Children of Heaven
一足の靴を交換して使う、貧しい兄妹。マラソン大会の賞品が運動靴だと知った兄は……。健気でひたむきな姿の子役2人に魅せられる。
文と写真・横山裕一
貧しい家庭ながら、前向きに生きる小学生の兄妹を優しく描いたヒューマンドラマ。同名タイトルのイランの名作映画(1997年作品、邦題「運動靴と赤い金魚」)を人気監督ハヌン・ブラマンティオ監督がインドネシア版として、スハルト政権下の中ジャワ州スマランを舞台にリメイクした作品。
物語の主人公は男子小学生のアリ。小学生の妹と両親の4人家族で、両親は借金を抱え生活に追われている。ある日、アリはおつかいで妹の学校用の新しい靴を受け取りに行き、その足で野菜を購入していた。しかしその際、店の前に置いた靴の入った袋を通りがかったゴミ集めの老人がゴミと誤って回収してしまう。
いくら探しても靴が見つからず、アリは妹ザラに打ち明け、親には内緒にして欲しいと頼む。その代わりにアリの靴を2人で共有することを提案した。子供ながらに親の苦労を知っていた2人。その日から午前中授業があるザラがまず靴を使い、お昼にアリに靴を受け渡して午後から始まる学校にアリが向かう日々が始まる。古く汚れたアリの靴は妹のザラには大きすぎたが、ザラは健気にも兄と秘密を守り続けた。
折しも、アリの学校の教師らはスマラン市が開催するマラソン大会に代表選手を選出する準備をしていた。そこでアリは大会の3位の賞品がスポーツシューズだと知る……。
一足の靴を通して貧困を巧みに浮き彫りにし、幼い兄妹が共有する姿から厳しい境遇の中でも前向きに生きていこうとする人間の強さを窺わせる見応えある作品だ。主人公の兄としての頑張りもさることながら、サイズの合わない大きな靴を我慢して履き続ける妹の健気さには胸を打たれる。
特に両親がいる脇で、失くした靴をどうするか兄弟が相談するシーンは必見だ。親に知られまいと宿題を教えるふりをしながら筆談する。筆談の行間にはこれ以上、親に金の心配をさせたくないと気遣う2人の気持ちがひしひしと伝わってくる。
物語としては暗くなりがちのようにみえるが、兄妹を演じる子役のひたむきな姿が作品を大きく弾ませていて、ハヌン監督の配役の妙といえるかもしれない。またドディッ・ムリアントやムハッドリ・アチョ(映画「他とは違う」シリーズの監督でもある)らコメディアン出身の俳優を、厳しくもどこかコミカルな教師役として演出していることも、全体として優しく、心温まる作品に仕上がっている一助となっているようだ。
一足の靴を分かち合う兄妹の笑顔は見られるのか、是非、劇場で見届けていただきたい。タイトルでもある「天国の子供たち」、兄妹二人の姿を見るだけでも価値のある作品だといえそうだ。

