本語歌詞を作ったのは、歌手の加藤ひろあきさん。加藤さんはこれまでも、ニジの「ラスカル・プランギ」などのインドネシアのヒット曲を日本語にして歌い、インドネシアの歌を日本人に紹介してきた。トゥルスは加藤さんと知り合い、加藤さんが作った「Sepatu」の日本語バージョンがあることを知って、これを歌うことを決めた。冒頭20%ほどのメロディーを日本語歌詞に合わせてアレンジし、加藤さんの発音指導も受けた。このためか、日本語の歌としてまったく違和感のない仕上がりとなっている。

 ただ一つ、気になるのは、歌のタイトルでありキーワードである「くつ」が、日本語の歌詞では「シューズ」となっていること。「靴」の方が良くないだろうか?

 「『靴』より『シューズ』の方がメロディーに合ったから。『……の靴』と言うより『……のシューズさ』の方が、インドネシア語の『スパトゥ』にちょっと似ているしね」とトゥルス。

 インタビューの時にトゥルスが履いていた靴は、カジュアルなコンバース。お気に入りはコンバースとドクターマーチンで、好きな理由は「大きいサイズが買いやすいから」。トゥルスはインドネシア人には珍しいほどの長身で、靴のサイズはEU47.5(29.22センチ)。ほかのブランドだと、なかなかこのサイズは手に入らない。

 「日本人はどこへでも歩いて行くでしょう? この歌、『くつ』に共感を持ってもらえるのではないかな」

 トゥルスはほぼ毎年、休暇には日本を訪れるほどの日本好きだ。大学で建築を専攻し、安藤忠雄ら日本の近代建築に興味を持ったのが、日本への関心の始まり。日本とインドネシアの文化的な共通項にも興味と関心を抱いているようだ。

 「日本は伝統と近代の両方が一緒に花開いて独自の文化を作った、良い『先例』だと思う。街を観察しているだけでも楽しめる。おまけに、日本にいると、インドネシアにいるかのように感じる瞬間がしょっちゅうあります」

 トゥルスは日本へ行くと、東京の下町をぶらぶら散策するのが好きだ。きっと、お気に入りの靴を履いて。

 
 

くつ

作…トゥルス、日本語歌詞…加藤ひろあき

僕ら一組のシューズさ
いつも一緒さ
でも交わらない

僕ら なされるがまま
人が歩くから 僕ら動くよ

僕は右足のシューズさ
君は左足のシューズ
走るのはそりゃ楽しいけれど
君は疲れてしまわないかな
雨に濡れても構わない
でも君は寒くないかな

一緒にいたいのさ
でも何もできない

二人の時間は最高さ
違う靴箱にいれば愛しい
君の近くは天国さ
でも触れ合うことすらできない僕ら

走るのはそりゃ楽しいけれど
君は疲れてしまわないかな
雨に濡れても構わない
でも君は寒くないかな

一緒にいたいのさ
でも何もできない
一緒にいたいのさ
でも何もできない

二人の時間は最高さ
違う靴箱にいれば愛しい
君の近くは天国さ
でも触れ合うことすらできない僕ら

愛の形はさまざまさ
すべての人が結ばれるわけじゃない
 
 
Video Clip トゥルス 「くつ」
 

Tulus
歌手。1987年8月、スマトラ島ブキティンギ生まれ。バンドンのパラヒヤンガン大学建築学科卒。2011年にアルバム「Tulus」、2014年には「Sepatu」を収録した「Gajah」をリリース。

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