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文・写真 横山裕一

 新型コロナウィルスの感染拡大で、ジャカルタが緊急対応として自宅待機要請が始まって一週間余り。同時に映画館を含めた娯楽施設も閉鎖となり、同稿も開店休業となってしまった。

 ソーシャルメディアでは「#自宅待機(#dirumahaja)」と言うハッシュタグが飛び交い、ここ数日では自宅待機に対する飽きと願望も込めてか「#明日まで(#untiltomorrow)」の記述が増えてきている。

 そんな中、友人からありがたい連絡が来た。2020年1月に公開されたドキュメンタリー映画「あらゆるもの(SEMESTA)」の制作会社タナヒル・フィルムが、自宅待機の人々用にスペシャルネット公開を実施しているのだ。スケジュールとラインナップは下記の通り。

 タナヒル・フィルム(TANAKHIR FILM)といえば、映画「チンタに何があったのか」で人気の俳優、ニコラス・サプトゥラがプロデューサーとして参加している制作会社。ラインナップは同社が制作した過去のドキュメンタリー短編作品や長編作品、それに最新ドキュメンタリー映画の8本。

<タナヒル・フィルム スペシャルストリーミング>

https://bit.ly/tanakhirfilms

3/21-27   ロックンロール(ROCK’N ROLL /2015年作品)
3/28-4/3   ロジャー(ROJER /2015年作品)
4/4-10   ワメナから愛を込めて(CINTA DARI WAMENA /2013年作品)
4/11-17   森の巨象を守れ(SAVE OUR FOREST GIANTS /2016年作品)
4/18-24   チンタに何があったのか2(ADA APA DENGAN CINTA 2 /2016年作品)
4/25-5/1   編み込まれた小径(WOVEN PATH /最新作)
5/2-8   12人の夫人を持つ男(A MAN WITH 12 WIVES /2017年作品)
5/9-15   スンバの女性(PEREMPUAN TANA HUMBA /最新作)

 1本目「ロックンロール」はすでに期間が過ぎているが、「Rock’n Roll Indonesian Friendship」で検索すればユーチューブで鑑賞できる。18分の短編青春映画だが、若い男女の自然な会話、雰囲気がとても心地よく、気持ちの変化も伝わる小気味良い作品だ。

 特にこの作品がいいのは、「ジャカルタの街」を感じ取れるところだ。主人公の二人がかつてよく行ったお粥の屋台やアボガドジュース屋などを巡る、ちょっとしたロードムービーにもなっている。

 場所も中華街のコタから渋滞にあいながら、ブロックMのバスターミナルを通って南下していく。途中、今は懐かしいオレンジ色のバジャイ(三輪オートタクシー)や道端でウクレレを弾く少年、歩道での物売りなど、ジャカルタならではの「文化的」風景も堪能できる。

 高級ショッピングモールや高層ビルではない、本来のジャカルタの人々の「等身大」の風景、様子が味わえる。この作品を観ると、つい街歩きに出かけたくなってしまうのだが、それは今しばらくの辛抱だ。

 現在、ストリーミング中の作品「ロジャー」は、「チンタに何があったか2」内でも登場した、ジョグジャカルタの「ペーパームーン・パペット・シアター」とのコラボレーションによる人形劇。何かじわじわと伝わってくるものがある。

 筆者が最も期待しているのは、タナヒル・フィルム最新ドキュメンタリー作品「編み込まれた小径(WOVEN PATH)」と「スンバの女性(PEREMPUAN TANA HUMBA)」の2本。いずれも東ヌサトゥンガラ州スンバ島が舞台だ。

 偶然、筆者がつい最近スンバ島を訪れたためでもあるが、おそらくこの作品を通しても、圧倒的に美しい丘陵地帯や海、星空といった自然風景、現地の人々が営む独特の文化・風習と人柄を堪能できるかと思う。

 東京などでも自宅待機要請が始まったように、世界的に行動が制約され、不自由な日々を過ごす人が多いかと思うが、そんな中、今回のスペシャルストリーミングは制作会社タナヒル・フィルムの「#自宅待機」への粋な計らいだ。

 ここ数日、インドネシアでも政府発表として、毎日約100人の新感染者、約10〜20人の死亡者が増え続けていて、事態の長期化が予想される。

 スペシャルストリーミングが終了した頃はレバラン(断食明け大祭)直前。それまでに終息傾向となっていることを祈りつつ、ストリーミングでインドネシア映画、文化を味わって心豊かに気分転換を図っていただきたい。

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