コンサート会場で観客のスマホを狙うスリで一攫千金を狙う若者グループ。その「大作戦」は果たして成功するのか? 痛快コメディーながら、経済格差の顕著なインドネシアの現実も如実に表す。
Operasi Pesta Copet
文と写真・横山裕一
若手人気俳優、イクバル・ラマダンがジャカルタ下町のスリに扮する痛快コメディドラマ。巧妙なスリの技術を駆使して一攫千金を狙う若者グループを通して、現代の経済的に苦しむ庶民生活の実態も浮き彫りにする。笑いながらも、どこか物悲しい気持ちにもさせられる快作。
主人公のイジャルは工場をクビになって以来、仕事も得られず、ついには仲間と伝統市場などでスリをして生活していた。ターゲットは買い物客のスマートフォン。しかし、コンビを組んでいた恋人のティアが捕まった時、結果的に見捨てて逃げてしまったことが心の痛手として残り、それ以降はスリをやめていた。
ある日、従兄弟の女性メロディとコンサートへ行った際、イジャルがつい癖でスリをしたところをメロディに見つかってしまう。しかし、意外にもメロディはイジャルと彼の悪友アドゥットに、インドネシア最大で3日間開催されるコンサートで大掛かりなスリを行い、一攫千金を狙おうと提案した。そして計画を実行するため、3人はかつてイジャルの恋人だったティアにも声をかけようとするが……。
スリをインドネシア語でチョペッ(COPET)と言う。かつては電車やバスに乗車していると「スリだ!(COPEEET!)」と乗客が叫ぶ光景がたまに見られたが、公共交通機関の整備に伴い、最近は車内が満員でもほとんど聞かなくなったようにも見受けられる。しかし、本作品内のようなコンサート会場など、曲に合わせて踊ったリできる広いスペースでは、大人数が入り乱れるため現在でもスリが横行しているようだ。本作品のエディ監督もミュージシャン時代、舞台で演奏中に観客がスリ被害にあったことを聞いた経験をもとにこの作品を発案したという。
作品内では2人、3人が連携して巧妙な手口でスリをするシーンが披露される。恥ずかしながら筆者も20数年前に携帯電話のスリ被害にあったことがある。総選挙キャンペーン集会の取材中、大勢の聴衆でひしめく中でカメラの三脚と誰かに押されたカメラマンの背中を支えようと両手が塞がった瞬間、左胸のポケットに背後から手が伸びてきて、ジッパーを器用に外して携帯電話が抜き取られた。振り返ると2人の人影が瞬時に人混みに紛れて消えていった。カメラマンも同時にすられていた。
この経験からも作品内でのコンビによる巧妙な手口は現実的な情報を元に作られたものと思われる。余談だが、かつては取材関係者が標的だったようで、「今日の○○党の集会ではメディア関係者○人が被害にあった」とメディア内で噂が回るほどスリが横行していた。今も大勢が集まる場所では皆さんも是非気をつけていただきたい。
スリは勿論犯罪ではあるが、本作品では主人公がスリの理由を吐露するセリフにインドネシア庶民が現在感じる経済環境の劣悪さが代弁されている。
(働きたくとも)仕事はなく、物価は高い。一方で地位のある奴らは汚職だ
昨今、大統領宮殿や国会に対する学生デモも、政府に経済政策の見直しや汚職犯罪者へのさらなる厳罰化などを強く求めている。本作品はスリが主人公のコメディではあるものの、逆にインドネシア社会の経済格差の現状を如実に表した作品だといえそうだ。
コメディとしても十分楽しめる内容で、是非、貴重品だけは注意しながら劇場で鑑賞していただきたい。

