編集部のHとQが引っ越しを計画中です。ジャカルタのアパートでは最安価格帯ではないかと思われる、「月1000ドルぐらい」のアパートを探すことになりました。果たして、良い物件は見つかって、HとQの引っ越しは成功するのか?
アパートの条件
・月1000〜1300ドルぐらい
・2ベッドルーム
・物が多いため、できるだけ広い部屋(H)
・ベランダがある(Q)
・できるだけ静か
・スディルマン通りにある会社へのアクセスが許容範囲内
まずは「タムリン・レジデンス」。ここは月1000ドルぐらいで、オーナー物件を交渉すればそれ以下にもなる、手ごろなアパート。「1000ドルぐらいのアパート」と言うと、真っ先に候補に挙がる場所でしょう。
グランド・インドネシアへ歩いて行ける便利な立地。そして、「ここはベランダが広いのがいいんだよ〜!」と、ベランダへのこだわりを見せるQ。たばこを吸う人には、一服する場所は重要なのです。

ベランダは確かに、十分な広さ。現在のアパートのベランダは、狭い中にさらに洗濯機が置かれていて、出入りもしにくい状態です。ここだと洗濯物も十分に干せるし、椅子やテーブルを並べてのんびりできそうです。ベランダでジャカルタの街をぼんやり見下ろしながら夕方の時を過ごす自分……というのが完璧にイメージできました。


洗濯機はどこに?と見ると、室内を区切った「小部屋」兼「物置」にうまく置かれています。ベランダへ出て洗濯するより使いやすそうです。
ただ、2ベッドルームといっても、無理やりに2ベッドルームにした感のあるアパートなので、部屋の狭さはいかんともしがたいのが難。「うーん、私の物、全部置けるかなぁ……」と、物の多いH。現在の部屋の収納が良くなく、食器棚から本棚まで買いそろえてしまったので、これらの家具を全部入れると、相当、狭くなりそうです。


「せっかく引っ越しするなら、今より条件の良い所に移りたい」というのが当然の希望ですが、ここだと、今のアパートとあまり変わりません。あと、物件によっては、壁にひびが入っていたり、シロアリ被害があるのも要注意です。
部屋は結構、余っているようです。「子供が独立したので、子供が使っていた部屋を貸したい」と入居者を探しているオーナーさんともロビーで会い、部屋を見せてもらいました。
隣の「コスモ・テラス」もタムリン・レジデンスと似た雰囲気です。アパートから見える、屋上に作られた「一軒家」風の家をうらやましく眺めました。ジャカルタで「一軒家」というぜいたくは、地面の上からビルの屋上へと移って行っているのでしょうか。

ここだけに限らず、物件はオーナーの趣味やインテリアによって、まったく雰囲気が変わります。アクアリウムが作り付けてあったり、部屋ごとに違う壁紙が貼ってあったり、「どうすんの?」的な部屋もあれば、ほぼ白一色にまとめた、センスの良い部屋もありました。時間はかかりますが、1件ずつ見るしかないでしょう。

Thamrin Residence
Cosmo Terrace
+ ・ベランダが広い
・便利な立地
– ・狭い
お次は、クニンガンの「アストン・ラスナ」と「タマン・ラスナ」。実は、Hはジャカルタに来た当初、タマン・ラスナに住んでいました。その当時(1999年)でもタマン・ラスナは古いアパートで、住んでいるうちにいろいろ不具合が出てきたため、新築のアパートに移ったのでした。改めて訪れて、その年季の入りようにはびっくり。壁はひびだらけで、メンテはされていない様子。1000ドル以下で安いのですが、うーん、これはどうでしょうか……。

アストン・ラスナはタマン・ラスナと同じ敷地で同じ作りですが、さすがにちゃんとメンテナンスされています。古いアパートの特徴は、広々していて、メード部屋があること。メード部屋は今ではほとんどメードの住み込み用としては使われていないでしょうが、洗濯機を置いたり、物置スペースに利用できるので、収納に余裕が出来ます。大体の場合、ここにウォーターヒーターも置かれていて、マスターベッドルームのバスルームはバスタブ付きです。ベランダも広々。値段は1300ドルぐらいと、ちょっと高めになります。


ボロボロのタマン・ラスナで、1件、面白い部屋がありました。部屋の奥に、1部屋ぐらいもの広さのベランダが付いています。テーブルや椅子、バーベキュー台が置いてあり、確かに、パーティーをやるのに良さそう。しかし、無駄に広いスペースです。隣の部屋では、このベランダに屋根を付けてブーゲンビリアの生け垣で周囲を覆い、「グリーンハウス」、「サンハウス」のようにしていました。


「ここは大きく改造したら、面白い部屋になりそうだけど……」とQ。お金と時間があれば、すてきに改造して、人に貸すのもあり?
Aston Rasuna
+ ・広い
・バスタブあり
– ・値段がやや高め
Taman Rasuna
+ ・値段が安い
・広い
・バスタブあり
– ・古くてメンテが悪い



南ジャカルタ区役所の奥にあるキンタマーニは、広い道路に面しておらず、奥まっているため、落ち着けます。遠景に高層ビル群、手前には昔ながらの住宅地(カンプン)や緑の広がる、素晴らしい眺め。バリ風をコンセプトにしたアパートは開放的な、変わった作りで、リゾート地にいるようです。残念ながら、ここは人気があって、なかなか空き部屋がないとのこと。空いているペントハウス(3ベッドルーム)だけ、試しに見せてもらいました。



リビングから2階が吹き抜けになっており、広々としたダイニング、キッチン、ベッドルームに、たくさんの部屋や共有スペースがあります。大家族はもちろんのこと、かなりの人数が暮らせそうです。社員寮や、社員の住居兼オフィスにするという手もありそうですが、今はそんな共同生活は流行らないのかな? 後ろ髪を引かれながら、後にしました。
Kintamani Kondominium
+ ・開放的な住空間
・緑に囲まれて落ち着ける
– ・空き部屋が少ない
・やや予算超

あちこち部屋を見て回っていると、運転手のT君が「プルマタヒジャウに500万ルピアのアパートがあります」と言う。あまりの安さに半信半疑だったのですが、電話で改めて聞いてくれて、「値下げ交渉も可、らしいです」。よし、見に行こう!と行ってみました。
こんな場所にこんなアパートがあったとはまったく気付かない、という場所にありました。日本の団地風に2棟が立ち、1階にレセプションとずらっと並んだメールボックス。窓の付いたエレベーターで上に上がります。
部屋に入ると、一緒に行ったインドネシア人記者のPは「ジュレック(汚い)!」の一言で片付けていましたが、QとHは「おお〜っ!」と色めき立ちました。何だか懐かしさのこみ上げてくるアパートなのです。天井が丸みを帯びている廊下、窓の鉄格子など、レトロ感がいい味を出しています。
部屋の外には体育館風の厚いガラスブロックがはめ込まれていて、ドアの横から、廊下にぼんやり灯りの漏れる仕組み。



「これは、うまく改造したらパリのアパルトマンみたいになるよ」とQ。ただ、相当に手をかけて全面改装をしないといけなさそう。
急速に変わっているジャカルタで、ここには昔の時間が流れている、時間が止まっているような……と感じました。ジャカルタの地面に根差して暮らすなら、とても良さそうなアパートです。フリーランスの文筆業とかであれば、ここに居を構えれば、いろいろインスピレーションも浮かんできそうです。一応、アパートなので、キッチンも付いていて、コスに住むよりは便利なのでは。


「大改造すれば、ここはいいよ」「もっと若ければ、ここに住むのになぁ」と2人でつぶやきつつ、ここを後にしました。(つづく)
Permata Eksekutif
+ ・安い
・レトロ感が良い味
– ・古い
・水回りが厳しい
・大改造が必要



