インドネシアでは家族が大集合するレバラン休暇に合わせ、話題の新作が公開された。「レバランあるある」もストーリーに盛り込んだ「僕が成功するのを待っていて」、そして、独立系出版社ポストプレス発行の原書がロングセラーとなっている「ナ・ウィラ」の2本をご紹介する。

文と写真・横山 裕一
レバランは見栄の張り合い?! 「僕が成功するのを待っていて」(Tunggu Aku Sukses Nanti)

イスラム教の断食明け大祭(レバラン)の大型連休に向けて、話題の新作が一斉に公開された。レバランで親戚一同が集まり、子供たちの成績や就職で見栄を張る親たちの様子が興味深い「僕が成功するのを待っていて」と、2025年にメガヒットしたアニメ映画「ジャンボ」(JUMBO)の実写版ともいえそうな「ナ・ウィラ」の2本。
「僕が成功するのを待っていて」の主人公、アルガは子供の頃から優秀な従兄弟たちの中で劣等感を味わい、レバランで親戚一同が集まるたびに、お節介な叔母から注意を受けてきた。大人になっても順調に就職した従兄弟たちの一方で無職が続き、アルガは再び叔母から「しっかりしろ」と小言を受ける。
一方、アルガの父親は妹の大学の学費で親戚から負った借金を返済するため、家の売却を余儀なくされてしまい、母親がミーアヤム(鶏肉ラーメン)の屋台を細々と始める。親戚とは対照的に温かく見守ってくれる家族のためにアルガは苦心の末、不動産会社への就職を決め奮起するが……。
イスラム教徒が9割近くを占めるインドネシアでは、レバランに向けて一斉に帰省するため、民族の大移動ともいわれている。運輸省によると、2026年は全人口の半数にあたる約1億4400万人が帰省し、経済アナリストの試算では、期間中、百数十兆ルピア(1兆数千億円規模)が国内で環流するといわれている。
レバラン帰省では、親戚一同が集まって断食明け大祭を祝うが、本作品では各家族の子供の進学や就職で親が見栄を張り、優劣を勝手に決める様子が描かれ、興味深くもあり面白い。日本でも盆や正月の帰省でありがちな光景なのかもしれない。
主人公アルガの両親は親戚の言葉を意に介せず、ひたすら子供達の幸せを願い、災難続きのアルガを温かく見守り続ける姿が共感を呼ぶ。深刻になりがちな物語だが、時にコメディ要素も盛り込まれ、気軽に楽しめる作品だ。
子供時代の郷愁を誘う 「ナ・ウィラ」(Na Willa)

一方、映画「ナ・ウィラ」は1960年代の東ジャワ州スラバヤの下町を舞台に、小学校入学間際の少女ナ・ウィラが主人公。父親が長距離貨物船に従事するため、普段は母親とお手伝いさんとの3人暮らしだ。父親の各地からの土産は本で、母親に読んでもらうのがナ・ウィラの楽しみだった。さらに母親からの教えで、小学校入学前にナ・ウィラはすでに読み書きまで習得していた。
母親は聡明で優しかったが、時に厳しく、嘘をつかないことや線路の近くで遊ばないよう戒められていた。しかしある日、近所の仲の良い友人が線路近くへ遊びに行こうとナ・ウィラを誘いに来たが、母親が「父親が戻るからナ・ウィラは行けない」とつい嘘をついてしまう。がっかりするナ・ウィラ。しかし、しばらくして誘いに来た友人が列車との接触事故で大怪我をしてしまう……。
監督は2025年、観客動員数1028万人余りと一時期はインドネシア映画史上最高を記録したアニメ映画「ジャンボ」(Jumbo)を手がけた、リアン・アドリアンディ監督で、今回は実写で子供達の世界を描いている。物語は異なるが、子供の視点から展開する世界や、CGを駆使して主人公の感情を描く映像表現など、手法は「ジャンボ」と類似していて、見比べるのも面白いかもしれない。
また、1960年代のスラバヤの下町が再現されていて、当時を知らない者でも郷愁を覚え、主人公を含めた子供達の素直で元気な姿が際立っているように窺える。ナ・ウィラと母親、また友人たちとの物語は一旦完結するものの、続編を匂わせる終わり方で、今後の楽しみが増えそうだ。
レバラン長期休暇に合わせて、いずれも気軽に楽しめる作りだけに、是非劇場で味わっていただきたい。

