「チレボン料理」として最も有名なのは「ナシ・ジャンブラン」(nasi Jamblang)だろうか。Jamblangは、紫色の実のなる「ムラサキフトモモ」という木の名前、と辞書にある。その木の葉で包んだご飯なのかと思ったら、「チレボン近郊のジャンブラン村で発祥したご飯」、というのが起源でした。
ナシ・ジャンブランの発祥は、オランダ植民地時代までさかのぼる*。当時はビニール袋もなかったので、村にたくさんあったチークの木の葉を使い、ご飯、そしてテンペや卵といったおかずを包んだのが始まりだそう。つまり、ジャンブラン村のお弁当。チークの葉は腐敗防止のほかに、ご飯への香り付けにもなった。日本の笹の葉ずし、柿の葉ずしといった感覚か。
葉脈のはっきりした、ちょっとゴワゴワした緑の葉を開く。そこに包まれている、一口サイズとは言わないが、三口サイズぐらいのほんのぽっちりのご飯の周りに、好きなおかずを好きなだけ取り合わせる。このご飯の少量ぶりがナゾなのだが、1個で足りなければ、もう1個、2個、と、追加はできる。
おかずは、港町チレボンらしいシーフードから、肉、卵、野菜など20種類ぐらいが並ぶ。代表的なおかずをいくつか挙げると、ぷっくり膨らんだ小ぶりのイカの墨煮、ワタリガニの卵のペペス(バナナの葉を使った包み焼き)、塩のカタマリのようなイカン・アシン(塩魚)、一口大のジャガ芋を串に刺したサテ、うずら卵のサテ、甘みのあるサンバル・ゴレン、テンペ・ゴレン、豆腐などなど。
私の好物は、イカの墨煮(cumi hitam、イカのうまみたっぷり)、ジャガ芋のコロッケ(普通のプルクデルより中味が詰まっておらず軽い食感。スナック感覚が強いおかず)、うずら卵のサテ(卵好きなもので)。
全体的に見て「ほぼ茶色」なインドネシア料理だが、ナシ・ジャンブランは、葉の緑色に、ご飯の白、イカの黒、サンバルの赤、豆腐の黄などがパレットの上の絵の具のように置かれ、意外に彩り豊か(取るおかずによってはもちろん、茶色一色になる場合もあります)。
少量ずつ、いろんなおかずを試せるのは楽しい。心のおもむくままに好きなだけ(5〜6種類)おかずを取っても、値段は3万〜4万ルピアぐらい。
おかずはなくなったら終了で、人気のあるおかずはあっという間に売り切れるので、できれば朝、遅くとも昼までには行くべし。
チレボンの「三大ナシ・ジャンブラン」は「マン・ドゥル(ドゥルおじさん)」、「イブ・ヌル(ヌルおばさん)」、「プラブハン(港)」33軒。チレボン在住の賀集由美子さんのお薦めは、あまり辛くなくて食べやすい「プラブハン」。
●Nasi Jamblang Pelabuhan “Ibu Sumarni”/Jl. Yos Sudarso No.1 (Pintu Pos 1 Pelabuhan), Cirebon/ Tel : 0852-9539-2686/6:00-14:30
*参照