「イスティメワ(特別)」 「特別」なものとは何か? 実話を基にした感動作 【インドネシア映画倶楽部】第142回

「イスティメワ(特別)」 「特別」なものとは何か? 実話を基にした感動作 【インドネシア映画倶楽部】第142回

身体障害者の特別支援施設に入所する5人が主人公。病気を隠して姿を消した父親代わりの所長を探しに出かけるが……。「特別」なのは一体何かを気付かせてくれる感動作。字幕と手話映像付き。

Istimewa

文と写真・横山裕一

 作品の舞台は身体障害者の特別支援施設で、インドネシア語で「ルマ・イスティメワ」という。ここからタイトルは「イスティメワ」(「特別」の意味)と名付けられている。しかし実話をもとにした本作品のタイトルには、身体障害者が特別な存在だということではなく、誰にでも共通した「大切なもの」こそが「特別」なものだという意味が込められていて、我々に気づかせてもくれる感動作だ。

 物語は特別支援施設の主人であり、入所者から「父」と親しまれていたマヘンドラが、ガンに冒されていることを知るところから始まる。治療しても成否が不明であるため、マヘンドラは後ろ髪を引かれながらも入所者たちに黙って施設を後にしてしまう。

 何日経っても戻らない「父」を訝り、心配する入所者たち。皆それぞれに「父」から我々は家族であり、いつも一緒だと励まされ、勇気づけられてきただけに、家族以上の絆を抱いていた。「父」の助手のキナンは「父」がいなくなった後を任されていたが、皆から問い詰められ仕方なく事実を明かす。「父」に降りかかった不幸を嘆く一同。しかし、「こんな時こそ直接励まさなければ」と入所者の若者5人が、「父」に会うためにこっそりと施設を抜け出す……。

 本作品では「父」の教えを通じて、たとえ血は繋がっていなくとも家族のように仲間との強い絆を持ち続けること、そのためには相手を愛することやお互いに支え合うことを実践することの大切さが描かれている。

 劇中、「父」を探す5人の若者は金を落としてしまったり、出会った男に騙されて見せ物小屋で働くことを余儀なくされるなど試練に見舞われる。しかしその都度、5人は仲違いはありながらも結束する。そんな時、彼らは信頼した「父」から教えられた言葉を掛け合いながら、お互いに助け合っていく。そうした彼らの言葉、行動は強く心打たれる。

 本作品以外にも、身体障害者をテーマにした秀作としては、2016年作品の「ジンガ」(JINGGA)がある。視覚障害特別支援学校に通う4人の爽やかな青春物語で、主人公のジンガらは厳しい現実に向き合う一方で、視覚の有無に関わらない十代の若者の心理をうまく描き出した名作だ。

Jingga
映画「ジンガ」(Jingga / 2016年作品)

 彼らがバンドをやっていた設定から、劇場用ポスターもビートルズの有名なアルバム「アビーロード」のジャケットに似せて、4人が一列に肩に手を置きながら横断歩道を渡る姿がイカしていて印象的である。NETFLIXでは残念ながら既に配信が終了しているが、機会があればぜひ観ていただきたい。

 本作品「イスティメワ」も主人公の5人が身体障害者だが、途中からその有無を感じさせない人間ドラマとして観ていることに気付く。それだけに作品では「特別」なのは身体的なものではなく、人間の絆を深めることの大切さが「特別」だということなのだろう。

 心温まる物語を是非、劇場で鑑賞していただきたい。聴覚障害者用に、字幕に加えて手話映像付きでもある。

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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