ジョコ・アンワル監督のトークに、都心の夜を楽しむ野外上映会 【インドネシア映画倶楽部】第145回 番外編

ジョコ・アンワル監督のトークに、都心の夜を楽しむ野外上映会 【インドネシア映画倶楽部】第145回 番外編

ジャカルタ・フィルム・ウィーク2026

文と写真・横山裕一

10月10日夕方、ジャカルタの都心にあるメンテン公園の運動場で、ジョコ・アンワル監督が参加しての野外上映会が行われた。これは10月21日から25日にかけて開催される「ジャカルタ・フィルム・ウィーク」のプレイベントとして開かれたものだ。ジャカルタ・フィルム・ウィークは2026年で6回目を迎える。

ジャカルタ・フィルム・ウィーク2026

 夕方、薄暗くなり始めた中、プレイベントではまず、ジョコ・アンワル監督のトークショーと参加者との質疑応答が行われた。

 ジョコ・アンワル監督はインドネシア映画界を牽引する代表的な映画監督の一人で、「悪魔の奴隷」(Pengabdi Setan)シリーズや「呪いの地の女」(Perempuan Tanah Jahanam/ 2019年作品)などホラー作品をはじめとして、スリラー作品「トゲある丘で囲まれて」(Pengepungan di Bukit Duri)や、現代ドラマなど多ジャンルで傑作を生み出し続けている。

ジャカルタ・フィルム・ウィーク2026

 それだけに会場には、同監督のファンや映画好き、さらには映画制作者を志す学生など20代の若者を中心に約150人の参加者が集まった。トークショーでは、当日上映される同監督の処女作「ジョニの約束」(Janji Joni/ 2005年作品)の制作エピソードなどが披露された。

 今でこそ誰もが知る名監督だが、当時は駆け出しで、ジャカルタの街頭撮影はゲリラ的に行ったこともあったという。路上撮影で警備員に止められると、同監督は「学生の制作でして……」とお茶を濁したこともあるという。

今ではジャカルタも映画撮影に協力的で、撮影許可を得るのも簡単だと思いますが……

 ジョコ・アンワル監督はこのように会場を笑わすとともに、「映画の街」として動き出し、フィルム・ウィークも開催するジャカルタ特別州へのリップサービスも忘れていなかった。これを受けて、参加者からも同監督の作品や映画制作について、また映画界に入るにはどうすれば良いかなど質問が相次いだ。

 同監督の作品では、インドネシアにおける現代の社会問題や過去の歴史的事件、事象などを巧みに盛り込み、その恐怖感をホラーやスリラーに転化させるのも特徴であり、魅力の一つだ。そこで筆者も「物語を作る際、現実的な問題や事件から物語を膨らませるのか、あるいはどの段階で物語と絡ませていくのか」と構築過程について質問した。すると同監督は次のように丁寧に答えてくれた。

私の場合は、登場人物のキャラクター作りから始めます。名前、年齢、どんな人物か。キャラクターを作り上げてから、どの時代にするか、何が起きるか、テーマを何にするのか、ストーリーデザインを膨らませていきます

 予想とは逆のアプローチだったのは意外だったが、だからこそ同監督の物語は柔軟でユニークな発想や、観客にとって予想外の展開を作り出すことができるのかもしれないと、改めて感心させられた。

 質疑応答はジョコ・アンワル監督ということもあって、1時間以上続くほど次々と参加者から質問が相次いだ。映画好きが集まったということがよくわかる。休憩時間には、参加したある女性が「日本の是枝裕和監督作品のファンだ」と話しかけてくれたりもした。

ジャカルタ・フィルム・ウィーク2026

 そして、同監督の処女作「ジョニの約束」が上映された。この作品は映画館で上映するフィルムを配達する男ジョニ(ニコラス・サプトラ)が様々な事件に巻き込まれながらも、フィルムが時間に間に合うよう奮闘するコメディ作品で、テンポ良く、それぞれのキャラクターが際立った面白い作品だ。

ジャカルタ・フィルム・ウィーク2026

 都心の夜の公園での野外上映はなかなか良い雰囲気だった。常夏の国とはいっても、夜は若干ひんやりと心地良い。スクリーンの向こう側には高層ビルの夜景も浮かび上がり、遠くでは夜でもサッカーやローラースケートを楽しむ姿も見受けられる。都会の夜を楽しみながらの野外上映会は、まさにジャカルタ・フィルム・ウィークのプレイベントには相応しかった。

 10月21日から始まる「ジャカルタ・フィルム・フェスティバル2026」では、期間中、ジャカルタ内指定の映画館で国内外多数の作品が上映される。日本作品では、永久允監督の「炎上」(Burn)が上映される。ただ、すでにチケットは全て完売で、本稿は告知にならず恐縮だが、インドネシアの人々の映画熱も高いことが窺える。最終日に上映されるインドネシア作品「海が語りかける」(Laut Bercerita)は前評判が高い作品で、10月28日から一般公開されるので、是非見逃さないでいただきたい。

インドネシア映画倶楽部 バックナンバー
横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
plus62.co.id