新型コロナウイルスで変わったこと、変わらないこと、なくなった物、新しく生まれた物……。「新しく生まれた物」の一つがマスク・ファッションだろう。

 マスクは顔の半分以上を覆う。人に会った時に大きな印象を与える「顔」という重要な部分の下半分を覆ってしまうのだ。そこに大きな可能性があるのではないか?と考えさせられたのは、賀集由美子さんの制作したマスクだ。左右の両面を「2コマ漫画」に見立て、コロナ渦でのジャワの庶民の姿を活写している。

 「家にいよう」という啓発的なメッセージもあれば、「暗闇を超えて光へ」という希望をうたう物、「インドネシア? お好きなように!」という流行語を載せた時事的な風刺物も。こうしたマスクを着けていると、そのマスクを見る人に対し、漫画を楽しんでもらうほかに、ある特定のメッセージを伝えることができるだろう。

 横長というマスクの特性をうまく生かし、横に長いインドネシア地図を全部入れて「Stay Safe Indonesia」という言葉を載せた物もある。例えばこのマスクを日本で着けていたら、インドネシア人またはインドネシア関係者は絶対に声を掛けてくると思う。何も言わなくても「私はインドネシア関係者です」というメッセージを発信してインドネシア関係者を引き寄せることができる(もし、そうしたければ)。これまで、そうしたはっきりしたメッセージを発信できるのはTシャツぐらいしかなかったのではないか? TシャツはTPOによっては身に着けられないし、顔に着けるという意味ではマスクの方が効果が大きい。

 インドネシアでも、アニス・ジャカルタ特別州知事がバティックのマスクを着けたり、警察関係者が警察の紋章入りマスクをして記者会見に臨んでいる。また、ドイツの新聞写真を見たら、市長や町長が、市・町の紋章のマスクをしており、デザイン性も高かった。

 6月に「私だけのマスク展」をオンラインで開催する石井泰美さんのマスクは、「現代アート」という斬り口から作られた、ほぼ一点物だ。「絵は壁に掛けて飾り、人が見に行かないといけないが、マスクは私の手を離れた後、それを身に着けた人が自由に動き回って人に会う」という言葉が面白いと思った。街を走る広告塔のような、「歩く現代アート」なのだ。そして、石井さんのマスクを着けた者同士が街でぱったり出会ったとしたら、お互いに知らない同士でも、「あっ! そのマスク、石井さんの!」「それもいいですね!」と、ちょっとした会話が自然に始まることと思う。

 大規模社会規制が終わっても、「マスク着用義務」の場面は増えそうだ。重要な人に会ったり、アーティスティックなシーンもあるだろう。そんな時、服は敢えてモノトーンで、石井さんのマスクをワンポイントにしたら映えるだろう。もしくは、賀集さんの漫画マスクで会話の糸口に。マスクの可能性は大きく広がっている。

 

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