Bangsal Isolasi
「一度入ったら生きて出られない」と噂される独房とは? 妹の死の真相を突き止めようと、女性ジャーナリストが受刑者に扮して潜入する。深まる謎、暴かれる闇。インドネシアの刑務所を舞台にした、アクション&ホラー&サスペンスてんこ盛りのエンターテインメント作品。
文・横山裕一
インドネシア映画で初の女性専用刑務所を舞台にした作品との触れ込みのアクションスリラー作品。気が荒い女性受刑者による監獄での暴力アクション、「一度入ったら生きて出ることはない」と噂される不気味な雰囲気の独房にまつわるホラー、危険と背中合わせのなかでの謎解明のサスペンスミステリーとさまざまな要素がてんこ盛りの贅沢なエンターテイメント作品。
物語は、独房に入った受刑者の相次ぐ謎の死亡事故が起きる女性専用刑務所が舞台で、これを解明すべくジャーナリストのウェニが受刑者に扮して潜入するところから始まる。ウェニが潜入した背景には、妹がかつて独房で原因不明の死を遂げていたためでもあった。受刑者の中には好戦的なベラを中心としたグループがいた。ベラは他の受刑者に何かと絡んでは暴力をはたらき喧嘩をする。しかし、何故か懲罰として独房に入れられるのは相手の受刑者ばかりだった。そして新参者のウェニはベラに目をつけられてしまう。
一方、ウェニは刑務所で調理場を手伝う任務を命令され、そこで妹を覚えているという調理師と出会う。ウェ二は事情を聞こうとしたが、人目を気にして調理師は明朝話すと約束する。しかし、それ以降調理師は行方不明になってしまい、謎が深まっていく……。
テンポ良い展開と徐々に明らかになっていく刑務所内での謎、背後にうごめく組織犯罪の影といったミステリーの一方で、主人公ウェニと対立するベラとの迫力ある格闘シーンなど見どころは多い。最近のインドネシア映画の充実ぶりを窺わせる作品でもある。
インドネシアでは時折、実際の刑務所内での違法行為が明らかにされている。刑務官との金銭授受により得た携帯電話で刑務所内から活動指示をしていたとされるテロリストや、汚職で収監された国会議員にVIPルームのような豪華な部屋が用意されていたなど。何でもありのような実態が浮き彫りにされることから、今作品はもちろんフィクションではあるが、妙に現実味をも感じてしまう。
主な登場人物を演じるのは、主演のキンバリー・ライデルをはじめ、ウラン・グリットノ、ダフィナ・ジャマシルらいずれも人気女優たち。受刑者がこうも美人揃いなんてことはあるだろうかと思ってしまうほど豪華な顔ぶれだが、これも映画ならではのご愛嬌で、エンターテインメントに徹している一環だろう。
作品終盤には事態が二転三転する仕掛けも用意されていて、狭い組織内においても権力争奪をめぐる恐ろしさには根深いものがあることも感じさせる。これは実社会においても同じかもしれない。
上映時間は1時間16分とやや短めだが、凝縮された魅力を一気に楽しむことができる。勢いのあるインドネシア映画の快作を劇場で味わっていただきたい。(英語字幕なし)