「コミック8 リボリューション 呪いをかけられた内閣」 コメディアン勢揃いの人気シリーズで笑い納め 【インドネシア映画倶楽部】第108回

「コミック8 リボリューション 呪いをかけられた内閣」 コメディアン勢揃いの人気シリーズで笑い納め 【インドネシア映画倶楽部】第108回

Comic 8 Revolution SANTET K4BIN3T

インドネシアのコメディアンが大御所から若手まで勢揃いした本作で笑い納め。2025年はインドネシア映画界の充実期を実感させる一年だった。

文と写真・横山裕一

 2025年最後は気軽に楽しめる作品。ギャグやおふざけ満載で人気のコメディシリーズ、「コミック8」の第4弾。インドネシアの大御所から若手のコメディアンらが勢揃いして、終始笑いを誘う。

 物語はインドネシア政府に恨みを持つ妖魔、キ・バグスと二・グンディスの二人が妖術で政府を混乱させて国を揺るがそうと試みる。手始めに副大臣が妖術をかけられ、閣僚たちに動揺が広がる。このため政府は妖魔退治のために8人のエージェントチームを結成する。彼らは妖魔の棲む邸宅に家政夫や調理人、警備員などに扮して潜入するが、さまざまな怪奇現象が彼らに立ちはだかる……。

 作品タイトルに「リボリューション」とあるように、過去3作品での主要人物などの一部が若手コメディアンらに世代交代していて、若手ならではの勢いある笑いが全編にわたって散りばめられている。定番のギャグ、ふざけやとぼけをはじめ、皮肉など、理屈なしで楽しめる。年忘れに劇場で是非、笑い納めをしていただきたい。

インドネシア映画の隆盛ぶりが窺える2025年

 さて、2025年もあとわずか。インドネシア映画は今年もさまざまなジャンルで見どころある作品が次々と公開され、まさに新型コロナ禍後のインドネシア映画界の充実期を実感させる一年だったといえそうだ。

 その特徴の一つが大物監督が軒並み新作を公開させたことだ。巨匠ガリン・ヌグロホ監督作品では「彼はだれ」をはじめ、昨年インドネシア映画祭で最優秀監督賞を受賞した作品「サムサラ」が公開、ジョコ・アンワル監督は人間に潜む暴動要因に警鐘を鳴らした「トゲある丘で囲まれて」を、またハヌン・ブラマンティオ監督は特異な伝統風習を扱った「ゴウォック〜ジャワのカーマスートラ」といずれも見応え十分の作品だった。またリリ・リザ監督は自らプロデュースした23年前の大ヒット作「チンタに何があったののか」のリメイク「ランガ&チンタ」を公開して話題を呼んだ。このほか、鬼才、モウリー・スルヤ監督も「戦場の都市」と「運命の交換」の2本を新作公開し、歴史を生きた人々の人間臭さや心情の機微への鋭い切り込みが試みられている。

 こうしたベテラン・大物監督の活躍の一方で、中堅や新しい監督の活躍も目立った年だった。中堅監督のヤンディ・ローレンス監督は4カ月のロングランを果たした大ヒット作、「ソレ〜未来から来た妻」と家族再生を見事に描いた「若おじさんと7人の子供たち」の2本を手がけた。また人気俳優として地位を固めているレザ・ラハディアンは新人監督として1作目の「膝の上」でインドネシア映画祭の最優秀作品賞を受賞している。

 このように新旧監督による快作が目白押しだった2025年を反映して、観客の反応にも大きな変化が伺えた。これまでの「インドネシア映画イコール、ホラー」イメージからの脱却だ。12月27日現在で2025年の観客動員数トップ10には、従来半数以上を占めていたホラー作品がわずか4本しか入っていない(ホラーコメディ作品は除く)。これはホラー映画以外はハリウッド作品など外国作品にしか目を向けていなかった人々がインドネシア国内作品の充実ぶりに気づき、認めはじめた証だといえそうだ。一方でホラー作品は例年と同様に多数制作されている事からも、このことが窺える。

 ちなみに観客動員数1位は2007年以降で史上最高を記録したアニメ作品「ジャンボ」(Jumbo/ 動員数約1023万人)で、2位は昨年のメガヒット作品の第2弾「他とは違う:俺たちのホームを盛り上げろ!」(同978万人)。以下トップ10のホラー以外の作品はファンタジーロマンス、ドラマ、サイコアクションなどとバラエティに富んでいる。これらを反映してかデータはまだ発表されていないが、劇場を訪れる人々の数も確実に増えているようでもある。

 こうした中で、国軍出身のプラボウォ大統領による新政権時代を反映してか、国軍映画が2本上映されるなど、映画というメディアが娯楽や芸術文化以外の機能としても改めて注目されていることが窺える。

 新旧監督の活躍、作品内容の充実など2025年はインドネシア映画界の実力がインドネシアの人々を振り向かせた年ともいえ、まさにインドネシア映画の隆盛ぶりが窺える。来年2026年も大いに期待したい。

インドネシア映画倶楽部 バックナンバー
横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
plus62.co.id