大統領府でコーヒーを 誰でも入れる「ムルデカ・ラウンジ」

大統領府でコーヒーを 誰でも入れる「ムルデカ・ラウンジ」

インドネシア大統領府の敷地内にあるカフェ「ムルデカ・ラウンジ」は一般に開放されており、大統領府の雰囲気を味わいながら食事やコーヒーを楽しめます。

大統領官房の入口
インドネシア国家官房の入口

 インドネシア国家官房(Sekretariat Negara)敷地内の「ムルデカ・ラウンジ」はインスタグラム・アカウントも開設しており、「大統領府でコーヒーを飲みませんか?」(Mau ngopi di Istana?)と宣伝している。

 そこに書かれた手順を読むと、「礼儀正しい服装」の長袖長ズボン(または長いスカート)を着用し(ジーンズは禁止)、身分証明書を持参のこと。入口は「マジャパヒト・ゲート」(グーグルマップスで「Pintu Majapahit Kemensetneg」と検索)。チェックポイントで身分証明書をゲストパスと交換すれば、ムルデカ・ラウンジは歩いてすぐ、とのこと。予約などは必要なし。

 本当にそんなに簡単に大統領府に入れるものだろうか。マジャパヒト・ゲートに着くと詰所には大統領府警備隊がいて、彼らに「ムルデカ・ラウンジ?」と聞くと、面倒そうに「行け、行け」と合図された。ゲートを進むと車の検問所があった。ちなみに、車で行っても入れるとのことだ。

 検問所の横の建物に入って、金属探知機を通り、荷物のX線検査をする。その先に窓口があり、「ムルデカ・ラウンジ」と告げると、「IDを」と言われた。私はパスポートのコピー、同行者はITASのコピーを出した。「オリジナルはないのか?」と聞かれたが、同行者は「ITASとはこういうものである」と押し通す。私のパスポート・コピーはやや逡巡されたものの受領された。できればパスポート原本を持参した方が安全だろう。服装チェックもそれほど厳しくないようだったが、念のため「肌の露出がなく、きちんと見える服装」で行った方が無難だ。

 ゲストパスをもらい、窓口の前に置いてあるノートに名前と入場時間、もらったゲストパスの番号を記入する。手続きはこれで終わり。そのまま少し歩いた先の左手に、職員の食堂(カンティーン)、そしてムルデカ・ラウンジがあった。

ムルデカ・ラウンジ

 オープンエアの普通のカフェ。ところが、メニューはなかなかバラエティー豊富だ。インドネシア大統領府らしく、メインディッシュは地方色豊かで、チレボンの牛肉スープ「ウンパル・ゲントン」、ジョグジャ名物「ミー・ジャワ」、アチェ料理の「アヤム・タンカップ」などが並んでいた。このほか、「ムルデカ鶏唐揚げ」やウェスタン・フュージョン、軽食、デザートまである。ドリンクもいろいろで、モクテル、ジュース、ヤクルト、茶、コーヒー各種などがある。

 人気と聞いたアチェのセットメニュー(Nasi Ayam Tangkap Sambal Aceh、5万5000ルピア)とスンダ風ナシ・リウェットのセット(Nasi Liwet Kastrol Ayam、5万5000ルピア)、新メニューとして出ていたトウモロコシ揚げ(Jagung Goreng Rempah Merdeka、2万5000ルピア)、アイス・ラテ(Merdeka Aren Latte, Ice、3万ルピア)を注文した。

アヤム・タンカップ(手前)とココナッツミルク味のスープ、サンバル
アチェ料理のセット。アヤム・タンカップ(手前)と香辛料入りのご飯、ココナッツミルク味のスープ、サンバル
ナシ・リウェットのセット。サユール・アッサム(スープ)、アヤムゴレン、テンペゴレン、タフゴレン、塩魚付き
鍋入りナシ・リウェットのセット。サユール・アッサム(スープ)、アヤムゴレン、テンペゴレン、タフゴレン、塩魚付き
香辛料をまぶしたトウモロコシはピリピリ辛い
トウモロコシのスナックとヤシ砂糖入りアイスラテ。トウモロコシは香辛料がまぶされていて、ピリピリ辛い

 このカフェに厨房はなく、注文すると、トレーに載せた食事がカンティーンの方から運ばれて来る。取り分け用の小皿を頼んだら、「カンティーンの什器を借りているので、余分な皿はない」とのこと。なるほど。

 要はカンティーンの厨房で作られた食事なのだが、おしゃれな盛り付けで、味もおいしい。制服姿の人やバティックシャツを着た人、すなわち大統領府で働いているらしい人たちが次々にやって来る。隣にいた人たちの会話では「パ・ジョコウィ」(ジョコウィ前大統領)が話題に上っていた。

 ラウンジには、なぜか英語で、「Attitude ENJOY Work Hard Be Positive」と書かれているのが面白い。「規律 楽しむ 一生懸命働く ポジティブに」といったところか。「ポジティブに」の加わる所がなんともインドネシアらしい。

ムルデカ・ラウンジ

 場所は国家官房の隅っこで、外の道路の近くだとはいえ、庭の緑を見ながらのランチは楽しい。あまりにものんびり、ゆったりした空気が流れているので、昔のジャカルタにタイムスリップしたようだった。

 帰り際にカンティーンをのぞいたら、こちらの方がにぎわっていた。「どれにする?」と普通に声をかけられたので、カンティーンで食事をしても問題なさそうだった。カンティーンとラウンジを出た辺りでは「魚を食べよう」というキャッチフレーズの付いた看板を出して、冷凍魚を販売中。大統領府職員の生活が垣間見える。

土産物店。大統領府グッズが買える
土産物店。大統領府グッズが買える

 ゲートの近くには土産物店がある。こちらも自由に入って良し。大統領府ロゴの付いたタンブラー、シール、キーホルダー、Tシャツ、帽子などが売られている。残念なのは、「これは大統領府で購入した、本物の大統領府グッズだ」と証明する手立てはないことだ。

 窓口でゲストパスを返却して身分証明書を返してもらい、退出時間を記録して終わり。出入りはあまりにも簡単だった。これは他国ではめったにできない体験かもしれない。

■Merdeka Lounge
Jl. Veteran No.17, Kompleks Kemensetneg, Gambir, Jakarta Pusat
月〜金8:00〜17:00
https://www.instagram.com/merdekalounge?igsh=M2prN3czMnkzNHA5