作…こまつか苗
カピバラ忍者・カピ蔵と、修験者・風雷坊の前で練習試合をすることになった小太郎。動きやすい道着に着替え、木刀をかまえて向かい合った。
「ふふふふ、小太郎とやら」
カピ蔵が不敵な笑みをうかべた。
「今、はっきりとわかった。おぬしはわたしに勝てぬ」
「どうしてそんなことがわかるのだ!」
「おのれの姿を見よ」
「……あっ、しまった!」
緊張した小太郎は、袴の片方に両足をつっこんでいた。
「ううっ、どうも身動きがとれんと思ったら……」
「ふふふ、まぬけだのう。では、こちらからまいるぞ。九字護身法!」
九字護身法は、9つの漢字をあらわす「印」を手指ですばやく結ぶものだが、カピ蔵はカピバラなので全身であらわすようだ。
カピ蔵が九字護身法をしている間に、形勢を立て直した小太郎が一撃!
倒れたカピ蔵は煙幕をはって、突然、姿を消した。あとには、カピバラの毛が1本落ちているだけだった。
「こっ、これは」
「煙豚(えんとん)の術じゃな」
風雷坊が言った。
「あいつは都合が悪くなると火薬玉を投げて消えるのじゃ」
「はあ……」
「口ほどにもない奴じゃが、あれはあれで意外と役に立つこともあるのじゃ。妙なところを見せたな。ときに、先ほども聞いたが、おぬしらはどうやってここに来た。もう少し拙者にわかるように、話をしてはくれぬか」
風雷坊はなかなか、頭がやわらかいようであった。
「ふうむ。なるほどな……にわかには信じがたいような話じゃが、そういうことなら、拙者の鉄壁の守りをすりぬけて、この屋敷にあらわれた訳もわかるような気がする」
「信じてくださいますか?」
「おぬしらからは嘘の匂いはせぬ。信じよう」
「ありがとうございます」
「じつは最近、少し困ったことが起こってな。いろいろと対策を練ってきたが、どうも拙者の力だけではどうにもならぬ」
「困ったこと……」
「こういう時は、おぬしらのようにまったく違うところから来て、違う見方でものを見る者たちが必要なのじゃ。もしよければ、わが屋敷に食客としてしばらく過ごし、力を貸してはくれまいか」
こうしてオカメもんと小太郎は、風雷坊の屋敷にとどまることになったのだった。(つづく)
インコ侍 0 時間旅行へ出発!
インコ侍 1 戦国時代
インコ侍 2 忍者と勝負
インコ侍 3 秘密作戦
インコ侍 4 出城に潜入
インコ侍 5 寺の井戸
インコ侍 6 必殺技
インコ侍 7 捕らわれの姫
インコ侍 8 インコネシア
こまつか苗(こまつか・なえ)
ペンギン・インコ陶作家。京都の清水焼の工房で陶絵付け職人として10年働いた後、大阪の自宅に開窯し、ペンギンとインコをモチーフにした陶作品(時々、カピバラ)を制作している。本職とは違うものの、イラストと文章による「らくがきドラマ」、「ラグビーポジション・インコ解説」などを発表し、好評を博す。