「ランガ&チンタ」 一世を風靡した「チンタに何があったのか?」をリメイク 【インドネシア映画倶楽部】第96回

「ランガ&チンタ」 一世を風靡した「チンタに何があったのか?」をリメイク 【インドネシア映画倶楽部】第96回

2025-10-03

Rangga & Cinta

一世を風靡した映画「チンタに何があったのか?」が生まれ変わった。新作は、大ヒットしたメリー・グスラウの曲を歌って踊るミュージカル仕立てになっている。当時を知る人には背景も音楽も懐かしいし、知らない人には、当時の話題作がどんなだったのかを改めて映画館で知るチャンスだ。

文と写真・横山裕一

 大ヒット作「チンタに何があったのか?」(Ada Apa dengan Cinta?/2002年作品)の23年ぶりのリメイク作品。前作は日本でも2005年に「ビューティフル・デイズ」として劇場公開されているが、今回は前作を踏襲しながらも一部ミュージカル仕立てで制作されている。

 物語は女子高生のチンタと同じ高校に通う男子生徒ランガが主人公。校内での詩のコンクールでチンタは受賞の常連で、今回も誰もが彼女が最優秀賞に選ばれると思っていた。しかし、結果はランガという男子生徒が受賞した。親友4人と校内新聞の編集をしていたチンタは、ランガに受賞インタビューをとるため会いにいく。ランガはチンタの申し入れをにべもなく断り、2人は口論にまで至ってしまう。ランガの態度に怒り収まらないチンタだが、ランガが受賞した詩やランガが置き忘れた古い詩集を読むうちに、ランガの感性に惹かれていく……。

 オリジナル作品では、日本人でも知っている人が多いディアン・サストロワルドヨ(チンタ役)とニコラス・スプトラ(ランガ役)が演じていたが、同作品のヒットを通して、今や二人ともベテラン人気俳優として映画やドラマなどで活躍している。本作品では出演者が刷新されながらも、前述のチンタとランガの初めての出会い名シーンなど、オリジナルを彷彿とさせるほど踏襲された部分も多い。

 大きな違いはミュージカル形式で構成されていて、オリジナル作品で多用された、メリー・グスラウ(Melly Goeslaw)の数々の挿入歌を今回は登場人物が自ら歌い踊ることで感情の吐露が表現豊かに描かれている。その意味では引き続き、メリー・グスラウの印象深い名曲を前作とは違った形で楽しむこともできる。

 出演者は新世代で固められているが、時代設定はオリジナルと同じく2000年前後の頃とみられ、まだ携帯電話も一部の大人しか持っておらず、連絡手段は固定電話と手紙の時代が描かれる。詩が物語の重要なツールだけに、人が直接向き合って言葉で気持ちを伝えることの大切さが描かれる。時代模写としては今やなくなってしまったオレンジ色のバジャイ(3輪タクシー)やメトロミニ(乗合マイクロバス)が登場するのも懐かしい。

 本作品はオリジナル作品でプロデューサーだったリリ・リザ監督が自ら監督を務めていて、同監督の制作会社ミレス・フィルムズ(MILES FILMS)の創立30周年にもあたる。1997年の経済危機以降、壊滅的な状態に追い込まれたインドネシア映画界の再興に大きく貢献した同作品のリメイクは記念碑的な意味も持っているといえそうだ。(同じく映画界再興に寄与した作品「シェリナの冒険」(Petualangan Sherina/2000年作品)も同社の作品で、リリ・リザ監督によって続編が2023年に制作・公開されている)その意味で、冒頭の学校で歌い踊るシーンは「シェリナの冒険」を、またラストで全員が踊るシーンは同監督が韓国映画をリメイクした「べバス/自由」(Bebas/2019年作品)を思い起こさせるようでもあり、同監督のこれまでの作品がオマージュされているようでもある。

 マニアックな話をすると、作品冒頭の制作会社ミレス・フィルムズのクレジット映像では、30周年ということでリリ・リザ監督作品を中心とした過去作品の名場面が次々と紹介されるところも楽しめる。

 初めて観る方も、またオリジナル作品と見比べる方もそれぞれの楽しみ方ができる本作品を是非劇場で味わっていただきたい。

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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