「サジャダの片隅を濡らす涙 2」 大ヒット感動物語の続編。生みの親と育ての親の葛藤 【インドネシア映画倶楽部】第100回

「サジャダの片隅を濡らす涙 2」 大ヒット感動物語の続編。生みの親と育ての親の葛藤 【インドネシア映画倶楽部】第100回

2025-11-03

Air Mata di Ujung Sajadah

涙なくして見られない感動映画の続編。我が子をめぐり、生みの親と育ての親の葛藤を描く。インドネシア的な心理描写がうまい。もしできれば、Netflixで配信されている前作を見てからの鑑賞がお勧めだ。

文と写真・横山裕一

 2023年、インドネシアの国内作品で観客動員3位とヒットした同タイトル作品の続編。産みの母親と育ての母親との葛藤とともに、子供の真の幸せとは何かを愛情深く描いた人間ドラマ。タイトルにあるサジャダ(Sajadah)とは、イスラム教の礼拝をする際に使用する小ぶりな絨毯のこと。

前作のあらすじ

 まずは前作(Netflixインドネシア版で配信中)のあらすじから。主人公はジャカルタに住む女性、アキラ。夫と死別後出産した子供が死産だと告げられていたが、数年後、実は子供が中ジャワ州ソロにいることをアキラが知る。結婚に反対していたアキラの母親が娘の将来を考えて、アキラの出産直後に乳児を知り合いに養子として預けて、アキラに嘘をついていたためだった。

 アキラの息子、バガスはソロでアリフとユンナ夫妻に育てられていた。二人は養子であることはバガスには隠し、まさに実子のように愛情を注いでいた。そこへ一目子供に会いたいとアキラが現れ、アリフとユンナは動揺し、警戒する。最終的には夫妻がバガスを実の母親の元へ返さざるを得ないと苦渋の決断をするものの、アキラも出生の秘密を知らず幸せに暮らすバガスを顧みて、自ら身を引くところで前作は終了する。

養父が死別し再び始まる葛藤

 続編の今作品では、アキラはジャカルタで仕事が順調ではあるものの、やはり愛しい我が子のことを思い続けていた。身を引いたことから、アリフ夫妻のソーシャルメディアでバガスの近況を写真で確認するのが楽しみだった。しかしここ数ヶ月、写真が更新されない。バガスはどうしたのだろうか? 心配でたまらずにアキラは遂にバガスのいるソロへと赴く。そこでアキラはバガスの養父アリフが重病で危篤であることを知る。アキラに再会した養母ユンナは家族の危機に乗じてバガスをアキラに奪われてしまうことを恐れて、頑なな態度をとる。まもなく、アリフは亡くなり、ユンナもアキラ同様、片親となってしまう。生みの親と育ての親の葛藤が再び始まる……。

 前作では生みの親と育ての親との葛藤や対立が描かれるものの、ジャワ的、イスラム教的思考を反映した言動が盛り込まれて、対立だけでなく相手の立場も思いやる姿が印象的だった。今作品でも前作ほどではないがこうしたインドネシア的な心理描写がうまく描かれている。

 涙なしではみられない前作のラストシーンと同じ場所で、今作品もクライマックスを迎える。個人的には予想以上にあっけない結末であるため、更なる続編が用意されているのではと勘繰ってしまったが、それはそれで期待したいところだ。

 今作品は感動をより味わうためにも、可能であれば前作をNetflixで観てから劇場で続編を楽しんでもらうことを是非お勧めしたい。(英語字幕あり)

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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