インドネシアでの韓国人気を反映 「韓流ドラマのように美しくはない恋」 【インドネシア映画倶楽部】第82回

インドネシアでの韓国人気を反映 「韓流ドラマのように美しくはない恋」 【インドネシア映画倶楽部】第82回

Cinta Tak Seindah Drama Korea

インドネシアでの韓流人気を反映したかのような映画。屋台の料理、コンビニ、観光スポットなど、韓国の光景もたっぷり描かれ、韓流ファンにはたまらないだろう。その中で展開するコテコテの「韓流」インドネシアのドラマ。さて、どんなどんでん返しが待っているのか?!

文と写真・横山裕一

 韓国を旅行する若い女性3人の友情と人気女優ルテーシャ演じる主人公のラブストーリーを描いた韓流風インドネシア映画作品。インドネシアで韓国好きの人々が如何に多いかを反映したような作りだ。

 物語は、恋人で上司のビマから休暇をもらったOLデアが高校以来の親友2人と韓国へ旅行するところから始まる。食堂で財布を忘れたことに気づいたデアが探しに戻ると、偶然にも初恋の相手ジュリアンと再会する。ジュリアンはかつてデアの高校に転校して出会い、お互いに好意を抱いたが、デアの両親が交通事故で亡くなった日、デアに別れも告げずに再び転校してしまっていた。

 ジュリアンの説明でかつての誤解が解けたデアは親友2人と共にジュリアンの案内で観光を楽しむ。初恋時代を思い起すデア。しかし翌日、サプライズとして恋人のビマが現れ、デアに「返事はいつでもいい」とプロポーズする。複雑な感情を抱くデアだったが、この後、思わぬ様々な過去の事実が明らかになっていく。

 物語の経緯を伏線に、終盤にかけて過去の出来事を種明かししていく手法はまさに韓流映画と同じで、どんでん返しの結末も韓流映画を意識した作りである。主人公デアの初恋男性ジュリアン役の俳優ジェローム・クルニアはドイツ系インドネシア人だが顔は韓流イケメン男優と言ってもいいほど似ていて、劇中ではまさに韓流ドラマが展開しているように錯覚させている。

 作品内では屋台のトッポギをはじめ焼肉、韓国家庭料理などが次々と登場し、主人公の女性3人がグルメと買い物だけでなく、駅構内に電光提示された韓流イケメンスターの写真に狂喜して写真撮影するなど、現代のインドネシアの若い女性の趣向を映し出している。韓流ファンにはたまらない内容だ。

 インドネシアで若者を中心に韓流好きが増え続ける傾向は日本でも同じだが、一方で、近年の日本とインドネシアの関係が少しずつ希薄になりつつあるように感じられるのは残念なことだ。10月下旬のプラボウォ新大統領の就任式(国民協議会)に各国からの来賓は国家元首や現職閣僚が参列するなか、日本からは元職の外務大臣だった。一方、11月初旬のプラボウォ大統領の初外遊先は日本の隣の中国で、そのまま米国へと移動した。新大統領就任式の時期は日本では衆院選挙の真っ只中で、大統領の初外遊時は自民党の過半数割れと政権の不安定時だったこともあるが、最近の両国間の向き合いを象徴しているようでもある。

 映画に関しても、韓流映画作品はほぼ定期的にインドネシアの劇場で一般公開されるが、日本映画はたまに話題のアニメ作品が上映されるにとどまっている。今後、映画を通した日本文化を紹介できる機会がより増えることを期待したい。

 本作品に戻ると、タイトルは「韓流ドラマのようではない」というものの、実はコテコテの韓流である。終盤、改めて作品タイトルを修正したタイトルが表示されるのもユーモアがあり、インドネシアらしいジョークが効いている。物語はどんな結末で、それを受けてどんな訂正タイトルに切り替わるかは、ぜひ劇場で確認していただきたい。(英語字幕なし)

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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