サラックやコーヒー入り……インドネシアのクラフトビールの味は?

サラックやコーヒー入り……インドネシアのクラフトビールの味は?

2022-08-03

インドネシアのクラフトビールがにわかに面白くなってきた。「え、これがインドネシア産?」と驚くようなクラフトビールが出て来ている。インドネシアの今のクラフトビール事情を、クラフトビール専門店「ベンド」(Bend)オーナーのアアロン・グリーザーさんに聞いた。

アアロンさん
「ベンド」オーナーのアアロンさん
壁を飾る世界各地のビールのラベル
「ベンド」の壁を飾る、世界各地のビールのラベル。日本の物も

バリ島中心に、続々と醸造開始

 爽やかな水色やオレンジ色の缶に「Kura Kura」の大きな文字。最近よく目に付く「クラクラ」は、南国リゾート感を全面に打ち出した、バリ産クラフトビールだ。今の所、インドネシアのクラフトビールでは、これが一番メジャーな商品といえるだろう。大手スーパーやオンラインで簡単に買える。これに続き、他の醸造所も次々にオープン。「アイランズ・オブ・イマジネーション」(Islands of Imagination=IOI)、「アイランド・ブリューイング」(Island Brewing)などが次々にバリで醸造開始している。

 なぜバリ島ばかりなのか? バリは住民の大多数がヒンドゥー教徒であり観光業の島という、インドネシアでは特殊な環境にある。アルコールの需要がある上に、アルコール製造販売の許可取得が他地域に比べて易しい。このため、小規模醸造所の製造拠点がバリに集中することになる。しかし、ジャカルタ首都圏カラワチでオープン予定の醸造所もあるそうで、今後はジャカルタ周辺などにも製造拠点が広がっていくかもしれない。

 アアロンさんは「インドネシアは、自然の豊かな、生物多様性の国です。スパイスをはじめとした食品もバラエティーに富んでいます。(クラフトビール製造の)ポテンシャルは大きいと思います」と語る。

 ちなみに、インドネシアで初期に製造されたクラフトビール「ストーン」や「スターク」は「インドネシアン・スタイル」で、インドネシア人向けの甘口のビールだった。その後、インドネシアン・スタイルからインターナショナル・スタイルに変わったものの、質が伴わず、ようやく質も伴い始めたのは2021年ごろから、とアアロンさんは説明する。

IOIのビール
「アイランズ・オブ・イマジネーション」(IOI)のサラック入り(左)とジュルック・ニピス入りのクラフトビール

焼き鳥にはジュルック・ニピス味

 地ビールは、地元の特産品を原材料に加えて個性を出すことが多い。インドネシアのクラフトビールの場合、インドネシアらしさはあるのだろうか?

 残念ながら、実はまだ、そうしたビールは少ない。「地元の原材料は水だけ、という所もあります」とアアロンさん。しかし、最近、地元産品にこだわった醸造所も出て来ている。「アイランズ・オブ・イマジネーション」では、ジュルック・ニピス(ライム)やサラック、それに、コーヒー、米といった、インドネシアらしい食品を原材料に加えたクラフトビールを醸造している。

 「アイランズ・オブ・イマジネーション」のサラック入りとジュルック・ニピス入りのビールを試してみた。サラックは、サラックの皮の色を思わせるような、混濁した茶色。飲んでみると「黒ビールか?!」というぐらいに苦みが強い。しっかりしたコクはあるが、癖も強い。ジュルック・ニピスの方は、フルーティーな爽やかさと苦みのバランスが良い。苦みの中に柑橘系の酸味が感じられて、女性ウケしそうな味だ。

 一般的に言って、日本人の口に合うインドネシアのビールはどれなのだろうか? 

 「日本人の好きなビールは、クリーミーな泡立ちに、ドライな飲み口のクラシック・スタイルですよね。アサヒ・スーパードライとか、サッポロビールとか。インドネシアのビールでこれに当たる物と言えば、『アイランド・ブリューイング』です。ドライでパキッとしていて、とてもいいですよ」

 続いて、日本食に合わせたビールのお薦めを教えてもらった。

 「『アイランズ・オブ・イマジネーション』のジュルック・ニピスを焼き鳥に合わせるのはどうでしょうか。寿司には、『アイランド・ブリューイング』のすっきりしたピルスナーがいいと思います。こってりしたラーメンには、フル・フレーバーの『クラクラ』がお薦めです」

ベンドの冷蔵ケース
アアロンさんの一番のお気に入り、米オレゴン州「デシューツ・ブリュワリー」のクラフトビール

「ビアテンダー」にお薦めを聞く

 ベンドの冷蔵ケースには、インドネシアのクラフトビールだけでなく、世界のクラフトビールがずらりと並ぶ。ラベルはどれもおしゃれで、魅力的。しかし、見たことも飲んだこともない物ばかりで、どんな味なのかは想像するのみだ。これは「ジャケ買い」しかないのか?

 アアロンさんは「是非、『ベンド』の店へ来てください」と言う。ベンドには、バーテンダーならぬ「ビアテンダー」がいて、客の好みを聞いた上で、その人の口に合いそうな3〜4種類のクラフトビールをお薦めしてくれる。いくつかはショットグラスでの試飲(無料)も可能だ。「ベンドのゴールとは、『beer for your life』(あなたの人生のビール)を見付けるのをお手伝いすること」とアアロンさん。 

 ちなみに、ベンドにあるビールの中で、アアロンさんの一番のお気に入りは何かと聞くと、自身の出身地である米オレゴン州の「デシューツ・ブリュワリー」のビールを挙げた。「果汁はいっさい使ってないのに、まるでオレンジジュースみたいな味がします。柑橘、マンゴー、パイナップルといったクレイジーなフレイバーが全部します」。

 ビールを飲みたくなってきた!

ベンド

Bend
住所:Jl. Kemang Raya No.31, RT.13/RW.1, Bangka, Kec. Mampang Prpt., Kota Jakarta Selatan, Daerah Khusus Ibukota Jakarta 12720
営業時間:12:00〜21:00(金土23:00)
WA : 0811-3770-855

持ち帰りの場合の値段は「アイランズ・オブ・イマジネーション」サラック入り6万ルピア、ジュルック・ニピス入り7万ルピア

クラフトビールで東京へひとっ飛び クマンの「ベンド」
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