中部ジャワとジャワ北岸
バティックの主な産地はジャワ島です。ジャワ島の「二大地域」(二大潮流)と言えるのが、中部ジャワ(ソロ、ジョグジャカルタ)と、ジャワ島北岸(チレボン、インドラマユ、プカロンガン、マドゥラなど)になります。
バティックは中部ジャワの王宮で発展し、その伝統文様は今に至るまで引き継がれています。中部ジャワの伝統文様は連続した幾何学模様が多く、伝統色は茶・紺・黒です。渋い色合い、かつ、格調高いクラシックな文様で、着るには無難です。長い年月で磨き抜かれた伝統文様は無駄がなく、完成されており、それぞれの文様に深い哲学のある点が魅力です。



ただし、禁制文様や文様の意味には少し注意する必要があります。昔は多くのバティック文様が「禁制文様」(王族や貴族のみが着用でき、それ以外の人たちの着用を禁じる柄)でしたが、現代では禁制文様はありません。ただ、少し配慮した方が良いシーンもあります(めったにないでしょうが、中部ジャワで王族などの「偉い人」に会う場合など)。
また、「求婚の時に着るバティック文様」「遺体を包むバティック文様」など、細かいシチュエーションで決められた特殊な伝統文様もあります。気にする人は少ないとはいえ、これも「わかる人はわかる」ので、できれば避けた方が良いでしょう。店の人に聞くか、上写真の「カウン」や「パラン」など、メジャーな伝統柄を選ぶ方が無難です。同じ柄といってもいろいろなアレンジがあり、バラエティーに富んでいます。

そういった禁制文様などについて何も気にする必要のないのが、ジャワ島北岸地域のバティックです。ジャワ島北岸地域は古代から交易港として栄え、外国の影響を強く受けてきました。「北岸様式」と呼ばれるバティックは、外国文化も取り入れた自由な模様で、色合いも鮮やかな物が多いです。色・柄のバリエーションが多く、「遊ぶ」ことができます。せっかく「一点もの」のバティックなので、「他の人とはかぶらない、珍しい柄」を、地味目な色合いで、選んでみてはいかがでしょうか。着ていると話題作りにもなります。


バティックの選び方
布は広げて見るのが基本です。見終わった布は、店の人がたたんでくれますので、遠慮なく広げてみましょう。広げてみないと全体の印象はわかりません。特にバティックは、いろいろな柄を一枚に入れ込んであることが多いので、広げてみて驚くことが多いです。好みの色や柄など、どれか気になるバティックに目星をつけたら、その辺りの束をまとめて取って、1枚ずつ広げてみましょう。服に仕立てたい場合は、鏡の前でバティックを当ててみて、似合うかどうか、印象を見ます。

何より、自分が「好き」と思える物、直感で気に入った物を買いましょう。
とっかかりが何もない場合は、例えば釣りが趣味であれば「魚」や「海」文様、電車好きであれば「乗り物」文様など、自分の「テーマ」を決めて探してもいいです。好きな「色」で探してもいいでしょう。また、バティック伝統文様は、大体、吉祥文様で、縁起の良い意味合いが込められています。験担ぎ的に、そうした「意味」の中から気に入った物を選んでみてもいいでしょう。
バティックをたくさん見ているうちに、だんだん、「自分の好きな色・柄・傾向」がわかってきます。そうなると探しやすくなってきます。まずは、いろいろなバティックを見てみましょう。
手作りのバティックは全て一点物で、「出会いは一期一会」ということを忘れずに。気に入ったバティックの「複製」を頼むことはできますが、似た物は出来ても、完全に同じ物を作るのは不可能です。その時の職人の技量や癖、染料の加減、天候など、様々な要素が絡み合って出来た一枚だからです。

ジャカルタの展示会
展示会(インドネシア語で「pameran」と言います)であれば、各地のバティックが一堂に会しています。ジャカルタで頻繁に開かれていますので、機会があったら、のぞいてみましょう。ただし、「インドネシア工芸品展示会」といった広範囲な展示会では、バティックは玉石混淆すぎて選びにくいので、できれば「バティック」に特化した展示会の方が良いでしょう。店名の横に「プカロンガン」「インドラマユ」などの地名が書かれていることが多く、それを見ると探しやすいです。


