強大な権力を持つ警察高官(上写真の中央)が部下(向かって右隣)を銃殺した上に隠蔽を試み、失敗した事件を追う「大将のシナリオ」(Skenario Sang Jenderal)がNetflixで配信開始した。2022年にインドネシアで注目の「国民的事件」となった、通称「J先行曹長(Brigadir J)殺害事件」を取り上げたドキュメンタリーだ。
事件当時の映像のほかに再現映像も混ぜ、遺族側弁護人や地元メディアの「テンポ」記者らの証言を挟み、事件発生から裁判に至るまでの流れがわかりやすくまとめられている。
事件の発端は「警察高官の妻を性的暴行しようとした警官が、別の警官と銃撃戦になり、高官の自宅で射殺された」というもの。射殺された「J先行曹長(名前はヨシュア)」は不名誉な罪を着せられたまま、事件は闇に葬られかけた。
しかし、スマトラ島ジャンビに住むヨシュアの遺族は納得せず、果敢に声を上げた。「息子が性的暴行をするなんてあり得ない」「銃撃戦ではなく処刑されたのではないか」とメディアを通じて疑念を呈し、正義の実現を訴えた。世間の注目による圧力で調べが進めば進むほど、高官邸の監視カメラが都合良く壊れていたり、現場にいなかったはずの高官が実は現場にいた、といった事実が次々に明るみに出て、騒ぎは大きくなった。メディアで連日報じられ、世間の注目を集める大事件に発展した。
警察高官自らがヨシュアを殺害したとの疑いが強まり、ついに、逮捕・起訴。高官は南ジャカルタ地裁で死刑判決を受けた(最高裁で終身刑に減刑)。殺害の「真の動機」は明るみにならないまま、事件は幕を下ろした。ヨシュアが警察内部の何らかの秘密をつかんで暴露しようとした、高官が元締めとしてオンライン賭博などを行っていた警察内部の「コンソーシアム」が背景にある、などと取り沙汰されている。
強大な権力を持つ警察に対して庶民が戦いを挑み、勝利を収めた画期的な事件だった。このドキュメンタリーでは、「『正義とは、もぎ取るものである』と、人々の目を開かせた事件だった」と位置付ける。弁護人の回想シーンは感動的だ。しかし、ドキュメンタリー化に当たって、新しく明らかになった事実などは特にない。事件関係者の現在といった最新情報もなく、「高官は今でも本当に刑務所で服役しているのだろうか? いや、それについて語るのはやめよう」などとほのめかすのみだ。目新しさはなく、物足りなさは残るが、世間を騒がせた事件を振り返るには良いだろう。
https://www.netflix.com/id/title/81771745↓ +62による事件まとめ

