11月7日

 雨がぱらつく中、午前9時半ごろに出発した。長袖2枚で出ようとしたが、「絶対に寒い」と言われ、ダウンを取りに部屋まで戻る(取りに戻って良かった)。

 富山市内はイチョウの並木が金色に紅葉してきれいだった。高速に乗り、ジャカルタからバンドンへ行くような雰囲気の景色になる。「今、プルワカルタの辺りかな?」と言いながら、車を走らせる。車は少なく、道はガラガラ。日曜なのに、皆、出かけないのだろうか? 黄色と緑の混じった田んぼ、畑が広がる。滑川で、海が見えた。

 海の近くにはYKKの本社があった。実はデザイナーのQはYKKの入社試験を受けたと言う。もし入社していたら、ここにいたんだろうか。「『この魚、キットキトやん!』とか言ってたりして」とQ。
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 富山県は湾に面した広い平野で、周りは厚い壁のような山に囲まれている。山1つぐらいなら「越えて行こう」という気にもなるが、これだけ幾重にも重なっていると、やる気をなくす。だから、「薬売り」だったのだろか? 少量でもそこそこ値段は高く、持ち運べるぐらいに軽い。重い物は持って行けなさそうだ。

 山が紅葉で色が変わっているのが、インドネシアの山と違うところだ。緑、黄、赤が混じり合い、雲がたなびく。幾重にもなった山の中へと入って行く。

 宇奈月に到着し、黒部渓谷鉄道トロッコ電車に乗る。黒部ダム建設の資材運搬用に作られた鉄道を、観光に転用した電車だ。狭い山腹を縫うようにして走るため、線路の幅は762ミリと狭い。トロッコに屋根と椅子を付けた電車は、おもちゃのようにかわいい。ガラス窓で雨風を防いだデラックスカーもあるが、自然を体感するには一番安いオープンカーが良い(寒いけど)。
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 黒部(クロベ)の地名は「黒い」から来ているのかと思ったら、アイヌ語の「クルベツ(「魔の川」という意味)」が「クロベ」になったという。地図を見てみると、ヌクイ谷、ザラ峠、スバリ岳といった、日本語とは思えない地名が散見される。これらもアイヌ語なのだろうか?元々はこの辺りにもアイヌ民族が住んでいたのか……と、俄然、興味が湧いてくる。

 夏は激流が渦巻き、冬は深い雪に閉ざされる「魔物の住む川」。よりにもよって、そこに作られたのが、有名な「黒部ダム」だ。「ダムを見て何が面白いのか? ダムや建設マニア向けの観光地なのか?」と思っていた。それが、違った。この鉄道が出来るまでは入ることもできなかった、黒部峡谷の自然に触れられるのだ。運行開始した時は乗客を乗せることはあっても「命の保障はしません」と通告していたそうだ。冬季は積雪のため運行休止になり、電車が使えない時のためにトンネルがあるが、歩くとなんと6時間!
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 電車に乗って走りながら、ダムやトンネルを見ていると、「よくこんな所に作ったものだ」としみじみとする。自然のすごさと人間のすごさの両方を感じられるのだ。

 深山の自然は、言葉をはぎ取る。たなびく雲。緑の杉を残して、赤、黄のグラデーションが山肌を染め上げている。風が吹くとあっけなく紅葉した葉は散って舞い上がり、電車の窓から舞い込んでくる。時折現れる、橋、トンネル、ダム。ダムはエメラルドグリーンの水をたたえ、幻想的だ。
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 冷蔵庫に入ったような冷気と風に吹きさらされ、終点の欅平に着いた時は、すっかり冷え切っていた。紅葉が素晴らしい。真っ黄色。真っ赤。蒸気は山から湧いてくるようで、雲が棚引く。「霧立ち上る秋の夕暮れ」の世界。

 これだけ冷えたら、温泉しかない。日帰り入浴が可能なのは、駅を真っ直ぐ下った所にある猿飛山荘。露天の温泉は掛け流し。冷えた体がじんじん暖まる。ホテルの湯船ではこうはいかない。温泉の外の木へ、サルが木の実を食べにやって来た。
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 帰りのトロッコ電車は終電で、景色は何も見えずに真っ暗。漆黒の闇にもまた、自然のすごさを感じた。

●黒部峡谷トロッコ電車/富山県黒部市黒部峡谷谷口11。Tel:+81(0)765-62-1011(受付時間9:00〜17:00)。宇奈月〜欅平間は5月28日〜11月30日運行、片道大人1710円、子供860円、リラックス客車は片道530円、特別客車は同370円追加。インターネット予約可。www.kurotetu.co.jp。
●猿飛山荘/富山県黒部市宇奈月温泉欅平。Tel:+81(0)765-62-1004。日帰り入浴1人500円、タオル200円。

 
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