「#自宅待機 (#dirumahaja)」 映画の特別ネット配信で気分転換 【インドネシア映画倶楽部】第25回 番外編

「#自宅待機 (#dirumahaja)」 映画の特別ネット配信で気分転換 【インドネシア映画倶楽部】第25回 番外編

2020-03-29

新型コロナウイルスの感染拡大による自宅待機要請の中、人気俳優ニコラス・サプトラがプロデューサーとして参加している制作会社「タナヒル・フィルム」が、特別ネット配信を実施した。インドネシア映画、インドネシア文化を味わって心豊かに気分転換を図っていただきたい。

文・写真 横山裕一

 新型コロナウィルスの感染拡大で、ジャカルタが緊急対応として自宅待機要請が始まって1週間余り。同時に映画館を含めた娯楽施設も閉鎖となり、同稿も開店休業となってしまった。

 ソーシャルメディアでは「#自宅待機(#dirumahaja)」と言うハッシュタグが飛び交い、ここ数日では自宅待機に対する飽きと願望も込めてか「#明日まで(#untiltomorrow)」の記述が増えてきている。

 そんな中、友人からありがたい連絡が来た。2020年1月に公開されたドキュメンタリー映画「あらゆるもの(SEMESTA)」の制作会社タナヒル・フィルムが、自宅待機の人々用にスペシャルネット公開を実施しているのだ。スケジュールとラインナップは下記の通り。

 タナヒル・フィルム(TANAKHIR FILM)といえば、映画「チンタに何があったのか」で人気の俳優、ニコラス・サプトラがプロデューサーとして参加している制作会社。ラインナップは同社が制作した過去のドキュメンタリー短編作品や長編作品、それに最新ドキュメンタリー映画の8本。

タナヒル・フィルム スペシャルストリーミング
作成した動画を友だち、家族、世界中の人たちと共有
bit.ly

3/21-27   ロックンロール(ROCK’N ROLL /2015年作品)
3/28-4/3   ロジャー(ROJER /2015年作品)
4/4-10   ワメナより愛を込めて(CINTA DARI WAMENA /2013年作品)
4/11-17   森の巨象を守れ(SAVE OUR FOREST GIANTS /2016年作品)
4/18-24   チンタに何があったのか 2(ADA APA DENGAN CINTA 2 /2016年作品)
4/25-5/1   編み込まれた小径(WOVEN PATH /最新作)
5/2-8   12人の夫人を持つ男(A MAN WITH 12 WIVES /2017年作品)
5/9-15   スンバの女性(PEREMPUAN TANA HUMBA /最新作)

 1本目「ロックンロール」はすでに期間が過ぎているが、「Rock’n Roll Indonesian Friendship」で検索すればユーチューブで鑑賞できる。18分の短編青春映画だが、若い男女の自然な会話、雰囲気がとても心地よく、気持ちの変化も伝わる小気味良い作品だ。

 特にこの作品がいいのは、「ジャカルタの街」を感じ取れるところだ。主人公の2人がかつてよく行ったお粥の屋台やアボガドジュース屋などを巡る、ちょっとしたロードムービーにもなっている。

 場所も中華街のコタから渋滞にあいながら、ブロックMのバスターミナルを通って南下していく。途中、今は懐かしいオレンジ色のバジャイ(三輪オートタクシー)や道端でウクレレを弾く少年、歩道での物売りなど、ジャカルタならではの「文化的」風景も堪能できる。

 高級ショッピングモールや高層ビルではない、本来のジャカルタの人々の「等身大」の風景、様子が味わえる。この作品を観ると、つい街歩きに出かけたくなってしまうのだが、それは今しばらくの辛抱だ。

 現在、ストリーミング中の作品「ロジャー」は、「チンタに何があったか 2」内でも登場した、ジョグジャカルタの「ペーパームーン・パペット・シアター」とのコラボレーションによる人形劇。何かじわじわと伝わってくるものがある。

 筆者が最も期待しているのは、タナヒル・フィルム最新ドキュメンタリー作品「編み込まれた小径」と「スンバの女性」の2本。いずれも東ヌサトゥンガラ州スンバ島が舞台だ。

 偶然、筆者がつい最近スンバ島を訪れたためでもあるが、おそらくこの作品を通しても、圧倒的に美しい丘陵地帯や海、星空といった自然風景、現地の人々が営む独特の文化・風習と人柄を堪能できるかと思う。

 東京などでも自宅待機要請が始まったように、世界的に行動が制約され、不自由な日々を過ごす人が多いかと思うが、そんな中、今回のスペシャルストリーミングは制作会社タナヒル・フィルムの「#自宅待機」への粋な計らいだ。

 ここ数日、インドネシアでも政府発表として、毎日約100人の新感染者、約10〜20人の死亡者が増え続けていて、事態の長期化が予想される。

 スペシャルストリーミングが終了した頃はレバラン(断食明け大祭)直前。それまでに終息傾向となっていることを祈りつつ、ストリーミングでインドネシア映画、文化を味わって心豊かに気分転換を図っていただきたい。

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横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
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