イラスト・中島瑞穂
基本情報
正式名称は西パプア州ラジャアンパット県。県庁所在地はワイサイ(Waisai)。2003年に西パプア州ソロン県から分離した。980万ヘクタールの広大な領域に610個の島があり、そのうち住民がいる島は35だけだ。ほとんどの島には名前が付いていない。主な交通手段は海上交通。主な産業は観光、漁業、真珠養殖、鉱業など。
名前の由来
ラジャは「王」、アンパットは「4」。昔、この場所には4つの王国があったとされる。ウェワヤイ(Wewayai) を中心とするワイゲオ(Waigeo)王国(現在のワイゲオ島)、サマテ(Samate)を中心とするサラワティ(Salawati)王国(現在のサラワティ島北部)、サイロロフ(Sailolof)を中心とするサイロロフ王国(現在のサラワティ島南部)、リリンタ(Lilinta)を中心とするミソール(Misool)王国(現在のミソール島)。
また、ワイウォ(Waiwo)近くのチェマラ・サレオ村(Cemara Saleo)では、次のような話が語り継がれている。昔、村からボートで1時間ほど行った所にあるカリ・ラジャ(Kali Raja)に7つの卵があった。6つの卵が孵り、4人はワイゲオ島、ミソール島、サラワティ島、バタンタ島の王になった。1人はセラム島(Seram)に行き、あと1人は行方がわからなくなった。1つだけ孵らなかった卵は石になり、カリ・ラジャに祭られている。1年に1度、祭りが行われるほか、常に卵守が石を守っているという。
自然と自然保護
侵食が進む石灰岩の小山が海に点在する不思議な景観のほか、1000種類を超える魚がいるといわれる海の豊かさで知られる。ダイビングではマンタ、ピグミーシーホースなどが見られる。鳥の楽園としても知られ、オウムやインコ、サイチョウ 、カワセミなどのほか、この地域固有の極楽鳥を見ることができる。
豊かな自然を守るための取り組みの1つとして、2007年からラジャアンパットの自然保護区に入る観光客は自然保護料を支払うと定められた(外国人は100万ルピア)。ソロン空港向かいのメルディアン(Merdien)ホテルで手続きが可能。現地に入ってからでも登録オフィスがあるが、手続きに時間がかかることもあるため、ソロンで早めに済ませておく方が良い。自然保護料を支払うともらえる丸いタグは1年間有効。バッグやダイビング器材に付けられるようになっている。
観光旅行
豊かな自然が人気だが、旅の基本情報が少ないこと、高額であるという評判から、これまでは観光客のほとんどが欧米人の旅行者で占められていた。近年は雑誌やテレビで取り上げられるなど、インドネシア国内でも注目され始めている。
注意事項
携帯はシンパティ(Simpati)が最も通じる。しかし、ワイサイ以外ではほとんど通じないので、団体で行動する場合は無線の携帯が必須。マラリア蚊が多い(特に7〜8月)ので、マラリアに注意。帽子、サングラス、日焼け止め、軍手(山登りをする場合)必携。7〜9月の天候があまり良くない。
ワイサイ
ワイゲオ島に位置し、ラジャアンパットの中心の都市。とはいっても道は1本しかなく、メインの通りはワイサイビーチ沿いの通り。ワイサイビーチは地元では「WTC(Waisai TerCinta)」と呼ばれている。ホテルやワルンのほとんどがここに集中している。
港からワイサイ市内へ
下船してから100メートルほど歩くとゲートがあり、ゲートの向こうにオジェックやチャーター車が客待ちをしている。オジェックは2万ルピア、車は5万ルピア程度(要交渉)。(値段は2013年2月現在)
食事
ワルンは東ジャワ系が多く、ホテルの食事もインドネシア料理が主。地元の伝統食はサゴヤシのでんぷんを水飴状にしたパペダ(Papeda)、サトイモやキャッサバ、木の実、新鮮な魚やエビ、貝など。現金収入のある人は米を食べている。果物はバナナ、みかん類などがある。
ピナン
ビンロウジの実の噛みたばこ、ピナン(Pinang)が男女問わず愛好されている。通常は熟したピナンの実を使うが、ラジャアンパットでは、まだ青く、若い実を使用する。緑のピナンの実、シリーの花、石灰のセットを売る簡易スタンドは「ピナン・オジェック」と呼ばれる。「オジェック」は「交友関係」といった意味。知らない人とでも世間話をしながら、オジェックでピナンの皮をむく。繊維質のピナンを噛んで軟らかくし、そこへ石灰(Kapur)をまぶしたシリーの花を足すことによって、一気に面白い味になる。それとともに友好的な関係が結ばれていく。