インコ侍 7 捕らわれの姫

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 小太郎の鳴き声に応じて、

 「ピキョキョキョキョキョキョ……」

 確かに、近くで噛虎(かみとら)の呼び鳴きの声がする。

 声が最も大きく聞こえた部屋に入ったが、姿は見当たらなかった。

 「確かに、この辺りで聞こえたはず……」

 「あっ、これは?!」

 小太郎が叫んだ。

 床の間の掛け軸の縁が噛み切られている。

 「これはまさしく、コザクラインコがここにいた証!」

 「この床の間に何かからくりが?」

 一同が床の間を探り始めたその時、また音もなく、フクロウの荒法師たちが周りを取り囲んでいた。

 「うわっ!」

 「もう逃がさぬぞ。神妙にせよ」

 槍を突き出され、思わずのけぞった、その時。
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 床の間の壁の上部がどんでん返しのように後ろに倒れ、一同は壁の中に吸い込まれていった。

 「うわあああああああ」

 薄暗く、狭い空間。目が慣れるにつれ、文机の前に座り、こちらを見つめる美しいコザクラインコの姿が見えてきた。
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 「風雷坊、カピ蔵、助けに来てくれたのか」

 「噛虎様には、ご無事で……」

 「余は大丈夫じゃ。その者たちは?」

 「私は小太郎。この者はオカメもんと申します。風雷坊様の食客にて、噛虎様をお助けに上がりました」

 「それは危険なつとめを、礼を言うぞ」

 噛虎は言った。

 「この部屋は切腹の間と言い、切腹を言い渡された罪人の部屋だそうだ。罪人が逃げられぬよう、窓が一切なく、出入口も一方向のどんでん返しになっていて、中からは開けることができない仕組みになっている」

 噛虎はまばゆいほどの美しさだったが、表情は硬く、暗かった。

 「このように捕えられてしまい、そちたちにも迷惑をかけて、すまない。父や兄弟の亡き後、どうにか国を守ろうとつとめてまいったが、余はもう、この乱世に疲れてしもうた。いっそ、もう出家しようと思うのだ」

 「噛虎様……」
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 「お気を落とされるのは仕方のないことではありまするが、あきらめてはなりませぬ」

 風雷坊は言った。

 「あなた様を慕う人々の気持ち、守り続けてきた土地を、簡単に敵に渡してはなりません。逃げましょう!」

 「しかし、どうやって……」

 突然、扉が開き、フクロウ荒武者たちが顔を出した。

 「ふふ、ひとまとめになってくれたわ。ちょうど鳥家(とりいえ)様がお城に到着された模様。早速、お連れしよう」

 最早これまでか。

 一同が覚悟を決めた、その時。

 「私の翼の上に乗るのです! 時空の引き出しがここに開いています。さあ!」

 オカメもんが叫んだ。
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 「そうか。ここには引き出しがある! さあ、皆さん、早くオカメもんの上に乗るのです」

 小太郎は全員を乗せ、オカメもんの頭のレバーを握った。

 「どういうことだ?!」

 噛虎は目を丸くした。

 「説明は後で! さあ、つかまってください」

 小太郎はオカメもんに声をかけた。

 「オカメもん、連れて行ってくれ。ここではない、どこかに!」

 「時間旅行に、出発します……」

 彼らの姿は、文机の引き出しの中に吸い込まれて行った。(つづく)
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インコ侍 0 時間旅行へ出発!
インコ侍 1 戦国時代
インコ侍 2 忍者と勝負
インコ侍 3 秘密作戦
インコ侍 4 出城に潜入
インコ侍 5 寺の井戸
インコ侍 6 必殺技

こまつか苗(こまつか・なえ)
ペンギン・インコ陶作家。京都の清水焼の工房で陶絵付け職人として10年働いた後、大阪の自宅に開窯し、ペンギンとインコをモチーフにした陶作品(時々、カピバラ)を制作している。本職とは違うものの、イラストと文章による「らくがきドラマ」、「ラグビーポジション・インコ解説」などを発表し、好評を博す。