Saat Aku Bersuara
女性に対する性暴力事件はインドネシアでも多発している。本作は、2020年にジャカルタで起きた性暴力根絶を訴えるデモなどの実話を基に制作された。当事者の女性たちが声を上げ、家族らの周囲が次第に理解を示していく様子に胸を突かれる。
文と写真・横山裕一
実際に被害に遭った女性が自ら声をあげて、性暴力根絶を訴える実話を元にした物語。女性に対する性暴力は不公正なまま事件がうやむやに終わってしまう場合が多く、被害者でありながら社会的にさらに弱い立場に陥りがちな現実の中で、女性の権利を守ること、またそのために声を上げる勇気の大切さ、周囲の理解など多くを考えさせられる作品。
物語の主人公は有能な若手女性弁護士のナディア。ナディアは婦女暴行の罪に問われた被告弁護団に参加した際、証拠不十分で被告が無罪判決を受けたことにわだかまりを抱く。そんなある夜、路上強盗にあった親友を助けようとしたナディアが逆に、覆面の男2人から性暴行を受けてしまう。男たちの行方も知れず、訴えようにも物的証拠もない。
悲しみ、トラウマの苦しみ、さらには何もできない悔しさ。自室で塞ぎ込む日々を過ごすうち、テレビニュースで婦女暴行事件が報じられるのを見てふと思い立つ。自分が声を上げなければ、事件は続くばかりだ。ナディアはブログで自分も性暴力を受けたことを告白し、性暴力撲滅を訴えた。すると親友だけでなく、かつてナディアが立ち会った裁判での性暴力被害者の女性や、かつて妹が性暴力を苦に自殺した過去を持つ検事が現れ、彼女の活動に賛同する……。
本作品では2020年にジャカルタで実際にあった女性への性暴力撲滅を訴えたデモなどの活動を元に制作されている。女性に対する性暴力はニュースで頻繁に報じられるように、インドネシアでも多発している。加害者は見知らぬ者だけでなく、家族や親など多岐にわたるが、結果的に泣き寝入りや作品内でもあるように、証拠不十分や不正などで法的に裁かれずに終わってしまうケースも多い。
本作品ではこうした被害者女性を通して、女性に対する暴力の撲滅、社会的公正さの実現を強く訴えている。またそれだけでなく、女性が受けたトラウマなどの精神的苦痛の深さ、被害者でありながら社会的に蔑ろにされてしまう現状も丹念に描かれ、問題の深刻さを浮き彫りにしている。
それだけに、女性が自ら立ち上がる勇気の大切さも訴えかけられていて、デモで女性たちが次々と声を上げるシーンや、世間体を気にしがちな家族が理解を示していくシーンは胸を突かれる。
こうした問題は作品を観るだけでなく、そこからどうすべきかを一人一人が考え、認識し続けることが大切であり、是非とも劇場で触れて問題意識を育んでいただきたい。

