女性の就職難という深刻な状況を背景にしながらも、笑えるコメディーに仕上がっている。自由奔放な家政婦たちの活躍ぶりに、上映中も終始、笑い声が途切れない。
Agensi Rumah Tangga
文と写真・横山裕一
職を失ったキャリアウーマンが一念発起して立ち上げた家政婦紹介所を巡る、コメディドラマ。ドタバタ、ロマンス、お涙、親子愛ありと、ごった混ぜの物語の随所にお笑いが散りばめられ、とにかく笑えて楽しめる秀逸な作品だ。
物語の主人公はジャカルタに住むキャリアウーマンのカティアで、公務員の母親、そしてお手伝いさんのミナおばさんとの3人暮らし。カティアにとって順風満帆な生活にみえたが、ある日、出社すると突然解雇を宣告されてしまう。
母親はカティアに公務員試験を受けるよう勧めるが、公務員にはなりたくないカティアは思い悩む。一方、母親は定年間際であることや、娘の無職が続くことを考え、やむなく長年雇っていたお手伝いのミナおばさんに暇を出してしまう。田舎に帰るミナおばさんを名残惜しくも見送った際、カティアはふと家政婦紹介所を立ち上げることを思いつく。早速、帰郷したミナおばさんに協力を求め、田舎で職を求める女性探しを始めるが……。
本作品の見どころは何といっても、お手伝い候補として集まったスンダ地方(西ジャワ州)の女性たちがコミカルに描かれているところだ。バラエティに富んだキャラクター作りやパワフルな行動、ユニークな発言でついつい笑ってしまう。仕事で失敗して、主人公を困らせながらもどこ吹く風と自由奔放で愉快な女性たちは必見でもある。
インドネシア人にとっては周知の事実のためか、作品内ではほとんど触れられていないが、お手伝いさんの存在は特に地方における厳しい社会の現状が反映されている。未婚者だけでなく、離婚して子供を抱えながら経済的に自立せざるを得ない女性が多い一方で、仕事口自体がない。このためジャカルタなどの都市部や海外でお手伝いさんとして出稼ぎをする地方女性が多いのが現実でもある。さらには雇い主の暴力や賃金未払いなどの問題も時に取り沙汰されることがあり、お伝いさんを取り巻く環境は厳しい職場だともいえる。
本作品ではこうした深刻な社会背景ではありながら、女性たちの明るさ、力強さにフォーカスして、コミカルなコメディドラマに仕上げているところが実に巧みだ。社会的負の部分も笑いとともにポジティヴに力強く生きていこうと描くところにインドネシア人気質、近年のインドネシア映画の勢いも感じさせる。
また、お手伝いさんの雇い主の一人として、国民的人気歌手アフガン(AFGANSYAH REZA)が主人公のロマンスの相手役として出演したり、映画「ソレ〜未来から来た妻」(SORE ISTRI DARI MASA DEPAN)で昨年のインドネシア映画祭・主演女優賞を受賞したシィラ・ダラ・アイシャ(SHEILA DARA AISHA)がチョイ役で登場するところもファンとしては嬉しい演出だ。
上映初日の夜の映画館はほぼ満席で、自由奔放でコミカルなお手伝いさんたちの活躍に終始笑い声が途切れなかった。通常、本編が終了してクレジットが流れ始めると観客は席を立つが、本作品ではクレジットとともに作品の名場面などの映像が添えられていたこともあり、最後まで席を立つ人はいなかった。これも本作品の面白さ、魅力ゆえのことかもしれない。
是非、劇場で他の観客とともに大いに笑っていただきたい。数あるコメディ作品の中でもオススメの一本だ。

