絵・文…こまつか苗

 地図を見て首をひねった小太郎とオカメもんに、風雷坊がくちばしの端でニヤリと笑った。
「何かお気付きかな?」
「賽銭箱に、鐘楼がありますね。ここは寺ではないのですか?」
「湯留糞寺(ゆるふんじ)。前田鳥家の命で作られた寺じゃ」
「しかし、寺にしては、いささか珍妙でござるな。この賽銭箱は落とし穴になっている模様」
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「ふふ、寺とは名ばかりよ」
 風雷坊は言った。
「ここは、前田鳥家の住まう多目糞城(ためふんじょう)の出城なのじゃ。多目糞城の城下町は、後ろに険しい山を従え、街の外側を水糞川(みずふんがわ)が流れておる。その川の前に、ずらりと寺が並ぶ。普段は寺だが、外敵が攻めて来た折には武士を詰めさせ、前線基地となるのじゃ。中でも、湯留糞寺は、鳥家が陣頭指揮を執る場所として作られておる。主君の安全を守り、戦うための、多くの仕掛けがなされておるのじゃ」
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「寺をそのように使うとは……」
「この寺の法師たちは、いざとなれば、皆、武士のように戦うことのできる、荒法師なのだ」
「はあ……しかしなぜ、噛虎(かみとら)様は多目糞城に連れて行かれず、この寺にとらわれているのですか?」
「今、前田鳥家は鳥臭杉景勝(とりくさすぎ・かげかつ)に呼ばれ、骨沢(ほねざわ)にいる」
「主君不在なのですね」
「さよう。影武者を誤って城内に入れることのないよう、姫の顔を知っている鳥家が帰るまで、寺の中にある隠し部屋の1つに幽閉されているのじゃよ」
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「なるほど……」
「鳥家が帰り、噛虎様が城に連れて行かれてしまえば、救い出すことはますます困難になる」
「事は急を要する、というわけですね」
「さよう。夜が明けたらすぐに助けに向かおうと思うが、良いか?」
 小太郎とオカメもんはうなずいた。
「御意。お力になれるかわかりませぬが」

 翌朝、一同はカピ蔵の背に乗り、湯留糞寺を目指した。
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 川のほとりに着くと、茂みに隠れて敵の方を伺いながら、カピ蔵は言った。
「皆の衆、これから敵の目につかぬように川を渡るゆえ、しっかりつかまり、息を大きく吸いたまえ」
「息?」
 カピ蔵は、ちゃぽん、と一同をのせたまま川に身を沈め、潜り始めた。
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 小太郎「×××××!!(ぎゃーっ!)」
 風雷坊「○○○○○!!(これが「カピバラ水豚(すいとん)の術じゃ!」
 オカメもん「△△△△△!!(何言ってるかわかりません!)」

 しばらく潜ると、川岸の底に、石垣で組まれた水路のようなものが見え、カピ蔵はその中に真っ直ぐに入っていった。(つづく)
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インコ侍 1 戦国時代
インコ侍 2 忍者と勝負
インコ侍 3 秘密作戦

こまつか苗(こまつか・なえ)
ペンギン・インコ陶作家。京都の清水焼の工房で陶絵付け職人として10年働いた後、大阪の自宅に開窯し、ペンギンとインコをモチーフにした陶作品(時々、カピバラ)を制作している。本職とは違うものの、イラストと文章による「らくがきドラマ」、「ラグビーポジション・インコ解説」などを発表し、好評を博す。