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 私は普段はジャカルタで会社員をしている。在宅勤務が始まったのは3月17日のことだったから、すでに60日以上家にいることになる。在宅17日目の4月2日以来、note(クリエイターが文章や写真などを投稿できるサービス)内の、「コロナで変わった世界の暮らし」というマガジンの下で日記をつけ始めた。こちらがその第1回日記。
https://note.com/yoko_jakarta/n/nd7eaeefe89e6

 これまでの2カ月間はあっという間に過ぎていった気がするが、改めてこれを読み返してみるとなかなか興味深い。4月2日といえば、インドネシアで最初の感染者が公にされてからちょうど1カ月の時点だ。この時の私は、「たった1カ月で陽性患者が1790人に!」と驚きをもって記している。今はといえば、すでにこれのほぼ10倍。もし、5月の自分がこの日記のコメント欄に「まだ少ないですね! 5月半ばにはもう1万8000人超えですよ!」と書き込んで、4月の私がそれを読むことができたならば、4月の私は衝撃を受けるだろう。同じやり方で、例えば、10月あたりの私が「5月はまだ不安だったね。私は明日、バリに行ってきまーす!」とか書き込んでくれればいいのに。

 ジャカルタの大規模社会制限(PSBB)は今のところ5月22日までとなっているが、その先は果たしてどうなるのか。最近、国営企業省から事業活動の再開を予測するシナリオが発表されていたが、まだまだ流動的だろう。陽性患者数は今も増え続けていて、断食明けの大祭を前に、カーブが落ち着く日が近いとはあまり思えない。

 アパートメントの窓から見える世界は平和で、乾期の強い日差しを浴びてすっくと立っているヤシの木を眺めていると、自分が今、なぜこういう生活をしているのかを忘れそうになる。ずっと家にいる生活は、不自由とはいえ、悪いことばかりじゃない。なにより、これまで留守がちだった私が家にずっといることで、娘たちがとてもうれしそうだ。実にかあちゃん冥利につきるし、なんだか懺悔(ざんげ)をしているみたいな気分でもある。これまでおまえたちには寂しい思いをさせたねえ。かあちゃんのこと許しておくれよ……。

 誰もいない下宿先にずっといても仕方がないので帰って来ている23歳の長女は、あっという間に何でもソツなくこなす大人になった。最近はよくおいしいパンを焼いてくれる(特にメロンパンが絶品)。一方、15歳の次女はまだまだおぼつかないので、この機会に、暮らしの中で知っておくべきこまごましたことを少しずつでも伝えられたらと思っている。体も小さい彼女だが、在宅中に爆発した食欲(四六時中「おなかがすいた」と台所と部屋の間をウロウロしている)で、全体的にだいぶ体つきがガッシリしてきた。食後の皿洗いは黙ってやってくれる。

 コロナは確かに災いではあるが、いろいろな意味で、記憶に刻むべき大事な日々となっている。一方で、朝起きて、掃除して、洗濯して、運動して、シャワー浴びて、料理して、食事して、仕事して、本を読んで、動画を見て、夜寝るというひたすら単調な繰り返しの毎日だから、日常に戻ったらあっという間に忘れてしまいそうな脆(もろ)さがある。喉元過ぎれば熱さを忘れる、というか「喉元過ぎればぬるさを忘れる」って感じ。

 コロナがいつ収束して、コロナ後の世界がどう変わっているかなんかはまだなんともわからないが、ひとつだけわかっていることがある。これは忘れちゃいけない日々だ。

 だから、私は日記を書く。

 

武部洋子のnote
https://note.com/yoko_jakarta

 

武部洋子(たけべ・ようこ)
「旅の指さし会話帳 インドネシア語」(情報センター出版局)著者。東京生まれ。大学で第二外国語としてインドネシア語を選択。1年間の現地留学の後、1994年に大学卒業後、そのまま移住。現地出版社、日系広告会社勤務、ライター、翻訳、通訳、コーディネーターなどを経て、現在は日系企業勤務。

 

【インドネシア居残り交換日記】 
DAY 1 賀集由美子(チレボン) 2020年4月28日 怒濤の「2コマ漫画」マスク作り

DAY 2 横山裕一(ジャカルタ) 2020年4月6日 マスク越しの会話

DAY 3 西川知子(ジャカルタ) 2020年4月19日 とある休日

DAY 4 成瀬潔(バリ) 2020年4月25日 嵐が過ぎるまで

DAY 5 成瀬潔(バリ) 2020年4月26日 飼育係

DAY 6 ダグソト(ジャカルタ) 2020年4月29日 会社にヒョウが出た!

DAY 7 西宮奈央(バンドン) 2020年5月6日  カボチャが採れるころ

DAY 8 池田華子(ジャカルタ) 2020年4月6日 ジャワの農村バティック

DAY 9 池田華子(ジャカルタ) 2020年4月9日 子猫を拾った

DAY 10 岸美咲(ソロ) 2020年5月10日 ジャワの芸術家のエネルギー

DAY 11 松下哲也(東ヌサトゥンガラ・アドナラ島) 2020年5月10日 日曜の釣り

DAY 12 名取敬(ジャカルタ) 2020年4月某日 任天堂タイム

DAY 13 岡本みどり(ロンボク) 2020年5月10日 断食月の食事

DAY 14 賀集由美子(チレボン) 2020年5月11日 PSBB下でのバティック製作

DAY 16 西宮奈央(バンドン) 2020年5月13日  バナナチャレンジ

DAY 17 轟英明(チカラン) 2020年3月15日〜5月24日 新しい日常

DAY 18 名取敬(ジャカルタ) 2020年4月某日 酒とテレビと囲碁タイム

DAY 19 松下哲也(東ヌサトゥンガラ・アドナラ島) 2020年5月24日~29日 魚づくしごはん

DAY 20 岸美咲(ソロ) 2020年5月27日 ガムランの「うちで踊ろう」

DAY 21 宇田川朋美(東ジャワ・クディリ) 2020年6月1日 こんな時だからこそ、家でおいしいものを

DAY 22 池田華子(ジャカルタ) 2020年5月23日 じんごろう、その後

DAY 23 西川知子(ジャカルタ) 2020年5月5日 バティック、バティック、バティック

DAY 24 岡本みどり(ロンボク) 2020年6月1日 家庭菜園ズボーラ

DAY 25 高野洋一(ジョグジャカルタ) 2020年6月2日 時間があるといろいろ考える

DAY 26 村田真理子(ジャカルタ) 2020年6月4日 #大人になってまでなわとびするとわW