バティックの選び方、買い方 第2回 「値段の目安」はいくらぐらい?

バティックの選び方、買い方 第2回 「値段の目安」はいくらぐらい?

2024-10-04

「バティックは高い」というイメージがあるかもしれませんが、全てのバティックが高いわけではなく、安いバティックももちろんあります。バティックの値段はどうやって決まるのか、値段の目安はいくらぐらいなのでしょうか。

どんな種類のバティックがある?

 まずは、「手描き」(トゥリス=tulis)。「チャンティン」(canting)と呼ばれる、先端から蝋の出るペンのような道具を使って、手作業で蝋描きをしたバティックのことです。手描きであることを強調して、「全面手描き」(フル・トゥリス=full tulis)と言ったりもします。

バティックの蝋描き(インドラマユのエディ工房)
バティックの蝋描きをしているところ(インドラマユのエディ工房)
非常に細かい手描き(チレボンのカトゥラ工房)
非常に細かい手描き(チレボンのカトゥラ工房)

 次に、「型押し」(チャップ=cap)バティックです。銅線で模様を作った判子を蝋に浸し、布に押していきます。手描きよりも蝋置きの手間がかからず、早く出来上がります。「バティック大量生産」のために生まれた技法です。

イワックエトンのチャップ
バティックのチャップ(インドラマユのエディ工房)
チャップを押す
+62のチャップ体験ツアー

 型押しは同じ模様の連続になりますので、柄はパターン化された印象になります。柄をよく見て、同じ模様が連続していれば型押しで、細部が少しずつ違っていれば手描き、と見分けられます。そうは言っても、型押しも職人の手作業となりますので、微妙なブレが出ます。そこがプリントとは違う点です。

 「コンビナシ」(kombinasi=「コンビネーション」という意味のインドネシア語)と呼ばれるバティックは、通常は「手描き」と「型押し」の組み合わせ(コンビネーション)を指します。「型押し」してから「手描き」の工程を加えたバティックです。単に型押しをして染めたバティックとは違って、色の濃淡を作ったり、多色にしたりして、変化を出すことができます。

型押しした柄の一部を手で蝋伏せして、もう一度染色すると、色が変えられる(インドラマユのエディ工房)
型押しした柄の一部に蝋を置き、もう一度染色する。このやり方だと、全て手描きするよりも早い上に、多色にできる(インドラマユのエディ工房)
型押してから、色分けしたコンビネーション・バティック
1枚の中で色を変えた、コンビネーション・バティック(インドラマユのエディ工房)

 同じ「手描き」、同じ「型押し」、同じ「コンビネーション」の中でも、品質と値段の開きは非常に大きいです。「手描きなら何でも上質で、高級」「型押しは全て低級で、安い」というわけではありません。

 例えば「手描き」ですと、非常に細密な模様の描かれた物から、粗くて大きい模様がざっと描かれた物まであります。蝋描きにかかる日数は、粗い物なら1日以内、細密な物なら数カ月はかかったりと、まったく違ってきます。染色も、単色で染めるか、同じ色合いの濃淡にするか、まったく違う色を組み合わせた「多色」にするかで、かかる時間が大きく変わってきます。

 例えば、同じ「マンゴー」を描いたバティックで、下記の2つの手描きバティックを見比べてみましょう。

 「粗い方が悪い」というわけではなく、粗い方がむしろ手描きの味が出て面白い場合もあります。しかし、手間のかかり方の違いはよくわかると思います。また、下記の物は手描きの勢いがあって面白いですが、ものによっては、ただ単に、「雑で粗い」場合もあります。

太いチャンティンで描かれた粗い手描き(インドラマユのエディ工房)
太いチャンティンで描かれた粗い手描き(インドラマユのエディ工房)
非常に細かい手描きで、さらに、多色染め(チレボンのアリリ工房)

 「型押し」も同様で、丁寧に押された物もあれば、ざっと押された物もあります。かかった時間や品質は値段に反映します。

バティックの値段の目安は?

 上の「どんな種類のバティックがある?」で書いたように、同じ「手描き」、同じ「型押し」、同じ「コンビネーション」の中でも、品質と値段の開きは非常に大きいです。まさに「ピンキリ」です。

 「手描きが全て高い」わけではなく、ざっとした粗い手描きの単色染めであれば、現地では10万ルピア程度であります。しかし、細かい手描きになると100万ルピアは超えるのが普通です。

 良質な手描きのバティック布は、目安として100万〜800万ルピアぐらい(特に多い価格帯は200万〜400万ルピアぐらい)となります。ハイエンドのバティックだと1000万ルピア台や1億ルピア超えもあります。

1億ルピア超えのハイエンド・バティック。表と裏の色が違う(プカロンガンの工房)
1億ルピア超えのハイエンド・バティック。表と裏の色が違い、腰に巻いた時に、裏側の違う色をちらっと見せることができる。製法は秘密(プカロンガンの工房)

 型押しやコンビネーションでも、同じ柄を全面に並べて押しただけの1枚2〜3万ルピアという安価な物もあれば、1枚の布の中で柄を混ぜたり色分けしたりして、丁寧に作られたコンビネーションであれば20万ルピア程度〜です。「バティックの街」として知られるプカロンガンでは、型押しに、高い技術で細かな色挿しを加えた布が、1枚50万ルピア以上します。コンビネーションなのに、粗い手描きよりも高い価格になります。

なぜその値段になるのか?

 バティックの主な原価は工賃+材料費(布、蝋、染料など)です。その中でも特に「工賃」が大きな割合を占めます。工賃とは、すなわち、職人の人件費です。細かい話をすると、粗い仕事になりがちな「請負制」か、良質な仕事が可能な「日当制」かで、人件費は変わってきます。材料もまた、高い物から安い物まで様々です。

 バティック工房では、その布を作るのにかかった日数(どの職人が何日働いたか)を計算し、その日当分に加え、材料費と儲けをプラスして、布の値段を決めます。ジャカルタで販売する場合は、当然ながら、配送料、店やショッピングモールでのコミッションなども加算されます。

 高いバティックには高いなりの、安いバティックには安いなりの理由があります。もちろん、「高ければ良い」「安ければ良い」というわけではありません。自分の好みと値段の折り合いがつくかどうか、です。(つづく

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