bullet09_map文・写真…鍋山俊雄

 最近、報道を賑わしているバスキ・チャハヤ・プルナマ(通称アホック)・ジャカルタ特別州前知事の出身地として知られるのが、ブリトゥン島。元々はパレンバンのある南スマトラ州の一部だったが、2000年に分離し、バンカ・ブリトゥン州として独立した。バンカ島とブリトゥン島の2つの大きな島が同州の中心だ。

 バンカ島、ブリトゥン島のそれぞれに、錫(tin、インドネシア語ではtimah)や、カオリン(kaolin=磁器などの材料)の鉱床があり、発掘サイトには水が溜まり、幻想的な青い湖になっている場所がいくつかある。

 私は両方の島に行ったことがあるが、どちらも、ジャカルタから飛行機で約1時間という手軽な距離にある。

 インドネシアの映画『ラスカル・プランギ』の舞台となったのも、ブリトゥン島だ。同島の小さな小学校の子供たちを描いた映画で、撮影場所として使われた海岸が島の北部にある。ブリトゥン島の中心地タンジュン・パンダン(Tanjung Pandan)から車で1時間半ほど北に上った、北端のタンジュン・ティンギ(Tanjung Tinggi)という海岸である。子供たちがこの海岸で遊んでいて虹に見とれるシーンで、先生が子供たちに「ラスカル・プランギ(虹軍団)ー」と呼びかけている。大きな石のごろごろした海岸が、景勝地の1つとして人気がある。
nabbe09_Tanjung Tingg01
 海岸から一番近い所に宿を取った。場所柄、中心の街から外れているため、辺りには公共交通機関はまったくない。海岸へ行くには車チャーターか徒歩しかない。地図で見ると大した距離ではなさそうなので、歩いて行くことにした。

 試しに、ホテルのスタッフに、「歩いてどれぐらいかかるか」と聞いたら、しばらく考えてから「10分ぐらいか」との答え。大したことはないと歩き始めたが、行けども行けども着かず、たっぷり30分以上は歩いた。余談だが、ここだけではなく、インドネシア人は基本的に歩かず、オジェックやベチャなりを使うことが多いので、「歩いて何分かかる?」との質問に対して正確な答えが返ってきたことはあまりない。

 タンジュン・ティンギにはお土産物屋も出ていて、インドネシア人観光客で賑わっていた。海岸には、切り立った大きな岩がごろごろしている。しかしながら、表面にはごつごつした所がなく、丸みを帯びた岩石群が、何か大きな生物の群のように、砂浜に、そして沖の波間に見え隠れしている。バンカ島にも同様の海岸があるので、この地域の特徴なのだろう。
nabbe09_Tanjung Tinggi03
 ちなみに、ここから北上した所、インドネシア領海の北端にある大ナトゥナ島(リアウ諸島州)にも、似たような大きな岩群がある。ここについては、また、同州編でお話したい。

 バンカ・ブリトゥン州にはマレー系が半分以上のほか、中華系が3割近くと多いことから、街に出ると、中華系の建物やレストランが目に付く。運転手に連れて行ってもらった夕食、翌日の昼食、いずれも中華系のレストランだった。
nabbe09_Mie Belitung
 カオリンを採掘するサイトにも足を伸ばしてみた。真っ白な岩々に囲まれた窪みに水が溜まり、鮮やかな水色をしている。あいにくの曇り空にもかかわらず、水の色が不自然なほどに青々しているのが印象的だ。近くには、採掘したカオリンを加工する工場、掘り出したカオリン鉱石の貯蔵地があり、白い石山がいくつも出来ていた。

 運転手によれば、この島では昔、雷が鳴ると、人々は外を出歩くのを控え、家にこもったそうだ。地面に落雷すると金属成分が多いため、稲妻が地面を走って危険だったらしい。

 一方のバンカ島はブリトゥン島の西に位置し、南スラウェシ州の海岸に面している。昔はスマトラ島と一体だったのかと思えるような形をしている。

 バンカ島に行った際も、カオリンの発掘サイトが湖になった「Danau Kaolin Air Bara」という島南部にある場所へ、これまたあいにくの雨模様の中、空港のあるパンカル・ピナン(Pangkal Pinang)から約2時間かけて見に行った。2つの湖のうち、1つは鮮やかな水色、もう1つは、やや緑がかった黄緑色だった。
nabbe09_danau kaolin air beta2
nabbe09_danau kaolin air beta4
 運転手の話では、2015年ごろに旅行ブームになり、当時は多数の国内観光客が訪れたとのこと。当時ほどではないが、今でも観光客は多いそうで、実際、雨天にもかかわらず、私以外にも1家族が見に来ていた。

 パンカル・ピナンから北上した東側の海岸の多くの岬(tanjung)が観光開発されていて、ホテル・リゾートがいくつか出来ている。売りはやはり、石のごろごろした海岸で、それを景勝ポイントとしている。いくつかの岬を見て回ったが、個人的にはタンジュン・ペソナ(Tanjung Pesona)が最も石の見栄えが良く、印象に残った。

 街中には、この島の産出資源である、錫の採掘加工会社、その名も「PT. Timah (Persero)Tbk」があり、その本社近くには錫博物館(Timah Museum)もあった。見学を楽しみにしていたのだが、行ったのが祝日で、昼前に立ち寄ったところ、カギが掛かっていて、館内には入れない。閉館は午後4時と書いてあったので、午後3時過ぎに戻ってみたら、門はぴったり閉まっていた。結局、見逃してしまったことが心残りである。
 
 
インドネシア全34州の旅バックナンバー
#0 空港
#1 北スラウェシ州 インドネシアの最北端?
#2 アチェ州 インドネシア0キロ地点と津波の跡
#3 ブンクル州 英国の砦、スカルノの足跡
#4 南カリマンタン州 川の街の水上マーケット
#5 バンテン州 バンテン王国跡へ、列車の旅
#6 西カリマンタン州 春分の日に赤道へ 影がなくなった!
#7 南東スラウェシ州(上) 波の音しか聞こえない、ぜいたくな空間
#8 南東スラウェシ州(下) インドネシア最大級、ブトン王国の城壁都市。
 
 
鍋山俊雄(なべやま・としお)
インドネシアに在住期間は計10年になる。仕事でジャワ、カリマンタン、スマトラへの出張が多いことに加えて、「週末弾丸トラベラー」としてインドネシア各地を放浪し、全34州を訪問した。