Para Perasuk
「フォトコピー」で注目されたルガス・バヌテジャ監督の最新作。開発の波の押し寄せる中部ジャワを舞台に、ジャワ伝統の精神世界が巧みな映像表現で展開する。
文と写真・横山裕一
儀式や催事などで霊を人に憑依させるジャワ伝統の神秘文化を描く。現代に生きる若者がいかに引き継いでいこうとするのか、その努力と葛藤が躍動感あふれる映像で展開する。ジャワの地方に生きる人々に現在も根付いた精神文化世界の一端が味わえる興味深い作品。
プラスック(憑依者)とはシャーマンのような存在で、打楽器や笛など音楽で人々をトランス状態にして、様々な動物の霊を憑依させる者のことをいう。豊作や祝い事、重要事に際して、動物の霊を憑依させることで自然と一体化し、願いを叶えることが目的である。
物語の主人公は中ジャワ州の村に住む父親と二人暮らしの若者バユ。父親は開発業者による新興住宅地建設のため家屋と土地の買収を受けようとしていた。買収条件として、ジャカルタで自営業者としての道が提示されていたためだ。地元の村で正式なプラスックを目指すバユは反対する。しかしバユは家庭の悩みを抱えたままで集中できず、プラスックになるための実技試験も失敗する。
折しも、新興住宅だけでなく、村の聖なる泉がある場所もホテル開発されることがわかり、反対する村人たちのプラスックに対する期待と需要が高まっていた……。
人をトランス状態にして霊を憑依させる儀式はジャワ特有の神秘文化で、現在も形態は異なるものの、ジャワ島各地に受け継がれている。筆者もかつて東ジャワ州ブリタールでトランス状態の人々が拳法のような舞を踊るものや、西ジャワ州インドラマユの結婚式の余興で、若い女性が霊媒として踊るシントレンと呼ばれるものを見たことがある。いずれも現代宗教とは一線を画したジャワ古来の精神文化の流れが垣間見えるようだった。
本作品の場合は、激しい音楽によって人々をトランス状態に導き、そこへサルやトラなど動物の霊を憑依させる形態で、人々は動物になりきる。この様子は本作品の見どころのひとつでもあり、作品冒頭から動物になりきった人々の躍動感あふれる舞(のような動き)が披露される。
また主人公がプラスックになるために余念を抱かずに集中し、無の境地に至る苦心や葛藤の過程も一種の紙芝居的な映像構成で表現されていて、興味深い。
監督は「フォトコピー」(Penyalin Cahaya/2021年作品)や「モラル」(Budi Pekerti/2023年作品)で若手実力派として評価された、ルガス・バヌテジャ監督。これまでの作品ではスマートフォンのソーシャルメディア画面が多用されてきたが、今回は一転、ダイナミックさを主体とした映像構成で観る者を引き込ませる。
ジャワ伝統の精神世界が展開する巧みな映像表現は、映画館でこそ魅力をより発揮しているようでもある。それだけに是非とも劇場で味わっていただきたい。本作品を含め、レバラン(断食明け大祭)後に公開された新作映画はいずれも好作品が続いていて、予告編を見る限り、しばらく続きそうで楽しみでもある。

