「愛は盲目」  フィリピン映画原作、釜山が舞台、アジア融合のラブコメ 【インドネシア映画倶楽部】第13回

「愛は盲目」  フィリピン映画原作、釜山が舞台、アジア融合のラブコメ 【インドネシア映画倶楽部】第13回

2019-10-13

Cinta Itu Buta

ヒットしたフィリピン映画のリメイク。原作は北海道を舞台にしていたが、本作は韓国・釜山が舞台だ。ドラマが繰り広げられる釜山の美しい街並みは一見の価値ありだ。

文・横山裕一

 目が見えていても見えない愛と、目が見えないからこそ見える愛。韓国・釜山の美しい街並を背景に、インドネシア人の若い男女の愛をユーモアをふんだんに交えて描いた、ちょっと切ないロマンス・コメディ映画。

 韓国・釜山で観光ガイドをしているディアは韓国の二枚目青年と出会い、婚約をする。しかし、結婚の準備が進む中、ディアは恋人が自分の親友と浮気している場面を目撃、ショックと傷心による極度のストレスから視力を失ってしまう。

 ある日、途方にくれて落ち込んでいるディアの自宅に、突然インドネシア人の青年が朝食を持って訪れる。名はニック。いぶかしむ彼女は最初は相手にしなかったが、ニックの押し付けがましくない献身な態度に、少しずつ心を開き、頼りにするようになる。

 いつしかニックに対し、心も惹かれるようになったディア。二人で楽しく街をデートしていたある晩、ふとディアの両目に街のネオンがぼんやりと映り、視力が回復する。

 「ニック!」

 叫ぶディア、しかしここで悲劇が起きる………。

 そして、時間を前後して、二人の運命、ニックのディアへの愛情の隠されていた秘密が明かされていく。

 ニックを演じたのは、初主演となるドディッ・ムルヤント。ユニークで独特なしゃべり方をする若手俳優。様々な映画作品で、ちょい役ながら笑いとともに記憶に残る独特の存在感を示す演技が光る人気俳優だ。日本でいえば若い頃の柄本明、きたろう、といった感じ。

 今作では、心を開いてくれないディアに寂しさを感じつつも、彼、独特の言い回しでインドネシア・ユーモアを連発して、ディアの心を和ませる。

 「僕は君の目になり、君は僕の観光ガイドになる…たまんなーい(ASYIK)!」

など、作品を通して、彼の魅力、演技が印象深く残る。

 実はこの作品も、前回紹介した「ベバス」同様、リメイク映画である。原作はフィリピンのヒット映画「キタキタ(KITA-KITA)」(2017年公開)。原作では舞台は北海道で、札幌や小樽で撮影、日本人の役者も多数出演する。大阪アジア映画祭でも上映されている。

 フィリピン映画ではあるが、物語の展開や、最後にドラマの真実を種明かししていく手法は韓国映画の影響を受けているかのようにもみえる。その意味で韓国を舞台にした本作は、まさにインドネシア風韓国映画を見ているかのような印象も受け、面白い。

 リリ・リザ監督の新作「ベバス」の原作、韓国映画「サニー」も日本、ベトナムで、アメリカでリメイクされているように、今回の作品含め、アジア各国間での映画交流は、今後どのような影響をそれぞれに与えていくか興味深い。

 物語中、若干説明不足から疑問に感じる点などもあるが、それを上回って、いつもちょい役の俳優ドディッ(ニック役)の魅力を全編にわたって観ることができ、楽しく鑑賞するには良い作品である。また、丘陵地に立ち並んだ色とりどりの住宅など、韓国・釜山の美しい街並でのドラマは一見の価値ありだ。(英語字幕あり)

インドネシア映画倶楽部 バックナンバー
横山 裕一(よこやま・ゆういち)元・東海テレビ報道部記者、1998〜2001年、FNNジャカルタ支局長。現在はジャカルタで取材コーディネーター。 横山 裕一(よ…
plus62.co.id