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<前回のおはなし>
 2010年7月、北ロンボク県の観光専門高校の日本語教師として赴任した私、ぼくせん(ロンボク先生)。コロナ感染拡大を抑えるため、私たち教師は慣れぬオンライン授業を始めました。
(→「オンライン授業という名の荒波」)

娘と学校へ
娘と学校へ

 オンライン授業を続けて数週間が経ったころ、私たちは、ある問題に直面しました。

 それは出席者がとても少ないことです。

 下の写真は、4回目の日本語の授業の出欠を示すものです。

オンライン授業の出席者
オンライン授業の出席者

 「提出済み」(=出席者)が11人、「割り当て済み」(=出欠確認をしたが応答のない者、つまり欠席者)が16人となっています。このクラスの生徒数は34人ですから、7人はオンライン上の教室に一度もログインすらしていません。

 「クラスの3分の1しか出席してないやん!

 オンライン授業期間中、生徒は自宅学習でしたが、教師は自分の授業のある日は学校へ行くことになっていました。私は生徒が一人もいない校舎で先生方に尋ねました。

 「あのぅ……。私の授業、出席している生徒が少ないようなんですが……」
 「どれくらい参加してるの?」
 「はじめは半分くらいで、(4回目の)今は3分の1くらいです」
 「わ、3分の1も! 僕なんか、今日の出席者は5人だったよ!」
 「私のクラスも3人よ」
 「えええーーー!?」

 数人の先生から聞いたところによると、どうも1年生は各クラス5〜10人程度、2年生以上になると5人以下しか出席していないようです。

 1年生は学校が始まったばかりだからちゃんとしているんだね、と先生方は言いました。

 そこへ校長先生が通りかかりました。オンライン授業の実態を報告書にまとめるようにとのこと。学校で保管して、教育文化省県本部の視察があったら提示するのだそうです。

 「校長先生!」。一人の教師が声をあげました。

 お、この出席者数の少ない現状を訴えるつもりだな。いいぞ!

 「報告書の欠席者の名前リストは、書くのが大変です!」
 
 え、そっち? 生徒じゃなくて自分の報告書優先??
 私が戸惑っていると、ほかの先生も助け舟を出しました。

 「そうですよ、校長先生。いっぱい名前を書かなきゃいけないんですから」

 校長先生はにこやかに答えました。

 「それじゃあ、欠席者ではなく、出席者の名前を報告することにしましょうか

 なんでやねーん。
 もっと大事な話があるだろぉぉぉぉ。
  
 腹の中で叫ぶ一方、先生たちの自由さがおかしくておかしくて……!

 数日かけて報告書をまとめながら、生徒たちはどうしてこんなにオンライン授業に参加しないのだろう?とほかの先生方と話し合いました。おそらくは経済事情だろうなぁと私たちは考えました。

 オンライン授業に参加するためにはインターネット回線に繋がっていないといけません。ですが、ロンボク島の田舎ではネット回線を自宅に引いている家庭はごくわずか。多くは携帯電話からネットに接続しています。このパケット通信料を払えない家庭が多いのではないかと私たちは予測したのです。

 そのころ、学校に通信会社の制服を着た人が何度も訪れているのを見かけました。しばらくして、地方政府の支援を受けて、某通信会社から全ての生徒にインターネットに接続できるSIMカードが配られることになりました。

 おお、すごい!やるなぁ、地方政府!
 これでオンライン授業に生徒たちも参加するでしょう。

 そう思っていたのに、SIMカード配布後も状況はあまりかわりませんでした。
 一体全体、なぜなのでしょうか。

 「だーーー、しゃらくせーーー!!!」
……と校長先生が叫んだかどうかはわかりませんが、翌週から突然、訪問授業を行うことになりました。

 訪問授業とは、私たち教師が生徒のいる村を訪ねて授業をするものです。私もお声がかかって、一度、学校近くの海辺の村へ行かせてもらいました。

 次回は、訪問授業のお話です。(つづく

岡本みどりさんと娘
岡本みどりさんと娘

岡本みどり(おかもと・みどり)
2010年から2年間、青年海外協力隊の栄養士隊員としてロンボク島の西ロンボク県へ派遣される。2012年、任期満了後に結婚。北ロンボク県へ移住し、現在に至る。2018年のロンボク地震被災後は、家族のストレスケアのため、家族中心生活へ移行。2020年7月から、地元の観光専門高校で日本語教師。

「ぼくせん」バックナンバー

#1 オンライン授業という名の荒波

#3 手土産持って訪問授業

#4 嵐の中間テストだぜ!

#5 「みんな同じ答え」の中間テスト