Foufo
どっぷりしたジャワ・マドゥラ世界を巧みに展開させながら、宇宙人との交流を描くSFコメディー。笑える! お薦め!
文と写真・横山裕一
インドネシア映画としては珍しく、UFOや宇宙人が登場するSFコメディ作品。いかにも人形っぽい宇宙人の姿からも子供向け作品のようにもみえるが、内容的には大人も十分に楽しめ、大いに笑える。東ジャワ州州都スラバヤに近いマドゥラ島が舞台で、いかにもジャワ文化、マドゥラ文化臭い人々と宇宙人というミスマッチが絶妙で面白い。
物語の主人公はマドゥラ島のある村に住む男性ムスリム(人名)。鉄屑屋を営み、狭い家ながら母親をはじめ3人の兄弟姉妹家族が同居する大家族の家長だ。年老いた母親にメッカ巡礼をさせていないことで、普段から近所の住民たちに揶揄されている。15年待ってようやく母親が大巡礼できる権利を得たものの資金が足りず、ムスリムはなんとか銀行から工面しようと苦心していた。
そんなある晩、ムスリムは村はずれでUFO墜落に遭遇する。ムスリムは兄弟たちとともに気絶した宇宙人が乗った小型UFOを自宅へ持ち帰る。自宅で気づいた宇宙人に家族は皆驚き恐れるが、宇宙人が放った光線で母親の白内障があっという間に治ったのを見て親しみを持ち、フォウフォと名付ける。
フォウフォによるとUFOを再起動させて母船に帰るためには墜落の際に紛失した始動キーを作るための特殊な金属が必要だと言う。UFOのエネルギーは残りわずか、時間がない。ムスリムはこの金属を探す手伝いを始める。しかし一方で、母親の大巡礼のための資金を旅行会社に納める期限も近づきつつあった……。
監督は東ジャワ発の人気映画「ヨウィス・ベン」(Yowis Ben)シリーズや「5人の登山者たち」(Sekawan Limo)シリーズを手がけた、バユ・スカック監督。今回も宇宙人が登場するSFではありながら、ジャワ語やマドゥラ語を多用し、どっぷりとしたジャワ・マドゥラ世界を巧みに展開させている。宇宙人フォウフォもマドゥラ名物のサテ(串焼き)を気に入り、教えられたマドゥラ語を話したり、ムスリム家で夜は家族と雑魚寝、さらにはイスラム教徒の礼拝に興味を持つなど地元の生活習慣、さらには性質的にも同化していく様子は面白い。

またマドゥラ語の語感を活かしたテンポの良い会話も面白く、ムスリムの義兄弟が金のために鉄道線路をノコギリで切ろうとするシーンは圧巻の楽しさがある。諌めるムスリム、言うことを聞かない義兄弟、双方の言い合いに合わせて線路を切ろうとしたりやめたりと右往左往するもう1人の義兄弟。上映中、観客の笑いが長く続いたシーンでもある。
主人公ムスリムの家族描写もいかにも実際にいそうで、特徴的に描かれている。ものを頼むと「飯を食いたいから2万ルピアくれないか」が口癖の義兄弟や、家に金があると勝手に散財してしまう姉など。いずれもだらしない行為ながらもコミカルに温かく描かれ、つい笑ってしまう。
SFでありながらいかにもジャワ、マドゥラの人間臭い、楽しい作品を是非とも劇場で観て笑っていただきたい。スピルバーグ監督の名作SF「E.T」(1982年作品)をインドネシアで製作したらこうなるのではないかとも思える、インドネシア映画ならではのSF作品としてオススメの作品だ。

