子供も未経験者も!インドネシアで始めるバドミントン プロ選手のプライベートレッスンを体験

子供も未経験者も!インドネシアで始めるバドミントン プロ選手のプライベートレッスンを体験

インドネシアが五輪で初めて金メダルを獲得した競技はバドミントン。競技層が厚く、インドネシア人コーチは日本をはじめ世界中で活躍する。インドネシアであれば、未経験者や子供でもプライベートレッスンを気軽に受けられ、バドミントンを始めるには絶好の環境だ。タンゲラン・ビンタロにあるクラブでプライベートレッスンを体験してみた。

 日曜午後にやって来たのは、ビンタロのバドミントン・コート。体験レッスンのコーチはなんと、2014年世界選手権で銅メダルのトミー・スギアルト選手(36)。ちなみに私はバドミントン未経験で、子供のころにちょっと遊んだことがあるだけだ。普段、運動もしていない。

 体験レッスンに誘ってくれたビンタロ在住の池本円さんは、高校3年間がバドミントン部で、2年前から特にバドミントンに「ハマって」いる。ビンタロのクラブで子供と一緒にレッスンを受けたり、会社のバドミントン・クラブや「ゆるバド」というサークルでプレーしたり、試合観戦に出かけたりと、「バドミントン活動」に忙しい。

 池本さんの長男、誉(ほまれ)ソラー君(10)と二男の遍(あまね)チュクッ君(8)のバドミントン歴は約1年半になる。三男の丞(たすく)ロメ君(4つ)は、トミー選手が2023年12月にキッズクラブを開設した時にバドミントンを始めた。

プライベート・レッスンのコーチをしてくれるトミー・スギアルト選手
プライベート・レッスンのコーチをするトミー・スギアルト選手

 コートに現れたトミー選手はまったく偉ぶった所のない気さくな人で、バドミントンの楽しさを「ゲーム性、遊びの要素が大きい所」と語る。そのほかに、「友達が出来ること」「道具を使う面白さ」「他の競技にはないスピード」を挙げた。バドミントンは日々、状況が違うので、「飽きることはない」そうだ。

 父親が元世界チャンピオンというバドミントン一家に生まれ育ち、4〜5歳ごろにバドミントンを始めた。父の指導は厳しかったと言うが、自分のするコーチ方法は「その人の能力に合わせて」で、特に子供に対しては「辛抱強くないとダメ。子供の性格をつかみ、その日の気分も見ながら、まずは楽しい気持ちにさせること。そうなって初めて、『走ろう』『打とう』という私の指導を聞いてもらえる」と語る。

 軽いウォーミングアップの後に、まずはラケットの持ち方から教えてもらう。「手を握る」「挨拶」のように、ラケットを縦に持つ。それから、強く振る。コーチが振ると、「シュッ」と風を切る鋭い音がする。しかし、私が振っても何の音もしない。何回か振ってみてようやく、少しだけ空気をつかんだ手応えと共に、「ひゅっ」と、かすかな音がした。

シャトルを打ち返す練習
シャトルを打ち返す練習

 続いて、いきなりコートに出る。ネットの向こうから次々に投げられるシャトルを打ち返す練習だ。「動かなくていい。ただ打つだけでいいから」と言われる。その言葉の通り、目の前の打ちやすい絶好の場所へ、シャトルがゆっくりと飛んで来る。ラケットを振って当てるだけだ。ぽーんと当たって、高い弧を描いてネットの向こうへと飛んで行く。ラケットの持ち方や振り方が正しいかどうかはわからないのだが、とりあえずは当たる。10回ほど打ち返した最後には、コーチとのラリー。これも非常に打ちやすい位置に返してくれるので、結構、続く。楽しい!

 「まずは素振り100回」とか「反復横跳び」とかではなく、いきなり打たせてくれるのが楽しい。また、芯に当てるのが難しいボールと違って、ふわっと飛んで来るシャトルは、意外に当てやすい。子供のころ、ネットもなしのただの「羽根つき」だったが、バドミントンで遊んだ楽しさがよみがえる。下手同士だとシャトルがどこへ飛んで行くかわからないのだが、コーチとの練習では、過たず目の前に来るシャトルを打つだけで良い。そして、ラケットを思い切り振ってシャトルに当てて遠くへ飛ばす、という行為が、スカッとして気持ち良い。「ストレス解消にもなる」と池本さん。大した運動量ではないのに汗がだらだら出て爽快だ。

 大人になって、競技としてのバドミントンを見るうちに、「俊敏さが要求される激しいスポーツだ」と、知らず知らずのうちにハードルが上がっていた。しかし、実際にやってみると、「遊びの要素が大きい」というトミー選手の言葉の通りだ。バドミントンの「入口」は意外に広く開かれていることを知る。実は、子供でも中高年でも可能だ。

 子供たちはどうか。この日、最初はコートで泣いてぐずっていた丞君も、ラケットを振ってシャトルに当てているうちに、笑顔になった。「バドミントンは、打てるとうれしい。トミー・コーチは、優しくて、教えるのが上手で、バドミントンが上手な所が好き」と言う。池本さんは「とても我慢強く、上手に誘ってくれるだけでなく、子供相手でも基礎からしっかりやってくれるので、きれいなフォームになった。感謝している」と語る。

構える丞君
ラケットを構える丞君

 一方、もう少し上級者の誉君は、サブコーチと試合形式の練習に臨んだ。トミー選手は背後で「ホマレ—、スマンガット(頑張って)」と励ます。試合が済んだら間髪を入れず、「打ったらすぐに足を動かし始めるように」といったアドバイスを与えていた。

 練習の合間に、トミー選手とサブコーチによる「スマッシュ」と「レシーブ」を見せてもらった。激しいかけ声と共に、すごいスピードでコートにたたき込まれるスマッシュを、ことごとく拾っていく。当然とはいえ「さすがだ」と感心する。

 最後に、池本さんはサブコーチと、遍君がトミー選手とペアを組み、ダブルスの試合を始めた。プロ選手2人が入るので、迫力ある試合になる。一進一退で、デュースの連続。やる方も、見ている方も、これは楽しい。遍君は緊張したようだったが、「トミーの邪魔はしたくない」と頑張ってプレー。トミー選手は、点が取れても取れなくても、うまくいっても失敗しても、笑顔で「トス」(ハイタッチ)。勝敗だけにこだわらず、前向きにモチベーションを保ち、楽しい気分にさせていた。

試合中に「トス」を交わす、トミー選手と遍君
試合中に「トス」を交わす、トミー選手と遍君

 世界レベルのバドミントン選手のコート上での姿を間近に見られるだけでなく、ラリーや試合の相手までしてもらえる。バドミントンを何も知らない私でも感激するし、特に子供にとっては、得がたい経験になるだろう。「インドネシアならでは」と言える体験だ。2時間のコーチ代は、コート代と合わせて136万ルピア(4人で割って、1人34万ルピア)だった。プロ選手に習うにしては破格の金額と言えるだろう。

 池本さんは「バドミントン・コートはあちこちにあるし、コーチ代も安い。初期コストは、ほかのスポーツよりもかからないかもしれない。バドミントンは経済層に関係なく、庶民からお金持ちまでやっているのと、民族宗教に関係ないのが良いですね。バドミントンを通して、いろんな人たちとつながれたのが貴重」と語る。

 トミー選手は残念ながら渡米が決まっており、この日が最後のプライベートレッスンだった。しかし、レベルの高いインドネシア人コーチはほかにもおり、習うことは可能だ。問い合わせは下記まで。

Splish Splash(ビンタロのバドミントン・キッズクラブ、2〜10歳)
https://www.instagram.com/splishsplashid?igsh=MTc3djZsbzNjdGxuZA%3D%3D

池本さん(メール:mandalika339@gmail.com

Splish Splashのキッズクラブ
Splish Splashのバドミントンのキッズクラブ