Ikatan Darah
アクション映画に金字塔を打ち立てた「ザ・レイド」(The Raid)の系譜を継ぐ、プンチャックシラット映画。「ザ・レイド」同様に、すがすがしいまでに残虐なアクションシーンの連続だ。アクションが繰り広げられるカンプンの情景も見もの。
文と写真・横山裕一
母との約束を果たすべく、単身ギャングに立ち向かう女性の伝統武術、プンチャックシラットによるアクション作品。一体何人が死んでいったのかと思わせるほどの残虐なアクションシーンが全編にわたって展開する。
物語の主人公は伝統武術プンチャックシラットの元女性チャンピオン、メガ。母と兄との3人暮らしだが、仕事先のレストランを解雇されてしまうなど順風満帆とはいえない社会人生活を送っていた。
ある時、家族の生活費のため兄のビラルがギャンブルに手を染め、逆に多額の借金を負う。さらに返済交渉がもつれた諍いから、ビラルは借金元のギャングの幹部を殺害してしまい、ギャングたちから追われる身となってしまう。
母親から「兄を連れ帰ってほしい」と頼まれたメガは、とある住宅が密集する集落で兄を探し出すが、凶器を手にした夥しいギャングたちに集落を包囲されてしまう……。
ほぼ全編にわたるアクションシーンは血が飛び交い、残忍なシーンが続く激しいもの。主人公も元プンチャックシラットのチャンピオンとはいえ、相手は刀剣を持ったならず者たちで、なりふり構わずの必死の攻防が見どころでもある。現代とはいえ、ギャングたちが拳銃を一切持っていないのは、ご愛嬌かもしれない。
本作品は、世界に金字塔を打ち立てたアクション映画「ザ・レイド」(The Raid)シリーズの主人公を演じたイコ・ウワイスが代表を務める制作会社(Uwais Pictures)の制作だけに、息を持つかせぬアクションシーンの連続は「ザ・レイド」の系譜を継いでいるようでもある。
物語的には、主人公が助けようとする兄がギャンブル、殺人と自ら犯罪を招いてしまったという経緯があまりすっきりしないが、母親の頼みでもあり、かつて兄が妹である主人公の学費を稼いでいたことから、主人公が死地に踏み込むところに、作品タイトルでもある「血縁」を守る姿が描かれているといえそうだ。
本作品では主人公の兄の姿を通して、働き盛りであるはずの若者たちの就職難、また家族を養う義務感から違法なオンラインギャンブルに手を染めてしまうこと、さらにギャンブルの債務者を食い物にするギャングなど、庶民レベルのインドネシア経済の現状の一端を反映した問題も浮き彫りにされている。
舞台は丘陵地にびっしりと住宅が密集した低所得者層の集落で、人一人が通れるくらいの迷路のような通路などを生かした追跡、アクションシーンが繰り広げられ、物語とは別に地方の密集地の様子を垣間見ることもできる。是非、劇場でアクションを含めてご覧いただきたい。

