「スザンナ〜黒魔術の大罪」&「ダヌール〜最終章」 大人気ホラーシリーズの2作が登場 【インドネシア映画倶楽部】第117回

「スザンナ〜黒魔術の大罪」&「ダヌール〜最終章」 大人気ホラーシリーズの2作が登場 【インドネシア映画倶楽部】第117回

2026-03-25

インドネシアで大人気のホラーシリーズ、前作を見ていなくても楽しめる。ホラーだけでなく、しっかりしたストーリーラインで、権力への反抗や戦争の悲惨さも表現しているようで興味深い。

文と写真・横山裕一

 前回はレバラン休暇向けの家族映画を紹介したが、今回はインドネシアで人気のホラー映画の中でも、特にシリーズ化している最新作2本。いずれもホラー映画ではあるものの、物語自体に引き込まれる魅力的な作品だ。

悪徳村長に黒魔術で復讐するホラー調サスペンス 「スザンナ〜黒魔術の大罪」(Suzanna Santet Dosa di atas Dosa)

Suzzannna Santet Dosa di atas Dosa

 映画「スザンナ〜黒魔術の大罪」は伝説的ホラー女優スザンナの出演作品リメイクシリーズの第3弾。女優スザンナは主に1970年代から1980年代にかけて活躍した女優で、特にホラー映画の悲劇ヒロインとして人気を博し「ホラーの女王」とも呼ばれた。その人気作品が2018年からリメイクされ始め、2代目スザンナともいえる女優ルナ・マヤがいずれもヒロイン・スザンナ役として演じている。リメイク作品は1作目の観客動員数が約334万人、2作目が219万人といずれも大ヒットしている。

 物語は東ジャワ州バニュワンギのとある村が舞台。村長のビスマンは農地の権利を牛耳って村人を借金で支配し、さらに息子をはじめならず者を使った暴力で権力を欲しいままにしていた。村の住人で美しい女性、スザンナは年老いた両親との3人暮らし。ビスマンから再三求婚されていたが、断っていた。一方で、偶然知り合った男、プラムジャの親切な姿に心惹かれはじめていた。

 ある晩、村人有志が村長への抵抗をスザンナの父親に相談しに行ったことがビスマンに知られ、ビスマンは黒魔術師を使ってスザンナの父親を殺してしまう。やがてビスマンの息子たちの暴力で母親も失ってしまったスザンナは復讐のため、黒魔術を習得することを決意する……。

 従来の「スザンナ映画」では、夫の浮気などにより殺害されたスザンナが幽霊として復讐する物語が主軸だったが、今作品ではスザンナの復讐は黒魔術を使ったものと幽霊が一切登場しない、ホラー作品としては異色の物語だ。それだけに、物語の伏線として重要な役割でもある、俳優レザ・ラハディアン演じるプラムジャの存在を含め、ストーリー性が重視された作品に仕上がっている。

 作品では財力や暴力といった力による権力支配に対するアンチテーゼや、村人たちの反抗から、1998年の民主化への政変、大暴動を描いているようにも見受けられ興味深い。純粋なホラー映画というよりもホラー調サスペンススリラー作品と言えるかもしれない。(英語字幕あり)

洋館に住む子供の幽霊の死の真相とは 「ダヌール〜最終章」(Danur The Last Chapter)

Danur The Last Chapter

 一方、「ダヌール」シリーズは2017年から2019年にかけて3作品が公開されているが、いずれも観客動員250万人前後を記録したこちらも大人気シリーズ。オランダ建築様式の古い洋館が舞台で、ここで暮らす女性リサと幼少期から仲良くなった3人の子供の幽霊(のちに5人)との交流を中心に展開する。この幽霊たちはいずれもかつてこの洋館に住んでいたオランダ人で、約80年前、日本軍の侵攻時、日本兵に殺害されていた。

 シリーズの完結編である「ダヌール〜最終章」の物語は、リサの妹リリが有望な若手バレリーナとして成長していたものの、悪霊に取り憑かれてしまうところから始まる。妹の奇行や相次ぐ怪奇現象から異常事態を知ったリサ。妹を救い出すため馴染みの子供幽霊たちに手助けを求めたかったが、リサはすでに彼らの姿を見ることができなくなっていた。なんとか再会を試みるリサ、一方でリリには命の危機が迫っていた……。

 本作品の物語には大きく2つの軸が絡み合っている。ひとつ目は悪霊が人間を脅かすホラー本線で、もう一つはリサが再び友人でもある幽霊の子供達に会うために、彼らがどのように死んでいったかを疑似体験していく精神世界の物語である。ここでは日本兵による殺害シーンが相次いで登場する。

 物語はフィクションではあるが、かつて日本軍の侵攻時、多くの住民の犠牲者を出したことは事実でもある。歴史把握の意味でも日本人は観ておいた方が良い作品かもしれない。またこうした歴史的事象をホラーの恐怖現象として描いていることが、戦争の悲惨さを表しているようでもあり興味深い。(英語字幕あり)

 いずれもシリーズ化した作品ではありながら、単独の物語として成立していて、前作を観ていなくとも十分に楽しめる。レバランの長期休暇に合わせて公開されただけに見応えのある両作品を是非劇場でご覧いただきたい。

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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