「すべて、うまくいくでしょう」 インドネシアらしさが凝縮、「長屋」の情景が最高に楽しい! 【インドネシア映画倶楽部】第125回

「すべて、うまくいくでしょう」 インドネシアらしさが凝縮、「長屋」の情景が最高に楽しい! 【インドネシア映画倶楽部】第125回

Semua Akan Baik-Baik Saja

ビルの立ち並ぶオフィス街とはまた違ったジャカルタの姿長屋のような「ルスン」(「rumah susun」の略。低所得者の住む団地)のシーンが楽しい。インドネシアらしさの凝縮した作品だ。

文と写真・池田華子

 大ヒットしたインド映画は「きっと、うまくいく」。本作は「すべて、うまくいくでしょう」。厳しい現実と、「良くも悪くも」な楽観性のある、なんともインドネシアらしいタイトルだ。

 俳優やYouTuberとして活躍するバイム・ウォンがメガホンを取り、ポスターや予告編(「ルスンの仲間たち」編)はとても楽しそう。さぞ笑いにあふれた楽しい映画なのだろうと思って見てみたら、冒頭からいきなりヘビーな展開続きでボコボコにされる(予告編参照)。

 レザ・ラハディアン演じる主人公のラギットは実家に寄りつかず、定職にも就かず、ルスン暮らし。ラギットとも親しかった、家族の中でもまとめ役だった姉が急死し、ダウン症のアリムら3人の子供が残される。姉の家は別れた夫に取られてしまい、子供たちは線路脇の祖母の家へと移り住む。誰がその面倒を見るのか、学費は、生活は、と、試練の逆風がびゅうびゅう吹きまくる。「すべて、うまくいくでしょう」というタイトルにすがって見続けるものの、うまくいくとは到底思えない展開が延々と続き、なかなかにきつい。

 ラギットが子供たちの面倒を見始めるものの、疎遠だった子供たちからの信用はゼロ。学校への迎えにも遅刻してしまう「ダメおじ」なのだが、子供たちのために行動するようになり、次第に関係が変化していくところが見物。しかし、最後にやらかす大ポカ! 本当に「すべて、うまくいく」かどうかは、見てのお楽しみ。

 本作で最高に楽しいのは、さまざまな人が密集して暮らす長屋「ルスン」の情景だ。特に冒頭のカメラワーク。ルスンは、やや現実離れした楽園のようにも描かれているが、インドネシアの縮図にも見える。あまり訪れる機会のない場所だと思われるので、必見。もう一つの舞台である祖母の家は、実際にある家を映画用にリノベーションして使用したという。ひっきりなしに(「5分ごと」とのこと)通り過ぎる電車で騒音に包まれ、家は揺れる。ルスンと共に、ビルの立ち並ぶオフィス街とはまた違ったジャカルタの姿を見せてくれる。何回も登場する真っ赤な夕焼けも、ジャカルタらしい情景だ。

 本作のテーマである、家族の中でのいさかいと和解、庶民の暮らしぶり、そして「すべて、うまくいくでしょう」など、いろいろな意味でインドネシアらしい作品。ハッピーエンドというには詰めは甘いが、それもまたインドネシアらしいといえるだろうか。

 レザ・ラハディアンのほか、クリスティン・ハキム、ハッピー・サルマら豪華キャストで、バイム・ウォン監督が「俳優に任せた」と言う自然な演技が楽しめる。監督自身もちょい役で出演。それから、ダウン症の子供が主要キャラクターとして登場するのは珍しい。これは、監督が障害者の働くカフェを訪れて着想を得たという。

 全体的にベタな笑いが多すぎるように思ったが、気楽に楽しめる。映画館を出たカップルが「Overall, bagus」(全体的には良かったよね)と話していて、まぁ、そんな感じ。まずは下の予告編「ルスンの仲間たち」編だけでも見てください。そして興味が湧いたら映画館へ!

予告編「ルスンの仲間たち」編

予告編

参照リンク

Baim Wong menceritakan pengalamannya menyutradarai "Semua Akan Baik-Baik Sa…
megapolitan.antaranews.com
Baim Wong totalitas ubah rumah warga jadi set lokasi syuting film drama keluarga…
www.kapanlagi.com

「インドネシア映画倶楽部」バックナンバー

インドネシア映画倶楽部 バックナンバー
横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
plus62.co.id