国立博物館へ行こう! 日本語ガイドの教える「必見」展示品

国立博物館へ行こう! 日本語ガイドの教える「必見」展示品

インドネシアの多様な民族と文化、そして、先史時代からの豊かな歴史の一端をのぞける、インドネシア国立博物館(Museum Nasional Indonesia、以下「博物館」)。インドネシアに来たなら、一見の価値がある。しかし、展示品は膨大な上、博物館はまるで「生きている」ように展示がころころ変わる。手がかりをつかむのに最適なのが、毎週火曜と第一土曜に開催している「日本語ガイド付きツアー」。これに参加すると、わかりやすく見所を解説してもらえる。

 博物館にはジャワ原人、古代の碑文、有名な石像など、日本の歴史の教科書にも載っているような貴重な品がごろごろ。さすがインドネシア、と思わされる。昔は「ただ置いてあるだけ」という展示だったが、今では新館が出来て、全体がきれいに改装され、展示にも工夫が凝らされている。とても見応えがあり、説明を読みながら一つずつ見ていくと、あっという間に時間が過ぎていく。

 一部の展示を除くと、フラッシュなしであれば写真や動画撮影も自由だ。映像展示や「触れる展示」など、工夫が凝らされている。屋外の中庭にも石像が並べられており、インドネシアらしい開放感がある。ミュージアム・ショップでは、ジャカルタで流行している「スタンプ集め」ができる、「ミュージアムパスポート・スタンプブック」も販売している。

ミュージアム・ショップ
ミュージアム・ショップ
「ミュージアム・パスポート・スタンプ・ブック」。ミュージアム内のショップで販売中
人気の「ミュージアムパスポート・スタンプブック」はミュージアム・ショップで販売中(8万9000ルピア)。ショップの前にスタンプ台があり、博物館のオリジナル・スタンプを押せる

 充実の博物館なのだが、問題は、順路をどう進めばいいのか、一体どこに何があるのか、わかりにくいこと。さらに、ウェブサイトもわかりにくい! そんな中、毎週火曜と毎月第一土曜の午前10時半から開催している「日本語ガイド付きツアー」(約1時間)に参加すると、見所などのポイントをわかりやすく教えてもらえる。ボランティアでガイドを務めるのは、インドネシアの歴史文化を学ぶ「インドネシアン・ヘリテイジ・ソサエティー」の日本人会員16人。ツアーは予約不要で、参加無料(博物館への入館料は必要)。

 博物館は、象の像が正面に立っている建物が旧館、その右手の高い建物が新館だ。その間にある、渦巻きに似たモニュメントの後ろにある階段を降りて行くと、入口がある。券売機でチケットを買い、QRコードをかざして入場する。そこからスロープを上った先が展示場の入口となり、日本語ガイド・ツアーに参加する場合の集合場所もここだ。「日本語ガイド 10:30」の紙を目印に持ったガイドがいる。

ミュージアムの日本語ガイドの皆さん。1セクションに3カ月かけて勉強してからガイド・デビューする
日本語ガイドの皆さん。「民族」「先史、石像」「染織」「陶磁器、歴史、宝物」の4セクションがある中、1セクションを3カ月かけて勉強し、ガイド・デビューする

 1人だけでガイドするのかと思ったら、ガイド2〜3人で1チームとなり、ツアー客の人数が多ければ、さらに複数のグループに分けて案内してくれるという手厚さ。場所によってガイドを交代しながら、展示品の説明をしてくれる。

 決められた共通の台本はない。歴代ガイドが改訂を重ねてきたテキストを基に、それぞれが工夫して、自分の言葉で台本を作成している。補足で見せる資料なども自作している。どの展示品を紹介するかも最終的にはガイド次第。なので、「何回来ていただいても、違う話が聞けます」とのこと。

ガイドの金子久仁子さん自作の資料。バティックの説明の所で、「+62インドラマユ・ツアーに参加して、これを作りました」と自作バティックの写真を見せるそう
ガイドの金子久仁子さんが準備した資料。バティックの説明の時に、「私はインドラマユで、これを作りました」と自作バティックの写真を見せるそう

 ツアーでは、博物館の歴史から始まり、インドネシアの地図や民族の説明、ヒンドゥー時代の石像、クリス(刀)、バティックとイカット、オランダ植民地政府に対して戦いを挑んだディポネゴロ王子の馬の鞍や傘といった遺品、トラジャの家の模型、バタック人の秘儀の書物、パプアの民族バッグ「ノケン」の特別バージョンなど、多岐にわたって紹介してくれる。インドネシアをまったく知らない人でも、ある程度の知識のある人でも、「へえー」と驚き、楽しめる内容だ。

 ガイドは、その日に参加する人を見て、「旅行者が多い」「男性が多い」などによって、紹介する展示品を臨機応変に変えていると言う。インドネシア地図の中のカリマンタンの説明では、「現在、森林火災が起きています」「新首都を建設中です」といった時事的な話題も盛り込まれていた。

 膨大な展示品がある中で、ツアーで紹介できる展示品は約20点のみ。1時間はあっという間だ。いったんガイドの説明を聞いてから、もう一度、自分でゆっくり見て回ると良いだろう。

中庭に置かれた、13〜14世紀の牛の像。ネックレスや蓮の花などで美しく装飾されている
中庭に置かれた、13〜14世紀の牛の像。ネックレスや蓮の花などで美しく装飾されている

 この博物館は「まるで生きているように展示が変わる」(日本語ガイド・リーダーの永井裕美子さん)。その日、紹介しようと思って行ったら展示品がなくなっていたり、新しいセクションがオープンしていたり、ということもざらだと言う。やはり、博物館をよく知るガイドの助けが必要だ。

 ガイドの皆さんに、「博物館へ来たら、これは絶対に見るべき!」という、推しの展示品とその理由を教えてもらった。

ジャワ原人の骨、フローレス原人の頭蓋骨

Fosil Homo erectus (Java Man)
Tengkorak Homo floresiensis

ロマンがある。見た目のインパクトも!

浅見喜世子さん

 歴史の授業で「ジャワ原人」について習った記憶があるだろう。その貴重な頭蓋骨などの骨がオランダ政府から返還され、2025年12月から特別室での展示が始まった。全身を復元したジャワ原人の像がその横に立つ。

 フローレス原人の方は、2003年にフローレス島で発見され、「新種のヒト」として話題になった。最初は「子供」や「奇形」と思われたぐらいに小さく、「ホビット(小人)」と呼ばれている。展示されている頭蓋骨(レプリカ)の小ささは衝撃的だ。

復元されたジャワ原人の像。その右に骨が展示されている
復元されたジャワ原人の像。その横に骨が展示されている
フローレス原人の頭蓋骨
フローレス原人の頭蓋骨のレプリカ。「世界を驚かせた小人」と説明にある
Jakarta, 17 Desember 2025 — Museum dan Cagar Budaya (MCB) secara resmi membuka P…
www.museumnasional.or.id

バイラヴァ(アディティヤワルマン)石像

Bhairawa(Adityawarman)

顔が妙に穏やかで、人間味がある

永井裕美子さん

 14世紀にスマトラ島で王国を興したアディティヤワルマン王をシヴァ神(バイラヴァ)に似せて作った肖像彫刻。高さ約4メートルもあり、博物館で展示されている石像の中でも最大だ。この石像は発見される前に、地面の上に出ていた足の部分を地元の住民が「砥石」として使っていた、という逸話があり、足の部分が削れている。

 短剣を持ち、足元にはどくろを並べ、顔には憤怒の表情を浮かべる。威圧するようでありながら、表情は穏やかで、どこか人間らしいのが魅力だ。ミュージアム・ショップの近くに並んでいる、オランダから返還された石像の中にある「正規バージョン」のバイラヴァ像と見比べると、その違いがわかる。  

アディティヤワルマン(バイラワー)石像
バイラヴァ(アディティヤワルマン)石像

般若波羅蜜多像

Prajnaparamita

比較的新しい展示で、「映える」飾り方

山内円夏さん

 14世紀のシンガサリ王朝時代に作られた、般若波羅蜜多をかたどった肖像彫刻。1978年にオランダから返還されたが、2023年に起きた博物館の火災後からお蔵入りしていた。2026年9月、新しい形での展示が再開されたばかり。博物館側が現在、目玉として推している展示品のうちの一つだ。

 水上をイメージしているかのような銀色の円形の上に展示されており、ちょっと遠いのが残念だが、全角度から見ることができる。

般若波羅蜜多像
般若波羅蜜多像

「ヌサンタラの顔」AI診断

Mengenal Paras Nusantara

展示品ではないけど、これは盛り上がる!

金子久仁子さん

 「あなたはインドネシアのどの民族?」をAIで診断する。カメラの前に立つと、インドネシアの多数の民族の中からマッチングする一つが選ばれ、その民族の伝統衣装姿で表示される。多様な民族がいる「インドネシアならでは」の遊びと言えそうだ。ちなみに日本人は「ソロ」や「バリ」と診断されることが多いそう。記念に、写真を印刷することもできる。

 当初は無料だったが、あまりの人気ぶりに常に長蛇の列となり、有料に変わった。診断は1万ルピア、写真印刷は追加で1万ルピア。

「あなたはインドネシアのどの民族?」。AIで診断する
あなたはインドネシアのどの民族? AIで診断する

インドネシア国立博物館
https://www.museumnasional.or.id
8:00〜18:00(金〜日20:00)、月祝休み
入館料:外国人15万ルピア、KITAS所有者は5万ルピア

インドネシアン・ヘリテイジ・ソサエティー(Indonesian Heritage Society)
https://heritagejkt.org

インドネシアン・ヘリテイジ・ソサエティー日本語セクション(Japanese Section – Indonesian Heritage Society)
https://share.google/Y0VpKK74vvor4GB42

日本語ツアー 毎週火・毎月第1土曜 10:30〜
英語ガイド 毎週火・水・木・土 10:00〜
その他の言語のガイドについては、インドネシアン・ヘリテイジ・ソサエティーに問い合わせを。

博物館巡りが楽しくなるアニメワヤン 毎月1回、館内シアターで公演
インドネシア国立博物館(以下、博物館)とコラボした「アニワヤン」(アニメ風の影絵芝居)の公演が毎月1回、博物館内シアターで行われている。題して「博物館へ行こう!…
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